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ハチオウジギア  作者: ティーマン
シーズン1 Part2
66/79

66 フシモリ・メガコーポレーション②

エイトプリンス登場。65~67まで続きます。



◆



 八王子区北野の道路を黒塗りの高級車が二台連なって走っていた。防弾仕様を施した高級車の表面に反射した周囲の景色が流れていく。二台は右に曲がるとその前方にも同型の高級車が二台走っていた。さらに後ろからも複数の高級車が続いていく。


 最終的には十四台の車列となり一点を目指して走っていた。車列の前に巨大な墓石のような高層ビルが見えてきた。車列は真っ直ぐに高層ビル、フシモリ本社を目指していた。フシモリ本社の正面ゲートが自動的に開き、車は次々と中に吸い込まれていく。


 車列は広大な本社敷地内を進み、幹部専用ゲートに辿り着いた。ゲートがゆっくりと開く。車列はスピードを落として通り抜けるとメインビル裏口にあるロータリーに入った。ロータリーで順々に停車していった。停車した車からは黒服の男たちが次々と降りてきた。


 先頭車両から二台目の後部ドアを黒服が開いた。車の中からグレーのスーツに身を包んだリーゼント風パーマの男が出てきた。靴は綺麗に磨かれており、周囲を映している。


 周囲の黒服が一斉に頭を下げてお辞儀した。それをリーゼント風パーマの男、古矢田《こやた》クリントは冷たい目で眺めている。古矢田はエイトプリンス攻士としてまとめ役を担い、フシモリの経営役員兼「愛研常識の会」会長を務めている。


 別の車の黒服が後部席を開いた。中から頬がこけた眼鏡の男が下り立った。頬がこけた眼鏡の男は白衣を着ていた。


 周囲の黒服が一斉に頭を下げてお辞儀した。頬がこけた眼鏡の男、江松《えまつ》ミヤビはグレーの髪をかきあげて狂気的な笑みを浮かべた。江松もエイトプリンス攻士である。反超人組織の調略、工作を担い、反超人有志会「ヨンロウ」を支援、フシモリ開発部役員も務める。


 別の車の黒服が後部席を開いた。中からパチンコ玉のような禿げ頭の男が出てきた。パチンコ頭の男は白シャツの上に黒い立ち襟マントを着ていた。


 周囲の黒服が一斉に頭を下げてお辞儀した。パチンコ頭の男、田那加《たなか》シロトは古矢田に卑屈な笑いを浮かべて頭を下げた。田那加もエイトプリンス攻士である。融資や資金調達等の金庫番を担い、フシモリ経理部役員をしている。


 別の車の黒服が後部席を開いた。中から七三の目が細い男が出てきた。七三の男はチェック柄のスーツを着ていた。


 周囲の黒服が一斉に頭を下げてお辞儀した。七三の男、王腰《おうこし》エイテンは周囲に頷きかけた。王腰もエイトプリンスの攻士である。超常犯罪者の管理を担っており、フシモリ役員兼フシモリエステート社長として不動産部門を担当している。


 別の車の黒服が後部席を開いた。中から白髪混じりの長髪と長い髭を伸ばした眼鏡の男が出てきた。長い髭の男はバケットハットを被り、赤黒いスーツと緑のネクタイを着ている。


 周囲の黒服が一斉に頭を下げてお辞儀した。長い髭の男、亜久山《あくやま》ジュウケンは周りを見渡した。亜久山もエイトプリンスの攻士であり、諜報、証拠隠滅部門を担っている。フシモリ監査・調査部役員でもある。


 別の車の黒服が後部席を開いた。白髪天然パーマで眼鏡をかけた四角い顔の女が出てきた。四角い顔の女は白い胴着を着ており、身体は筋肉に包まれていた。


 周囲の黒服が一斉に頭を下げてお辞儀した。四角い顔の女、四津裏《よつうら》ケイコは周囲を睨みつけている。四津裏もエイトプリンスの攻士であり、暗殺部隊を率いていた。フシモリ保安部役員でもある。


 別の車の黒服が後部席を開いた。中から殿付《とのづけ》ブシユが出てきた。殿付は黒のスーツに青いシャツを着ていた。


 周囲の黒服が一斉に頭を下げてお辞儀した。殿付は緊張した面持ちでメインビルを見上げた。殿付はエイトプリンス攻士として攻生のスカウトと育成を担当し、フシモリ人事部役員兼ブカツドーの常務でもある。


 その時、黒い影がゲートを飛び越えてきた。黒服たちが対超人用ハンドガンを抜くと黒い影に狙いをつけた。それを古矢田は手で制した。


 黒い影が古矢田の横に下り立った。黒服が警戒する中、黒い影が立ち上がった。黒い影は黒いフードを被った男であった。


「はい、バカなことはやめろ」


「良いじゃないですか、ホホホホホホ」


 古矢田に黒いフードの男は笑いかけた。彼はリトルグレイの異名を持つ。


 古矢田は顔をしかめるとメインビルに向けて一歩踏み出した。他の攻士も歩みを進めて古矢田の隣に並んでいく。


 古矢田の右手側にリトルグレイ、江松、田那加が立ち、左手側に王腰、亜久山、四津裏、殿付が立つと横一列で歩きだした。後ろでは全ての黒服が頭を下げていた。歩みを進める攻士たちの前を風が吹き抜け、砂埃が舞い、各々の服が風ではためいた。


 横一列に歩く八人の表情は各々特徴的だ。表情を変えない古矢田。横のリトルグレイはフードの中で薄笑いを浮かべていた。江松は狂的な笑みで左右の目が上下別々の方向を見ている。田那加は相変わらず古矢田に向けて卑屈な笑みと揉み手を繰り返している。王腰に目をやると細い目をさらに細めて胸を張って歩いていた。亜久山は遠い目で長く伸びた髭をしごいている。横の四津裏は口を引き結んで眉間に皺を寄せていた。殿付は緊張感のある顔で考え事をしているようだ。


 八人の攻士はメインビルの中へと入っていった。



■



 フシモリ本社、メインビル五十三階会議室に八人の攻士が入った。八人は各々決まった席の前に向かう。


 会議室の扉が開くと額の広い眼鏡の男が笑顔でゆっくりと入ってきた。八人の攻士が頭を下げた。額の広い眼鏡の男、社長の鎖藤《さとう》コウナガはスクリーンの前の席につくと攻士たちも腰を下ろした。鎖藤の両脇には古矢田とリトルグレイが座っていた。


「それでは定例会議を始めます。本日は聖石《せいせき》の運用、敵対勢力、超人配備計画について現状分析と対策、意思決定を行います」


 鎖藤が和やかに告げた。会議は古矢田が中心となり進行した。各々が状況と確認事項を報告していく。鎖藤は必要な事項を決めていった。会議は中盤に差し掛かった。


「では伊藤インダストリーとジャカタネットの支配地域に侵攻を開始してください」


 鎖藤が笑顔で答えた。七人の攻士は頷いているがリトルグレイは口元に笑みを浮かべているだけだ。古矢田がスクリーンに資料を掲示した。


「はい、注目! まず、伊藤インダストリーだ。奴らの研究施設を襲撃して最新聖石エンジン試作機の破壊、聖石を奪還しろ。泉聖《せんせい》から抽出した純度の高い聖石はたとえ少量でも渡せない、奴らには留燃に溜まる昔の聖石で十分だ。今回は相手に思い知らせる必要がある。だから……派手にやれ殿付、四津裏」


「わかりましたー、伊藤インダストリーがさらに過激になるなー」


 殿付が真剣な表情で言うと江松は笑顔で目をやる。


「それで良いじゃないでぇいすか! 奴らを叩きまくれまぁうす」


 鎖藤は江松に頷きかけて話し始めた。


「これで伊藤インダストリーやトミーウォーカー派はさらに表立って我々に牙を剥いてくるでしょう、ですが我々にもマウンテンバレー財団の支援があります。この戦いは泉聖を確保している我々が圧倒的に有利です」


「久々腕がなるネ、楽しなるヨ」


 四津裏が拳を握り締めて不敵に笑う。殿付がふと思い出したように手を上げた。


「ありがとうございますー、私の下級生で見所のある南町カンヨウが殺されたんだー、これは伊藤の仕業という噂があるー、借りを返させてもらうー」


「ワシの部隊に推薦したいと言っていた奴じゃな、残念じゃった。だがの、奴のショータン自体は我々が管理して今後も使えるようにした。どうだ? ワシが指示してAIで作った動画は?」


「さすがなんだー、南町も報われるだろー」


 亜久山が殿付に頷く。リトルグレイはそれを見て口元を押さえて笑った。


「南町さんもとんだ無駄死にでしたね。ただ、死んでくれたおかげでショータンという扱いやすいおもちゃが手に入ったようで良かったですね、ホホホホホホホ」


「こらー、静かにしないかー」


 田那加が汗を拭いながらリトルグレイを窘め、殿付はリトルグレイを睨みつけた。鎖藤は手で皆を制して話し始めた。


「では頼みますよ。超人配備計画に移りましょうか」


「それじゃあ、俺から始めるんだな」


 王腰が説明を始めた。その後も円卓で社長と攻士たちの会議は続いた。会議の模様をリトルグレイは嘲るような目線で見続けていた。 



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