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ハチオウジギア  作者: ティーマン
シーズン1 Part1
39/46

39 ヒット・ザ・毛野中組③

毛野中組との戦い。37~39まで続きます。


ページ下部にある【設定資料】ハチオウジギア のリンクに登場人物紹介あります。





 コールマンと高取がアメモズとソデミを相手にしているのを横目で確認する。米山は机に座っているセマヘロに向かっていった。


 セマヘロの顔が一瞬、恐怖で引き攣る。それでも気を引き締めたのか再び強気な顔に変化した。


「お前! どこのもんだ! 俺に歯向かうってことは凶分組も相手にすることだってわかってるのか?」


「わかっている。どちらも始末すれば良い」


 セマヘロが視線を合わせたまま、机の引き出しを探りだして拳銃を取り出した。セマヘロにゆっくりと近づきながら右手を握り、開く動作を繰り返す。さらに威圧的に関節を鳴らした。


「何なの! お前頭が狂ってるんじゃないの?」


「狂ってるから狂師なんだよ、バーカ」


「診断受けてみ、お前!」


 セマヘロが拳銃をこちらに向けた。


 乾いた音が響いて弾丸が殺到するが素早く身体を傾けて回避。米山はそのままセマヘロに突っ込んだ。


「こいつ!?」


 正面からセマヘロの首を右手で掴むとゆっくりと吊り上げた。


「離せ! 俺を殺すのか! おらぁ」


「まだ、殺しはしないよ、ただ、ちょっと悶絶するけどな」


「何!?」


「フン!」米山は左手でセマヘロの右手首を握って力を入れる。木が割れるような音がしてセマヘロの手首の骨が折れた。


「ギャァァァァァァァ」


 さらに左手首を折る。


「フン!」


「ギャァァァァァァァ」


「フン!」


「ギャァァァァァァァ」


「フン!」


「ギャァァァァァァァ」


 右足首、左足首と順に折ると首を掴んだ手に力をいれて喉を軽く潰した。


「ウゲェ」米山はセマヘロを床へと放り投げた。


 セマヘロが痙攣して床を這いつくばっている。米山は部屋の外から組員たちが近づく気配を感じた。セマヘロを残して入口へと向かうと廊下で組員の襲撃に備える。


 部屋の入口から廊下に出ると十数人の黒服の男が集まっていた。それぞれ拳銃やアサルトライフルを手にしている。


「どこのもんじゃーー! 我ぇぇ」


 一人がそう言うや銃撃を開始。ドドドドドドドド、激しい銃声が谺する。


「二本死!」


 ゴキィン、関節の鳴る音と共に米山の両手が光り輝いた。


 次の瞬間、無数の銃弾が米山に殺到した。入口の周囲の壁に弾丸があたり、破片を飛び散らせながら無数の穴が開く。


「うおりゃぁぁぁぁぁぁ!!」


 米山は光り輝く拳を高速で動かしながら銃弾を弾き返した。銃撃音と拳で弾を弾き返す音が廊下を満たす。


「ぐわぁ!?」


 拳で弾き返した跳弾が一人の黒服に当たった。それを皮切りに他の黒服にも次々と跳弾が当たっていく。


「うがぁ」


 一人の黒服は腹に弾が貫通、その場に崩れ落ちた。


「ぎゃ」


 別の黒服は額に穴が開き、後ろに倒れた。


「あぁん!?」


「だぁぁぁ!」


「べぇしぃ!?」


「がぁぁぁぁぁ」


 銃撃している黒服に次々と跳弾が当たり、倒れていく。銃撃で破壊された壁と破片が舞い、埃が覆い尽くすとその内に銃撃がやんだ。


「ふぅぅぅぅぅぅ」


 米山が息を吐くと拳から血が垂れた。気で強化していたとはいえ、身体も傷だらけになっている。その周囲には血塗れになり呻きながら倒れている黒服たちと動かなくなった死体が転がっていた。


「まだやるか?」


 周囲を見渡す。部屋の周りで様子を見ていた数人の黒服が逃げていくのが見えた。





 二人の動きを見ながら、コールマンは光るペンをアメモズに斬り付けた。


 アメモズが気で強化されたペットボトルで受け止める。ヤクザにしてはやるようだ。


「このアホボケェ! 兄貴をやってくれたなぁ! 毛野中組に喧嘩売るとは良い度胸や! 死にさらせぇ!」


「フッ、ただのチンピラが良く言うわ」


 光るペンとペットボトルをぶつけ合う。硬質な打撃音とともに軌道がわずかに逸れる。弾かれたペットボトルが軌道を変えて再接近する。


 二人はじりじりと窓辺に移動していく。アメモズがペットボトルを振り上げた。


「何笑っとんじゃお前、ふざけんなや! ペットボトル!」


 ペットボトルが勝手にアメモズの手から離れ、唸りを上げてコールマンの頭に向かった。


「!? キャァァァァァ!!」


 ペットボトルがコールマンの頭を直撃。コールマンは吹き飛ばされて庭に面した窓を突き破った。


 激しい音とガラス片が飛び散る中、コールマンは芝生に転がると受け身を取って立ち上がる。


 割れたガラスの破片を踏み潰しながら、怒気を発したアメモズが迫った。周囲をペットボトルが威嚇するように激しく浮遊している。


「徹底的に痛め付けたるわ!」


「それで三野寺を殺したのね」


「そうじゃーー! ボケェェェェ!」


 アメモズの横に浮いているペットボトルがコールマンに放たれた。


「ハァ!」


 コールマンは飛来するペットボトルを光るペンで受け止めた。切断よりも「押し返し」が先に来る。気で強化された強烈な圧力を感じる。


「ゴミが!」


 アメモズが拳を握るとペットボトルが光るペンから離れて回転して空中を舞う。ペットボトルが素早く半円を描くようにこちらの背後に周り込む。そのまま脇腹に激突。


「ぐぅ!」


 コールマンは痛みを噛み殺して脇腹のペットボトルに肘鉄を食らわせた。ペットボトルは下に落ちるが操られるようにアメモズのもとに舞い戻り、中空を舞っている。


 ドガガガガガガ、ペットボトルが次々にコールマンを打ち据える。


「うぐっ!」


「ふざけんなや!」


 アメモズが左右の手を動かす度にペットボトルがコールマンを乱打。光るペンを振るうがペットボトルが巧みに躱す。やはりアメモズをやるしかない。


「このゴミ仮面がぁぁ」


 ペットボトルで打たれながら空白ができた瞬間、光るペンを逆手に持ち変える。


「もう、お前はしまいや! 腐れ女!」


 無視して逆手でペンを握ったまま、腕はほとんど振りかぶられない。関節の遊びだけが一瞬だけ解放され、ペンが前へ押し出されるように離れた。


 光るペンは軌道を崩さない。空気を裂く線が低く、鋭く、まっすぐに伸びていく。全ては一瞬の出来事だ。


「おまっ!?」


 バチュン、激しい音。光るペンがアメモズの額を貫通、赤黒い傷口を穿った。


 額から血が吹き出して、アメモズは後ろ向きに芝生へと倒れた。


「誰が腐れ女だって?」


 コールマンは無感情に呟いた。





 高取は刃でタピオカを弾きながら、じょじょにソデミへと近づいていく。


 二人はボロボロになったソファーを間に挟んで周囲を回るようにしている。


 刃で斬ることは困難か、なら。高取は一気に駆ける。


「近づくんじゃないよぉ」


 ソデミが無数のタピオカを集中させて、四方を取り囲んだ。ボボボボボボボ、タピオカが空気を切り裂いて高取に向かった。


「今です」タピオカが着弾する瞬間、高取は上へと大きく跳躍した。


 高取のいなくなった空間に殺到した、タピオカ同士がぶつかる。


「!?」


 バチュン! 大きな音と共にぶつかった衝撃でタピオカが破裂した。跳躍した高取は回転して天井のシャンデリアに足をつけ、勢い良く蹴った。その反動でソデミへ向かって刃を斜めに切り払う。


「てんめぇぇぇぇぇぇ」


 ジャキィン! 刃がソデミの左胸を斜めに斬り裂き、血飛沫が吹き出した。


「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁ」


 悲鳴が響いた。片膝立ちで床に着地するとソデミを睨みつけた。


「人を馬鹿にしたものはいつか、しっぺ返しをくらう!」


 さらに立ち上がり様、高取はソデミの心臓目掛けて勢い良く右刃を突き刺した。刃が肉と骨を貫通し、心臓に達する感触が伝わる。高取の顔の横にソデミの顔がもたれ掛かった。


「げぇぇ!?」


 横を見る。すでにソデミの目の光は消えていた。勢い良く刃を抜き、払うと床に血が飛び散った。

 ソデミが地面に崩れ落ちた時、米山が部屋に戻ってくるのが見えた。


 高取は入口を警戒しながら、米山がセマヘロの机を漁り資料を袋に入れているのを見ていた。すると庭からコールマンが現れた。


「アメモズは始末したわ」


「残りの組員はどうします?」


「捨て置いて良い。ここを爆破する」


 米山が腰につけていた小型の爆弾を壁に設置した。コールマンは動けなくなったセマヘロを肩に背負う。


 高取たちは庭から外に出ると起爆装置を起動した。激しい轟音と共に邸内が炎に包まれた。そして、素早く塀に飛び乗ると周囲の住宅の屋根を次々と飛び移っていく。


 背後の炎に照らされて周囲が明るくなっていた。





 立川区の高架下は昼間でも光が届ききらない。シンイチはその中をゆっくりと歩いていた。


 毛野中組の壊滅。その報せはすでにニュースの断片として流れていた。毛野中アメモズ、ソデミといった幹部の名、組員の数、行方不明の組長。どれも現実の出来事として並んでいるはずなのに、どこか遠い戦争の記録のようでもあった。


 シンイチの内側にまず残ったのは達成感ではなかった。静けさだった。


 待ち合わせ場所はコンクリートの影が何層にも重なり、音だけがやけに反響する場所だった。


 そこに立つ矢迷値は最初からそこにいたような自然さで暗がりに溶けていた。


 シンイチは封筒を差し出す。中の五十万円は、軽い紙の束にすぎないのに妙に重く感じられた。


「兄の仇を討っていただき、ありがとうございます」


 頭を下げた瞬間、自分の声が思っていたより平坦であることに気づく。感謝なのか、区切りなのか、自分でも分からない。


 矢迷値は封筒を受け取ると、金額を確かめる素振りも見せずにしまい込んだ。その動作には迷いがない。


 そして、肩に手が置かれた。


「お前は兄の分まで長く生きるんだ」


 その言葉は慰めとしてはあまりに簡素で、感情の装飾もない。それなのになぜか心に響いた。


 矢迷値はそれ以上何も言わない。封筒を懐に入れ、踵を返す。足音は高架の奥へ吸い込まれていくように消えていく。


 残されたシンイチは、その背中を見送ったまま動かない。


 仇は消えた。形だけ見れば、すべては終わっている。シンイチはゆっくりと視線を落とす。だが、オザムは帰ってこない。





 セマヘロが目を覚ますと周囲は暗闇に包まれていた。


「ここはどこだ……」


 記憶を絞り出していくと家に黒い仮面を付けた人物が入ってきたこと、アメモズとソデミを殺したことを思い出した。次に意識がはっきりしてくると今度は手足に激痛を感じた。関節が折られていて動かせないだけでなく、どうやら縄で縛られて椅子に座らされているようだ。


「うぐぐぐぐぐ」


 痛みで喘いだ。セマヘロは痛みと混乱の中でなぜ、こんなことになったのか考えていた。メリーズか、馬人組か、いずれにしてもここから出なければならない。恐怖心が満ちてきたが負けないように声を出す。


「ぐぐ……こんな……ことしてただで済むと思ってんのか!?」


 その時、一瞬視界が真っ白になった。目が慣れてくると黒い目出し帽を被った男が左手に持ったライトを当てていた。右手には釘を一本持っている。


「毛野中組長、初めまして私は狂師だ。多くの罪なき人々を殺めてきた借りを返す時だ。だが、その前にお前の知っていることは全て吐いてもらう」


 男がそう言うと釘を折れた右腕の親指の爪の間に突き入れた。


「ギャァァァァァァァァ」


 痛みでセマヘロは大声を上げる。目の前に男の顔が近づいてきた。


「それでは教えてもらおう……」



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