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ハチオウジギア  作者: ティーマン
シーズン1 Part1
35/46

35 エネミー・エンカウンター④

狂師に迫る新たな敵。32~36まで続きます。今週は月と金の週二回更新となります。



 


 夕闇の中、高取は早井と向き合っていた。静けさの中で刃を早井に向ける。刃が擦れて金属音が響いた。


「同じ超人としてこの私を殺しに来たということか? 無駄なことはやめよう。お前の目的は何だ? どうだ金が欲しいならあげよう」


「私の目的ですか? 金は要りません。私はあなたに殺された人たちの代わりに復讐に来たんです。欲しいのはあなたの命です」


 言い終わるや早井に向けて突進。受けるように早井が股間の触手を動かした。


 激しい金属音が響き、金色の触手が高取に向けて殺到。


 「はぁ!」刃で触手を斬り払おうとする。


 ギィン、硬質な触手が刃とぶつかる。火花が飛び散った。


「男の気は吸いたくないが超人の味は気になる。私に寄越すんだーー」


 早井がこちらに指を向けると指令を受けたかのように触手が勢い付く。刃を捻じるようにして振り払った。


「ちっ」


 勢いをそのままに触手の先端が高取の顔へと刺すように迫る。


 触手が口の辺りに当たる寸前。なんとか顔を横にずらす。ギャリリリ、仮面の側面を削られながらも回避。


 そのまま高取は横に向き、触手の側面を殴りつける。その反動で後ろに飛び触手と距離をとった。


「ふぅ、躱すとは生意気だな」


 早井が触手を再び、こちらへと向ける。


 高取はじりじりと動き、間合いを図る。ここだ。早井に向けて踏み込む。


「ほらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ見てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」


 触手が次々に突きを繰り出してくる。ギャリン、ギャリン、ギャリン、高取は駆けながら連打のように刃を触手に刻み込む。


 察したのか早井が触手の突きを繰り出しながらも警戒しつつ、砂場から広場へと駆けていった。


「ハァ!」


 広場に出ると早井が一気に後方へとジャンプ。距離を保った。


ギャリン、ギャリン、ギャリン


 距離を保ちながらも触手は伸びる。高取の刃が途切れずに触手と連なり続ける。空隙。ここぞとばかりに刃に力を込める。触手が弾かれた。その勢いで触手が高々と上がる。


「ヒュドラーがアップ、アップになったよぉぉぉぉ」


 早井が絶頂に達したかのように奇声を上げる。奇声に導かれるように高く舞い上がった触手が高速で迫る。まずい。


「ぐっ!?」


 ドズゥン、左肩に鋭い痛みがさす。触手の先端が左肩に突き刺さっていた。幸い無意識に触手を掴んでいたので傷は浅い。引き抜こうとするが引っかかる。


「もうどこからでも良い、力をもらうぞぉ!」


 高取は自らの力が吸われていくのを感じた。


「うぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」


 ズズズズズ、吸われるような音がしふらついた。触手を掴み抜こうとするが力が入らずうまくいかない。


「イキそうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ! ヒュドラーの中がエネルギーまみれぇぇぇぇ!」


 早井が恍惚している。高取はなんとか触手を抜こうとするが手の力が抜けていく。


「もっと、もっとぉぉぉ、超人の力はすごいよぉ、もう、女の子の超人をあてがってくれるなら、フシモリの犬になりたいぃぃ、ワンワン! ワンワン! うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」


「うっ、抜かりましたね……」


 それでも触手を抜こうとした時、


ジャキィィン!


 鋭い音と共に触手が止まった。


「隙ありね」


 前を向く。コールマンが光るペンで触手を真ん中から、両断しているのが見えた。


「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 早井が泣き叫ぶ。


「情けないわね」コールマンが冷たく呟く。


 高取は触手を引き抜き、遠くに投げ捨てた。触手が地面に落ち金属音が響く。


 振り向くと早井が涎を垂らしながら必死の形相で股間を押さえて悶絶している。


 高取は刃を構え、ゆっくりと距離を詰める。早井の目の前で立ち止まった。早井が身体を震わせながら視線をこちらに向けた。


「ここまでです」


「や……め……て……」


 刃を早井の首に狙いをつける。


「死にな」


 早井が涙目で見上げている。


「ギャァァァァァァァァァァ」


 早井が叫んだ。高取は刃を空気ごと断ち切るように振り下ろした。


ガキィン!


 突如として金属音が鳴り、火花が飛び散った。


「なっ!?」


 高取の刃が横から突きだした刀によって受け止められていた。


「失礼」


 合成音が聞こえ、右に視線を向けた。


「そいつは俺たちの獲物だ」


「くっ、何者です?」


 そこには刀を構えた異様な男が立っていた。短髪で額から下を白いホームベースのような仮面が覆っている。白いレザーの上下を着ており、上着の下を薄く密着した黒い強化装甲が覆い、腹部に白い晒しが巻かれていた。


 白い仮面が高取を見つめた。


「特殊戦術室……青龍会だ」


 白い仮面が強い力で刃を押し返していく。負けじと刃を押し込む。しかし、力が拮抗して膠着した。


「青龍会!? くっ!」


 高取は刃を刀から引くと後方にジャンプ。コールマンに近づいた。


「見て、囲んでるわ」


 コールマンの言うように公園の砂場に二つの影が見えた。


 一人は同型で緑の仮面を被る短髪の男だ。がたいの良い上半身を黒い強化装甲が覆っている。腕を緑の装甲が覆い、その手には巨大なハンマーを握っていた。


 もう一人は同型で黄色い仮面を被っている。体形から判断すると女性だ。黒い髪が風に靡いている。肩と胸を黄色い装甲が覆い、サーブル剣を持っていた。


「ホワイト! 大丈夫ですか?」


 黄色い仮面が白い仮面をホワイトと呼び気遣う。白い仮面、ホワイトがゆっくりとこちらに顔を向ける。


「俺はこの刃の男と早井に対応する。イエローはグリーンと共にその女を頼む」


「了解」


 黄色い仮面、イエローの言葉に緑の仮面、グリーンも頷いた。恐らく各々に特徴的な色がコードネームになっているのだろう。


 高取は構えを崩さずじりじりと移動し、コールマンに背中を預けた。コールマンが後ろを向いて呟く。


「これが噂の青龍会ね。私は砂場にいる奴らを相手にする。その間に白い奴を制して……早井を殺しなさい」


「わかりました」


 前を向くとホワイトが悶絶する早井の前に立ち塞がっていた。


「行くわよ」


「ええ」


 高取はコールマンと同時に目的に向けて踏み込んだ。ホワイトが両手で柄を握り、刀を構えるのが見える。こちらも駆けながら刃を振りかぶる。


「早井は女子高校生を殺した男です。それを警察が庇うんですか?」


 一陣の風。二つの斬撃が同時に解き放たれる。


 ガキィン! 高取が放つ刃をホワイトが刀で弾き返す。


「庇う? 超人は俺たちの獲物だ。お前も法を犯す殺し屋の超人……奴と同じだ」


 高取はさらに刃を鋭く振り抜く。すかさずホワイトが刀で打ち払う。それでも左右の刃で両側から一気に切り裂く。ホワイトが刀を一直線にしてそれぞれの刃を弾いて即座に斬り返す。高取も重みを乗せて振り下ろす。


 打ち合った瞬間、金属音が弾ける。ガキィン、ガキィン、ガキィン、ガキィン、幾度も刃と刀がぶつかり合う。


「ハァァァァァァァァァァァァァ」


 切り返しながら振り続ける中でホワイトの隙を伺っていた。しかし、隙が見えない。なら作るまでだ。


 高取は地面すれすれを滑るように踏み込み、二条の閃光で脚を切り裂く。


 ガキィン、ホワイトの刀がすくい上げるようにして刃を防いだ。互いの刃が滑り、離れ際に再び火花が散る。ホワイトの切っ先がこちらに向く。


「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 ホワイトから鋭い突きが放たれる。とっさに刃で突きを受け流した。さらにホワイトも斬撃を繰り出しながら、こちらの隙を待っているのだろう。


ガキィン、ガキィン、ガキィン、ガキィン


 雷のような軌跡を描く刀に対し、二条の斬線が絡みつくように攻め立てた。


「ハァァァァァァァァァァァァァ」


「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「ハァァァァァァァァァァァァァ」


「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「ハァァァァァァァァァァァァァ」


「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 刃と刀が何度もぶつかった末に密着し膠着状態となる。刃が食い込み、押し合いになる。高取が力を込めるとホワイトも力を込め、刃と刀の鍔迫り合いになった。仮面越しにホワイトを睨む。


「そこです!」


 高取は均衡を崩すように右脚で蹴りを放った。ホワイトが柄を握る右手に力を込める。素早く左手を離し、チョップに変えて足を叩きつけた。続けて脇腹に向けてホワイトの蹴りが炸裂する。


「ぐぅっ!」


 高取は脇腹に走る鈍い痛みを噛み殺す。膠着が解かれ、後方に体勢が崩れる。その勢いを利用して高取はホワイトの右手めがけてハイキックを放った。


「ちっ!?」


 バキィン、ホワイトの持つ刀が宙を舞い、地面に落ちた。一瞬の隙をついて、高取は体勢を立て直し一歩踏み込む。そのまま刃をホワイトの胸を目掛けて突き出した。


「甘い」


 ガシッ! ホワイトが高取の突き入れた腕を両拳で左右から押さえつける。刃がホワイトの胸の前で止まったまま固定された。


「この力は!?」


「くらえ!」


 さらにホワイトは左拳で右腕を殴り飛ばし、同時に右拳を高取の腹に打ち付けた。


「ぐわっ!?」


 高取は後方によろめく。ホワイトが腰を落として、拳を構えた。その瞬間、拳の周囲が陽炎のように歪み、光が宿る。


「人鬼神拳」


 ホワイトが地面を踏み割るような勢いで踏み込んだ。肩を切り、腰をねじり、光を纏った拳が風を裂いて走った。高取は反射的に刃を構えようとするが、間に合わない。


 ガォォン、ホワイトの拳が顔面に叩き込まれた。衝撃で眼前が真っ白になる。


「!?」


「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 ドガガガガガガ、ホワイトの拳が間断なく叩き込まれ、鉄槌の雨が降り注ぐ。高取の頭と胸、腹を次々に捉えていく。身体の深部まで抉るような拳はさらに速く、さらに重くなっていく。


 痛みの中で相手の攻撃を分析した。今までの攻撃とは質が違う。ホワイトは気を込めた打撃だけでなく、インパクトの瞬間、体内にも届くように気を打ち込んでいた。まさに人体の内外を破壊する拳である。


「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 重い拳による打撃が続き、身体にダメージが蓄積していく。


「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 ホワイトが殴り続ける。痛みに耐えながら反撃の瞬間を探る。


「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 ホワイトの拳を受けながらも、反撃の為に拳に力を入れた。


「そこまでです!」


 ホワイトが左腕を引いた瞬間、刃を突き出して左脇腹に斬りつけた。攻撃に気付いたホワイトが身体を捻ろうとするが間に合わない。


 ジャキィィン、刃が晒しを切り裂いて装甲服に食い込んだ。ホワイトは痛みを感じたのか打撃をやめて後方へと下がる。


「ぐぅ」ホワイトが呻き、脇腹を押さえた。


「この力? あなたも超人ですか」


 ホワイトの人間離れした反応や力に対して思わず言葉が出た。その瞬間、彼から恐ろしい程の殺気が噴出した。


「俺は人間だ!」


 ホワイトが吐き捨てるように言うと拳を握り締めて再び構えをとった。背後からコールマンの戦う音が聞こえる。が、高取はホワイトから目を離せなかった。


「人間がこんな力を……」


「ああ、人間をなめるな超人!」


 刃を構えると再び、ホワイトに突進した。



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