38 ヒット・ザ・毛野中組②
毛野中組との戦い。37~39まで続きます。
ページ下部にある【設定資料】ハチオウジギア のリンクに登場人物紹介あります。
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立川区住宅街。「毛野中組」と書かれた看板が掲げられている豪邸。豪邸の中は和風な作りで日本庭園もあった。
複数人の黒服が見回りをしている。一際大きな扉が見えた。
その中でおかっぱ頭に眼鏡をかけたスーツ姿の毛野中セマヘロが大きな机に座り、手を組み合わせていた。その前のソファーには金髪でギャル風の服装をした毛野中ソデミ、ラフな服装の毛野中アメモズが並んで座っている。
扉が開き、眼鏡をかけた腹安ツカヒロが入ってきた。麻薬ディーラー「セーカー」の構成員である。ライフウェーブは製造している違法薬物ハピウケを流通させる為に複数の麻薬ディーラーに卸していた。セーカーはその一つである。
腹安が扉を閉める音が響いた。
「そういう風に閉めたら耳がおかしくなるだろ、お前。考えろ」
セマヘロが腹安に怒声をあげた。
「はい、すみません」
腹安の額から汗が吹き出す。
セマヘロは机を手で何度も叩いて威圧した。腹安は頭を下げて、おどおどしながら、ソファーに腰を下ろした。今度はソデミが身を乗り出して、怒鳴った。
「腹安! お前らから購入したハピウケだけどさぁ、純度が低いって噂がたってんだよ。どういうことだ?」
「そんなこと言われましても、我々セーカーはライフウェーブから仕入れて毛野中組にハピウケを販売してるだけで」
「色々言いたいことあるけど、とりあえずさー、お前がハピウケをライフウェーブに黙って、薄めたんだよなー?」
「何を言ってるんですか!? わ……私がそんなことするわけないじゃないですか!」
「良い年こいた、じじいにいちいち言うことじゃないし、馬鹿馬鹿しいんだけどさー、嘘ついちゃって後ひけなくて、焦ってるのバレバレすぎだから、今のうちに謝る所謝るなり、認める所認めて筋道くらい通しなよ! 嘘つき!」
ソデミが大声をあげた。
「そ……そんな! 言い掛かりだ!」
「ああん! 客が優しくお前の不正を叱ってあげてるのにその態度はなんだ!」
アメモズがいきなり腹安の胸ぐらをつかんだ。
「この前、三野寺って記者が殺されたやろ。あいつはペットボトルで頭を貫いてやった。同じ目にあわせたろか!」
「ひぃぃぃぃぃ」
「アメモズ、まぁまぁ暴力はやめなさい」
「兄貴が言うなら」
嗜められたアメモズは腹安の胸ぐらから手を放す。セマヘロが冷酷な笑みを浮かべた。
「腹安、この際だ。お前らのやったことは黙っておいてやるから次のハピウケは半額にしろ」
「えっ!? 半額!?」
腹安が青ざめる。
「なんか、イラッとするわ、お前。半額は半額だ。もし、できないってんならお前らのやったことをライフウェーブに言うからなぁ。そうなったら終わりだよ。お前、死ぬぞ」
セマヘロが一際大きく机を叩いた。
「それはぁ、いやぁ、あの」
「いやぁって言ってるけどな、お前の命で払えんのか? お前だけじゃ足りない、家族の命もだ、ハピウケなんぼだと思ってるんだよ。お前、払えると思ってんのか命ぃ?」
「すみません、払えません」
「絶対払えないよ、お前、反省してる風に見えないんだよぉ、お前」
「……わかりました、半額で進めさせて頂きます」
「お前はぁ、なんちゅーかなぁ、お前の組織が悪いな。まぁ、わかれば良いんだよぉ、たく、どういう教育してんだ?」
「すみません」
「さっきからその受け答え、なんちゅーか、子どもちゅーか、やっぱイラッとするわ」
「はい」
「もう、良い。お前見てると腹が立つ。とりあえず半額にしろよ!」
「はい、わかりました」
腹安が俯く。セマヘロ、ソデミ、アメモズはそれぞれ睨みつけた。
話の詳細がまとまり、腹安が退出するとアメモズが壁を殴りつけた。
「勝手に薄めたもん売りやがってボケェ」
アメモズはセマヘロとソデミに向けて叫んだ。
「かまわんよ、そのお陰で奴を脅せた。それに薄めた商品であることに気づいたのは一部だ。奴らは我々に自分の身を削っても半値で売るだろう。でないとライフウェーブか私たちに殺されるからなぁ。それより、三野寺以外に武器売買をつけられていないだろうな」
「兄貴、安心してくださいよ。その件に抜かりはないです」
「あーしはアメモズのことちょっと心配なんだよねー。超人だからって調子乗りすぎ。あーしも超人に覚醒してんだからね」
「うるせぇ、ボケェ」
「何だとクソ兄貴、あーしの力、総出で潰してやんよ、あぁん」
「上等だ、ボケェ、ぶん殴ってやるこのアマぁ」
「二人とも静かにしろ」
セマヘロが一喝すると、二人は黙った。
「今、毛野中組が凶分組の中で頭角を現すチャンスなんだ。しくじるんじゃないぞ」
◆
夜の闇を黒いワゴン車が疾走している。後部座席、高取は特殊スーツを着込み座っていた。膝に乗せている仮面を見つめている。
「顔色が悪いな、朝はちゃんと食べてるのか?」
米山が問いかけた。
「いえ、朝はコーヒーだけです。……カヨコがいる時は食べてましたが、一人だと億劫になってしまいましてね」
仮面を見つめながら答えた。
「やっぱりか。前も言ったろ、ちゃんと食える時に食っといた方が良いぞ。見てみろ、俺は朝しっかり食べてるから健康に見えるだろ?」
「米山、あなたはもう少し抑えた方が良いんじゃない。最近また太ったでしょ?」
コールマンがつっこむ。
「やめろ、健康だから良いんだよ。コールマンこそ最近肥えたぞ。狂師としてちゃんと管理が必要だな」
「余計なお世話ね」
「米山さんは何で健康だと自信があるんです? 健康診断でも受けてるんですか?」
「いや、受けてないけど病気もせずに、しっかりと戦えてるし、健康そのものだ」
「健康診断も受けてないのに偉そうに言ってたのね。呆れた、私は健康診断でオールAだからね」
コールマンが溜息をつきながら答えた。
「私も高校の関係で受けましたがオールAでした」
高取は被せるようにして米山に言った。
「だから何だっていうんだ! そんなものあてにならないぞ、健康診断が良かった知り合いはそのすぐ後に病気で……」
『そろそろだ』
スピーカーから後藤の声が聞こえた。その声を待っていたように高取は仮面を装着する。隣に座るコールマンと米山も同じように仮面を装着した。
黒いワゴン車は立川区の住宅街へと静かに侵入。毛野中組に設置された監視カメラの死角にあたる場所を目指していた。設置された監視カメラは事前に米山によって調査されている。
高取は車載カメラの映像で毛野中組の豪邸を確認した。
『準備は良いか? ターゲットに逃げられたくない。計画通りに進めろ。頼むぞ』
高取は立ち上がると後部ドアの前に立つ。車が監視カメラの死角に入った一瞬の間に車から飛び出し豪邸に潜入する作戦だ。
後部ドアが自動で開き、風が車内に吹き込んでくる。
『行け!』
米山とコールマンが先に飛び出す。高取は後を追うように素早く外へと跳躍した。
素早く走る高取の目に豪邸を囲う黒い塀が見える。米山が調べた警備状況を思い起こしながら、黒い塀を飛び越えて庭の芝生へと着地。
着地地点の後ろにいた黒服を着た組員の男は高取たちの存在に気づいていない。
米山が先頭で走り、コールマン、高取と続いた。三人は風となり、豪邸の裏側にある配電板を目指す。周囲を警戒しつつ細い通路を抜けた先、目的の鉄箱が姿を現した。
先に着いた米山が配電板に躊躇なく拳を打ち付けている。激しい音と火花が散り、邸内の電気が落ちた。庭を照らしていた明かりも消え、組員のざわめきが聞こえてくる。
三人は混乱の中をさらに奥に進む。裏口の扉だ。米山が扉に近づくと握力でドアノブを捻じ切り強引に扉を開いた。
中に踏み込むと非常灯が廊下を照らし出していた。広い木製の長い床が広がっている。その床を音を立てずに組長室を目指して走った。
すると角から慌てたように黒服の男が現れた。
「なんだ!? てめぇ!」
黒服の男は懐に手を入れて、拳銃を取り出そうとした。すかざす米山が近づくと男の首を片手で絞める。
「ちっと、黙ってろ」
米山は絞めた首を素早く捻った。
「げぇ……」
男は蛙の潰れたような声を出し、白目を剥いて倒れた。米山を先頭に廊下を進んでいく。前方に二人の黒服の男が角から現れた。
「なんだ!? てめぇ!」
「なんだ!? てめぇ!」
これも米山が男たちの間に割り込むと手刀で二人の首を打ち据えた。
「げぇ……」
「げぇ……」
二人をそのままに奥へと進んでいく。米山が止まり、高取とコールマンを制した。
「あそこが組長室だ」
米山が顎をやる。扉の左右に黒服の男が立ち、周囲を警戒していた。邸内から騒ぎ声が響いている。
「あの中にアメモズはいるんですね?」
「そうだ。組長は血縁のアメモズとソデミを信用し奴らに警護させている」
「行きましょう」
米山が角から飛び出す。
「なんだ!? てめぇ!」
「なんだ!? てめぇ!」
扉に向かって駆けながら、高取は両手の拳を握って力を込める。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ジャキィン! ジャキィン! 両腕のアームカバーから二対の刃が突き出す。横を駆けるコールマンが右手で頭からボールペンを引き抜く。
「ボールペンソード!」
ブゥゥゥゥゥン! コールマンの握るボールペンから光の刀身が現れて固定。先頭を行く米山が黒服の男二人の腹に拳を叩き込んだ。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ」
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ」
二人は叫びをあげ、その場に崩れ落ちた。同時に米山が扉を蹴り開ける。
ドンッ! 扉が開くと高取は米山を先頭に室内に入った。
非常電源で明るくなった室内、正面の机に座るセマヘロが驚きで目を丸くしている。ソファーに座るアメモズ、ソデミも突然のことに驚いていた。
「何もんだ! こらぁ!」
アメモズが立ち上がり、ソデミも睨みを効かせる。
「お前たちに名乗る名前はない。お前たちの罪を裁きにきた。いいか、いつまでもでかい顔しているなよ! 終いには青い顔になるからな」
入口で仁王立ちになった米山が相手に宣告する。セマヘロが怯えながらも睨みを効かせた。
「突然入ってきてなんだ! カチンとくるんだよお前ら! アメモズ、ソデミこいつらをやっちまえ!」
アメモズが腰に挿していたペットボトルを抜き出して、コールマンに向けた。
「ぶっ殺したるわ! ボケェ!」
高取の横、コールマンがアメモズに向けて光るペンを振るうのが見えた。
「覚悟決めて死んじゃいな、おじたん」
ソデミが啖呵を切る。
高取は刃を構えるとソデミはテーブルに置いてあったカップを持ち上げた。カップの中は黒い玉が浮かんでいる茶色の液体、タピオカミルクティーだ。
「タピオカちゃん、おじたんをやっちゃいな! タピカツ!」
ソデミの持つカップから無数のタピオカがひとりでに宙に浮き上がった。ソデミが手を振るとタピオカの一つが高取に向けて弾丸のように射出。
とっさに高速で飛んできたタピオカを刃で軌道を滑らせて逸らす。
「何です!?」
弾き返したタピオカが再び高取めがけて殺到した。戻ってきたタピオカを刃で斬りつける。
タピオカがたわみ両断できない。タピオカは気の力で強化されており、弾力のあるゴムのような感触となっている。舌打ちしながらも刃を振るった。
その時、米山がセマヘロに向かっていくのが見えた。
「兄貴!!」
ソデミが手を米山の方に振った。ボボボボボボ、空気を切り裂き米山にタピオカが殺到する。
「余所見とは余裕……ですね!」
高取は米山の前に立ち塞がった。左右の刃で弾き返していく。
ソデミが睨みつけてさらに手を振ると弾き返されたタピオカが再びこちらに向かった。
「うるせぇー、タピカツ!」
「ハァァァァァァァ!」
両の刃を同時に振り、タピオカを弾く。
「タピカツ、カツ、カツ、カツ!」
「ハァァァァァァァァ!」
「タピカツ、カツ、カツ、カツ!」
「ハァァァァァァァァ!」
「タピカツ、カツ、カツ、カツ!」
「ハァァァァァァァァ!」
次々と迫るタピオカを何度も刃で斬り付けることで弾いていった。




