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ハチオウジギア  作者: ティーマン
シーズン1 Part2
64/80

64 アーチ・エネミー⑥

エイトプリンスに迫る狂師。59~64まで続きます。



◆



 米山は肩に担ぐ南町をものともせずに雑木林を疾走していた。超人の力により夜目が強化され木や枝等の障害物を器用に避けていた。それにしても、と背後の気配に集中した。イエローという女がぴったりと後をつけていた。


 米山は人間にも関わらずタイクーと強化スーツでここまで力を発揮できるのかと感心していた。


 米山は走りながら仮面の通信装置を操作。護送用に用意したジープ「チャングラー」で待つ後藤に状況を伝えた。仮面の視界に逃走経路の地図が表示された。雑木林を抜けた先が街道に面しており、ここで乗り込む。


 ビュオ! 空気を切り裂く音がした。米山は身体を左に反らす。反らす前にいた空間をサーブル剣が貫いた。


 米山は南町を前方に投げつけた。ゴロゴロと南町が転がっていく。走りながら米山が振り返った。イエローの刺突が繰り出された。


「ちっとは人のこと考えろ!」


 そう言いながら刺突を頭を下げてかわすとイエローに突撃した。


「南町を渡しなさい!」


「こぉとぉわぁーるぅ」


 米山がイエローの胴に頭突きを見舞った。イエローがよろめいた。


「くらえ!」


 さらに指を組んだ両手をイエローの胴に叩きつけた。


「キャァァァ」


 悲鳴を上げてイエローが膝をついた。米山はさらに頭に狙いをつける。


「キャァァァ……とでも言うと思ったかしら?」


 イエローのサーブル剣が恐ろしいスピードで突き出された。とっさに気の力を全身に巡らした。


「ぐわぁぁぁぁぁぁ」


 米山の左肩にサーブル剣の刺突が直撃。痛みが走って後ろによろめいた。


「ハイィィィィィィィィィィィィィィ」


 ドドドドド! イエローの繰り出す刺突が米山に叩きこまれていく。米山は腕をかざして気による防御に徹した。


「頑丈ですねぇぇぇ!」


「ぐぬぬぬぬぬぅぅぅぅぅぅぅ」


「まだまだぁぁぁぁーーー!!」


 米山は刺突を受けながら、右手に気を集中させていた。あえて米山は刺突を左肩に受けるとすかさず右腕を伸ばした。


「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


「くっ!?」


 米山はイエローの装甲に包まれた腕を掴んだ。右手が光り輝いた。


「悶絶!!」


「これは!? キャァァァァァァァァァァァァ」


 ギギギギギ! 腕の装甲が米山の力でひしゃげてきた。イエローの呻き声が聞こえる。しかし、米山が思っていたよりも固い装甲でありまだ、腕の骨まで達していない。


「痛いですねぇ! この怪力男!」


 イエローの左手が腰の後ろに伸ばされたかと思うとCPブラスターが握られていた。イエローは躊躇を見せずに米山の右腕に向けて引き金を引いた。米山はとっさに気を集中した。


ガォン! ガォン!


「ぐっ!!」


 米山は右腕に銃弾を受けた。気の力で何とか表面で防ぐことが出来た。しかし、痛みからイエローの腕を離してしまう。


 隙を逃さずイエローは後ろへ飛んで距離をあけた。


「痛い……怪力な上にとんでもなく頑丈な男ですね」


「ぐっくぅ、痛いで済むだと! 装甲もさることながら、なんて訓練された女だ」


「まだまだーー!!」


 イエローが潰れた装甲を気にせずにサーブル剣を引いて攻撃体勢に入った。米山は対応すべく身構える。


「エイゴォォォォォォォォォォォォォォォ!」


 突如、叫び声が聞こえた。ゴォォォォォォ! 痺れるような振動波が米山の横を通りすぎた。


「キャァァァァァァァァァァァァ」


 イエローに振動波が直撃し、後方へと吹き飛ばされていく。木々に当たりながら奥の地面に落下した。


『さっさとしろ、イエローが起き上がる』


 仮面の通信装置から後藤の声がすると米山は我に返った。後藤が米山を援護してくれたのだ。


 米山は地面に転がった南町を再び担いで走った。背後ではイエローの起き上がる気配を感じた。


 米山は全力で雑木林を駆け抜けていった。後藤の一撃でイエローと距離があき、これならば追いつかれることはないだろう。しばらくすると雑木林の先に金網が見えた。さらに金網の先にチャングラーが停車しているのが確認できた。


「こちらの勝ちだ」


 そう言って米山は金網を飛び越えた。


 チャングラーの横に着地するとリアドアが自動で開いた。米山はまず南町を車内に乱暴に押し込むと自らも乗り込んだ。


「良くやった」


 運転席からはソフト帽にサングラス姿の後藤が何事もないように言ってのけた。米山は南町をバックシートにあった紐で手早く拘束した。静かにチャングラーが走りだした。



◆



「う……う……」


 高取は意識を取り戻すと車の残骸を掻き分け、何とか立ち上がった。


「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」


 息を整えて両腕に目をやった。アームカバーから伸びる刃はどれも手の甲の辺りで折れて無くなっていた。なけなしの気を入れるが刃に変化はない。先ほどの押し合いで力を消耗しすぎたのだろう。


 土を踏みしめて、ふらつきながら車道へと歩いていく。街灯に照らされて乗り手のいないバイクが二台佇んでいた。


 ホワイトの位置を確認しようと目を凝らした。ちょうど反対の雑木林でホワイトがふらふらとしながら立ち上がろうとしていた。傍らには無傷の刀が転がっている。彼の背後にある太い木が折れていた。恐らく吹き飛ばされた際に激突した衝撃で折れたのだろう。


「本当に……人間ですか? ハァ、ハァ、化け物ですね……」


 高取はホワイトに向かってアスファルトの上をよろめきながら歩いていく。


「お……俺はハァ、ハァ、ハァ、人間だ」


 ホワイトが立ち上がった。ホワイトのスーツはボロボロでインナーの黒い特殊装甲からも煙がでていた。


「超人はハァ、ハァ、俺が全て倒す……」


 ホワイトは拳を固めてふらつきながら高取に向かってきた。高取も拳を固めた。


「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」


 高取は飛びそうな意識で、この先もホワイトが復讐の障害になるという運命的な予感を覚えた。


 足に力を込める。だからこそ、ここでホワイトを倒さなければならない、強い覚悟で意識を保った。


「ウォォォォォォォォォォォォォォォ!!」


 高取はホワイトに猛然と向かった。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 ホワイトも自らの太股を殴りつけて高取に向かって駆けた。


 高取は拳を固めてホワイトの顔面めがけて叩き込んだ。同時に高取の顔面にホワイトの拳が叩き込まれた。


 高取の目の前が歪んだ。ホワイトの一撃は仮面越しでも強烈だった。ホワイトも殴られた顔面を抑えて後ろによろめいた。距離があいた。


『……大丈夫か? 南町を確保した。これから後藤さんとお前をピックアップする』


 仮面の通信装置から米山の声が聞こえた。


「まだ……です……こいつを」


「な……何を言っている、ハァ、ハァ」


 ブォォォーーン、車の走行音が聞こえてきた。後藤と米山のチャングラーだ。さらには遠くからパトカーのサイレンも聞こえる。青龍会が応援を呼んだようだ。


「貴様は俺が……倒す」


「あなたは私が……倒します」


 高取はよろめきながらもホワイトを睨みつけた。ホワイトは肩で息をしながらも顔は高取に向いていた。


 ギャルルル、高取の横でチャングラーが急停止した。チャングラーのリアドアが開き、米山が高取に対して車に乗るように促した。高取は重い足取りでチャングラーに向う。


「待……ちやがれ」


 ホワイトの声が聞こえたが米山が素早く高取を中に引き入れるとチャングラーが発進した。後部座席では米山が南町を紐で縛って押さえつけていた。米山が高取の肩に手をやる。


「ずいぶんやられたな」


「ええ……青龍会のホワイト、とんでもない男です。崖先はどうなりました?」


「コールマンが仕留めて、奴のPCを奪取したみたいだ」


 高取は後ろを振り返る。リアウィンドウからホワイトが片膝を着いている姿が見えた。その背後から赤いパトカーランプの光が近づいていた。



◆



キィィィィィィィィィィィィィィィィン


 耳をつんざくような音が頭の中を駆け巡った。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 南町は真っ暗な空間で苦痛に悲鳴をあげた。何千回この音を聞いたかわからない。南町は痛みと苦しみで身体をよじりたいが肩の骨は砕かれて身体は固定されていて動かすことができない。この音を聞く前に後藤と呼ばれる男に様々な拷問を受けてからどれだけの時間が経ったのかもわからない。南町はフシモリが助けに来ると信じて何も言わなかった。



キィィィィィィィィィィィィィィィィン


 再び耳をつんざくような音が頭の中を駆け巡った。もうこの音も数えきれない程聞いている。南町はきっとフシモリが助けに来てくれると信じていた。



キィィィィィィィィィィィィィィィィン


 耳をつんざくような音が頭の中を駆け巡った。もうこの音も数えきれない程聞いている。南町はきっとフシモリが助けに来てくれると信じていた。



キィィィィィィィィィィィィィィィィン


 耳をつんざくような音が頭の中を駆け巡った。もうこの音も数えきれない程聞いている。南町はきっとフシモリが助けに来てくれると信じていた。



キィィィィィィィィィィィィィィィィン


 耳をつんざくような音が頭の中を駆け巡った。もうこの音も数えきれない程聞いている。南町はきっとフシモリが助けに来てくれると信じていた。



キィィィィィィィィィィィィィィィィン


 耳をつんざくような音が頭の中を駆け巡った。もうこの音も数えきれない程聞いている。南町はきっとフシモリが助けに来てくれると信じていた。



キィィィィィィィィィィィィィィィィン


 耳をつんざくような音が頭の中を駆け巡った。真っ暗の中、何度同じ苦痛が繰り返されたのだろう。南町は苦痛で思考がバラバラになり考えられなくなってきた。なぜ、この真っ暗な空間にいるのだろう。


「南町、エイトプリンスの幹部を教えろ。楽にしてやる」


 同じ問いかけが何度もあった。南町は楽になるなら話したくなってきた。


「エイトプリンスで知っとるのは……か……幹部である攻士八人のうち、殿付ブシユだけや。その八人はフシモリやグループ会社の役員の中におるらしいが下級生や中級生には管轄する攻士以外の情報をあまり知らんのや……知っとるんは上級生や。そんなんで、俺は殿付のもとでエイトプリンス攻生として工作活動に従事しとった」


「……良く答えてくれた。エイトプリンスの目的について知ってること全てを話せ、楽にしてやる」


「ほんまでっか……なら話したります……全てはラン・フォー・ザ・フューチャー計画ちゅうのを進める為や……」


 南町は虚ろな瞳で口を開いた。


「ラン・フォー・ザ・フューチャー計画?」


「超人の世界を作る為のもんらしい……俺の行動もその中の一環なんや。詳細は知らんけど、大きな事を起こすんや、多くの人々を犠牲にする革命言っとった」


「革命……だと」


「そうや……超人の時代がくる、超人の時代やひひひひひ、はははははは」


 南町は涎を垂らしながら笑った。



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