67 フシモリ・メガコーポレーション③
エイトプリンス登場。65~67まで続きます。
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山梨県上空。夜空を影が高速移動している。影はフシモリが所有するステルス機「トリップ」である。機体は三角形で窓や突起は無く、黒色に塗り潰されていた。
機内の壁に上級生四名、中級生十名が座り、片側には下級生十五名が座って待機していた。
攻生はネイビーカラーの装甲服「対争服」に身を包み、同色のフルフェイスヘルメットを被っている。ヘルメットの中央にあるシルバーの単眼が冷たく光り、単眼により情報処理された風景を見ていた。
下級生の左肩に「下」のペイント、中級生の左肩には「中」とペイントされている。上級生は左肩には「上」のペイントがされ、アンテナが中央にあるヘルメットを被っていた。
機内の奥では攻士の殿付と四津裏がそれぞれビジネススーツ、胴着といった普段の格好で腰掛けていた。
『これより樹海に侵入します。高度を落としますので揺れに注意してください』
パイロットが警告を発した。それを受けた四津裏が攻生に向かって再度、作戦の概要を説明した。
「お前たち、機体は目標施設を攻撃するネ。そしたらハッチ開けて各自降下、聖石エンジンのあるドームの地下三階に向かって進むヨ。今回小細工なしで派手にやるネ? わかた?」
「了解しました」
攻生たちが声を揃えて叫ぶ。四津裏は大きく頷いた。スカウトした攻生も多く配属されているためか殿付は満足げにその様子を見ていた。
しばらくするとトリップは機体を大きく揺らしながら下降し低空飛行を続けた。トリップの前方には黒々とした樹海とその中に数ヶ所大きな光が見える。
光は伊藤インダストリーの研究施設だ。伊藤インダストリーは山梨県に拠点を構え、山梨県の県政を裏から操作していることもあり支配地域となっている。樹海も同様で研究施設が次々と建設されていて、ライバル企業や他国、その他敵対勢力から守る為に厳重な防衛システムや兵器が配置されている。
トリップの機体表面がじょじょに透明になると夜空に溶け込んでいった。これは視認を防ぐステルスモードである。透明になったトリップは飛行を続けながらさらに高度を下げていき、進路の先にライトアップされた巨大な銀色のドームが見えてきた。
ドームは直径二百メートル、高さ五十メートルの研究施設である。そのドームを挟むように三十メートル程の尖塔のような研究棟が二棟建っていた。その下を十数人のマラチオンベアーたちが巡回している。
マラチオンベアーは伊藤インダストリーの特殊装甲戦闘員の名称である。彼らは黒いヘルメット、赤い光点が灯る黒いゴーグル、口元を覆う黒いマスク、白を基調にした中央が黒いアーマーを装着し手には対超人用アサルトライフル「ハトヤー」を持っていた。
トリップは研究施設との距離を縮めていくと機体左右の下部が開き、各々空対地ミサイルが展開、ステルスモードの為、空中に突然二発のミサイルが現れたように見える。
「目標確認、これよりドーム及び研究棟への攻撃を開始します」
パイロットは通信を入れ、ミサイルの発射ボタンを押す。轟音が響き、二発のミサイルが発射された。二発のミサイルはドームに向かって高速で直進。
ドォォォォォォォォォォォォォォォン
着弾と共に爆音が谺してドームから炎が吹き上がった。さらにトリップは新たに二発のミサイルを発射。今度は二棟の研究棟に直撃、爆発で棟の上部が砕け散った。トリップはそのまま、ドームの直上まで進んで滞空した。ドームは攻撃によって穴があき、爆煙を上げている。
「行くネ!」
四津裏が叫んだ。同時に攻生が座るシートの隣にある壁が横に細く開き、中から金属音を立てながら固定された黒い長方形のライフルが射出された。ライフルは「ツーガクロー」と呼ばれる対超人用ライフルであり、気の防御を貫通する威力を持つ特殊弾を使用している。
攻生たちは立ち上がり、ツーガクローを手にしてハッチに向かう。続いて殿付と四津裏もハッチに向かうと警告音がしてハッチがゆっくりと開いていった。
四津裏はハッチから見下ろしてドームにあいた穴が真下にあることを確認すると攻生に振り返った。
「作戦開始ネ!」
「了解しました」
攻生たちが返答すると下級生が次々とハッチから降下していった。下級生に続いて、中級生、上級生が降下し、殿付と四津裏は同時に降下した。
降下した攻生たちは爆煙の中を潜り抜けると炎と瓦礫にまみれた地面に着地した。下級生は炎の中でよろめくマラチオンベアーにツーガクローの照準を合わせた。
ドガガ、ドガガ、ドガガ、ドガガ、断続的な銃声が響いた。
「ぎやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
不意をつかれたマラチオンベアーが次々と撃たれていく。攻生の背後に殿付と四津裏が音もなく降り立った。
「それじゃー、いくんだー」
攻生たちの後から殿付と四津裏が続き、炎と瓦礫の先に向かっていった。
攻生たちは爆撃を受けた先にある廊下へと侵入した。廊下を進んでいくと応援に駆けつけたマラチオンベアーたちと鉢合わせした。マラチオンベアーがハトヤーを構えて銃弾を浴びせてきた。
「蹴散らすネ」
攻生たちもツーガクローを構えてマラチオンベアーたちに一斉掃射、激しい射撃音が谺した。
ドガガガガガガガガ、ドガガガガガガガガ、攻生とマラチオンベアーの間を弾丸が飛び交う。両者は被弾し装甲が削れていく。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
先頭にいるマラチオンベアーの頭部装甲を弾丸が貫通した。絶命したマラチオンベアーは背後に倒れた。次に弾丸が下級生の胸部装甲を貫き、下級生は苦悶の声をあげて崩れ落ちた。
両者の激しい銃撃戦の中、殿付は鬱陶しそうに迫りくる弾を素手で弾いてく。
「時間の無駄なんだー」
殿付が右手を廊下の壁についた。
「かっこ外し!」
殿付の叫びとともに右手を中心に壁が円形に抉れ、コンクリートの破片が飛び散った。
「分配法則!」
すると飛び散った破片が次々と殿付の右手を覆っていく。さらに手の先まで破片が結合して伸びると歪な剣を形成した。
「お前たちー、死ぬんだー」
殿付はその場で跳躍。前の攻生の頭を踏みつけてマラチオンベアーへと向かった。その間にマラチオンベアーは殿付に狙いを定めて銃撃を浴びせるも殿付は破片の剣を構えて防ぎながら殺到。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
マラチオンベアーたちは叫び声を上げながらさらに銃撃を加えた。殿付のスピードは止まらず、破片の剣を構えると先頭のマラチオンベアーに横なぎの一撃を放った。
「ギャァァァァァァァァァァァァ」
破片の剣は唸りをあげてマラチオンベアーの頭に直撃。ヘルメットごと粉砕した。さらに返す刀で破片の剣が横のマラチオンベアーの脇腹へと叩きこまれ、上半身を引き千切った。上半身は無惨にも臓物を撒き散らしながら壁に叩きつけられた。さらに殿付は破片の剣を振り回してマラチオンベアーたちを引き千切っていく。装甲片と肉片、血が辺りに飛び散った。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「げゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
殿付は破片の剣を目の前にいるマラチオンベアーに振り上げた。その時、マラチオンベアーの頭上から黒い影が近づいた。
「ギャッ!?」
「カテカ!」
ドォォォォォォォォォォォォォォォン、轟音を響かせて黒い影が殺到し目の前のマラチオンベアーは粉々に砕け散った。そのまま地面が抉れ、血飛沫と粉塵が舞う。
「私も楽しむネ」
粉塵が晴れてくると四津裏が右拳を地面に突き立て、片膝をついていた。拳の下には赤黒い肉片と化したマラチオンベアーの残骸が散らばっていた。
ドガガガガガガガガ、圧倒されているマラチオンベアーに攻生の銃撃が襲いかかった。四津裏はニヤリと笑って立ち上がると目の前にいる三人のマラチオンベアーに向かっていく。マラチオンベアーたちは四津裏にハトヤーの銃弾を浴びせた。それを四津裏は高速で右手を動かして的確に掴みとっていった。
「お前たち死ぬネ」
四津裏は腰を落として回し蹴りを放った。右足が唸りをあげた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
ギャリリリリ、高速の回し蹴りがマラチオンベアーの側頭部に直撃して粉砕。蹴りは勢いをそのままにさらに横にいる二人の頭を破壊してから、床を踏みしめた。頭のない死体から血と骨、脳漿が広がる。
四津裏は奥にいるマラチオンベアーに邪悪な笑みを浮かべた。
「邪魔なんだー」
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
四津裏の横で殿付も破片の剣を振り回して次々とマラチオンベアーを屠っていた。引き千切られた腕や足が宙を舞う。殿付と四津裏が開いた突破口に後方にいた攻生も前へと進み激しい銃撃を浴びせて敵を仕留めていく。
「さー、進むんだー!」
殿付、四津裏、攻生たちはマラチオンベアーを蹴散らしながら先へ進んだ。
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トリップが夜空を高速で移動していた。背後には黒々とした富士山と樹海が見える。樹海では研究施設から炎が上がり、警報が鳴り響いていた。
機体の内部で殿付と四津裏は並んで座っていた。服は少し汚れや破れてはいるものの、二人共無傷であった。目の前には左右の壁に攻生が並んで座っている。攻生たちの装甲には弾痕の跡や削れたような傷が付いていた。
殿付がインカムを調整して話し始めた。
「任務完了したんだー、高尾山の聖石は奪還、エンジンも破壊したんだー、こちらの被害は下級生三名死亡しただけだー」
『はい、よくやった、聖石は無事か?』
「無事なんだー」
殿付はそう言うと機体の奥にある金属製の収納ボックスに目を向ける。ボックスの隙間から光が薄く漏れていた。




