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ハチオウジギア  作者: ティーマン
シーズン1 Part1
27/31

27 ザ・ディセプション・オブ・ザ・セイナール教会③

セイナール教会との戦い。25~27まで続きます。





 高取の前を走るコールマンと米山の黒い仮面が街灯に反射して揺れているのが見えた。


 高取の耳に地面を駆ける自らの足音が微かに響く。一〇〇メートル程先に教会の壁が見えてきた。高取は駆けながら、教会の位置関係を再度頭に描き、シュミレーションした。壁はもう目の前だ。


「いくぞ」


 米山が呟くと同時に垂直に壁を駆け上がった。米山に続いて高取もコールマンと共に壁を駆け上がる。


 壁の上まで達すると踏み込む音を響かせて一気に跳躍した。高取達は敷地内に着地するとカメラ、センター、警備員の死角を蛇行して、気づかれないに走り抜けた。コンクリートを駆ける足音が小さく響くが誰も気がつかない。高取は走りながらオフィス棟の四階、会議室を見上げて明かりを確認した、敵はそこにいる。


 オフィス棟の下まで辿りつくと加速をつけて垂直に壁を駆け上がった。


 コールマンが先行する米山を追い抜かして右手で頭からボールペンを引き抜いた。


「ボールペンソード」


 ブゥゥゥゥゥン! コールマンの握るボールペンから光の刀身が現れ固定された。


 コールマンは光るペンを四階会議室の隣室にある窓ガラスに素早く突き刺す。ガラスが焼ける音が微かにさせながら、コールマンは光るペンを回転させて窓ガラスに人が通り抜けられる程の円を描いた。


 円形の窓ガラスが内側に落ちて音が小さく響いた。窓に空いた穴にコールマン、米山が飛び込んでいく。高取も穴に飛び込むと暗い部屋の中へと下り立った。暗い部屋は普段は会議室として使われているようで机と椅子しかなかった。高取は戦いに向けて気を集中さた。


「しっぺ返し」高取の呟きと共に両腕のアームカバーから二対の刃を突き出した。高取が横を見ると米山も気を集中させていた。


「二本死!」


 関節の鳴る音と共に両手が光り輝いた。米山の光る手とコールマンの光るペンが暗い部屋を照らしだした。


「行きましょう」


 高取はドアを開けると廊下を数歩進んで会議室の前で立ち止まった。高取、米山、コールマンが互いに頷きあう。高取は片足を振り上げ、足の裏でドアを蹴り開けた。


 ドアが勢い良く開き、銅田、ミルコ、上素斗、下北が一斉に入口を振り向いた。


「な・・・・・・なんだ!?」


 銅田が声をあげた。会議机の正面奥に銅田が座り、右側にミルコ、左側奥から上素斗、下北の順に座っている。


「何者だ!?」上素斗が問いかける。


「新野タダノリや金儲けの為に犠牲になった信者の報いを受けてもらうわ」


 コールマンが言うと、高取の脇を抜けて下北に目掛けて駆けていく。それを追うように高取は刃を構え、上素斗に突進した。米山も銅田とミルコへと向かっていく。


 高取に対応するように上素斗が立ち上がるとズボンに刺していた団扇を掴んだ。


「無礼者め! 主よ! 目の前にいるものを吹き飛ばしたまえ」


 そう言うなり上素斗が立ち上がって、高取に団扇を二度三度と扇いだ。団扇から強力な衝撃波が放出し、高取の身体が後ろに吹き飛んだ。


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 高取は背後の壁に叩きつけられ、そこに突風のように上素斗が駆け寄ってきた。高取は痛みを押し殺して息を整えると刃を構えた。


 高取は右腕の刃を振り上げて殺到する上素斗を斬り付けた。


「主よ! 団扇で防ぎたまえ」


 上素斗が団扇を振り上げると団扇の周囲を陽炎のように空気が覆って、刃を受け止めた。


「くっ!」高取は呻いてさらに左腕の刃で斬り付ける。上素斗が再び団扇で防ぐと左手で拳を作った。


「主よ! 左腕を伸ばしたまえ」


 一瞬にして上素斗の左腕が瞬時に一メートル程伸びて、拳が放たれた。伸びた拳が高取の顔面を殴り付ける。


「ぐわっ!」


 高取は後ろに仰け反る。さらに伸縮して勢いのついた左腕から拳が放たれて顔面に次々と叩きつけられる。顔面を殴られながらも、上素斗の腹を目掛けて蹴りを放った。


「うぐっ」


 上素斗がよろめく、すかさず高取はボディーブローのように右刃を放つが団扇に受け止められた。


 さらに上素斗が左腕を伸ばして拳で襲いかかる。高取は左腕を掲げて拳を防ぐと上素斗に向けて蹴りを放った。上素斗は股を上げて蹴りを受け止めた。そこから高取は刃と蹴りを、上素斗は団扇と拳を夫々が繰り出して高速で打ち合った。


 ドガガガガガガガガガガガガ! 打ち合いが続き、高取の額から汗が噴き出した。


「いやぁぁぁぁぁぁ」


 打ち合いの最中、右奥からミルコの悲鳴が聞こえた。米山が追い詰めているのだろう。上素斗がミルコの悲鳴に一瞬振り向いた。高取はそれを見逃さず左腕の刃で斬り付けた。


「ぐぅ!?」


 鋭い音がして上素斗の右脇腹が裂けた。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 上素斗が痛みを噛み殺すように歯をくいしばり、右手の団扇を振るって刃を弾いた。


「主よ! 目の前のものを壁に張り付けたまえ!」


 上素斗が勢い良く団扇を扇ぐと今までにない程の衝撃波が放たれた。高取は衝撃波をまともに全身で受け、後ろに吹き飛ばされた。


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 ガァン! 再び、高取が壁に激突。さらなる衝撃波が身体に放たれて押さえつけられたような状況になった。


「主よ! この者を潰したまえ!」


 上素斗が何度も何度も団扇を扇ぐ。その度に強力な衝撃波が高取を襲った。


バァン!


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


バァン!


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


バァン


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 高取は衝撃波で何度も壁に押さえつけられた。上素斗の勝ち誇ったような笑みが見え、頭に血が上る。高取は衝撃波を耐えながら拳を握り、気を集中させた。高まる気を上素斗への殺意を力に変えていった。





 コールマンは激しく戦う高取と上素斗を視界に入れながらも、下北の動きを冷静に見定めていた。


 高取は苦戦しているようだが、大丈夫だろう、それよりも、先ほどからコールマンの斬撃を逃げるように下北が躱し続けている。下北もこちらの隙を待っているようだ。


 下北が斬撃をよけて身体を開いた、コールマンはそこに隙が見て、光るペンを斬り付けた。すると下北はニヤリと笑って右手で斬撃を受け止める。


「スーパーテクニック」


 下北が光るペンを掴みながら叫んだ。じょじょにペンの光が下北の右手に吸収されていく。


「何!?」


 コールマンは光るペンを引いた。下北が相手の気を吸収するタイプであると判断。吸収する手の届かない範囲に狙いを定め、光るペンで足を斬り付けた。 


 下北がとっさに屈み、光るペンを手で受け止めた。


「スーパーテクニック! お嬢ちゃん。甘いな」


「ちっ」コールマンは相手が戦いに慣れていることを悟り、手数で押していくことにした。


「ハァァァァァァァァァァァァァ」


「スーパーテクニック」


 コールマンは次々と斬撃を繰り出した。それを下北が素早く受け止めていく。


「ハァァァァァァァァァァァァァ」


「スーパーテクニック」


「ハァァァァァァァァァァァァァ」


「スーパーテクニック」


「ハァァァァァァァァァァァァァ」


「スーパーテクニック」


 斬撃のスピードをじょじょに上げていく中で下北の額に汗が浮かんでいるのをコールマンは見逃さなかった。斬撃を繰り出し押していけば勝機は見える。


 その時、下北の背後にいる米山の動きが目に入った。米山が銅田とミルコに対して大股で近づき、追い詰めているようだ。ついに米山の圧力で二人が壁にぶつかるとその場にへたりこんだ。


「どこを見ているんです! スーパーテクニック!」


 下北の叫びで視線を戻した。


バジィン! バジィン! バジィン!


 コールマンはさらにスピードを増しながら光るペンで斬り付けていた。それを汗をかきながらも下北が巧みに左右の手で受け止め続ける。


「光るペンの味はどう?」


「良い餌だ! これぞ・・・・・・スーパーテクニック!」


 コールマンの光るペンと下北の手による攻防が激しさをます中、下北が目に入った汗を拭った。その瞬間、コールマンは右足を後ろに振り上げると下北の左脛に目掛けて一気に叩きつける。ベキィッ! 骨が砕けるような音がした。


「がぁ!?」


 下北の体勢が崩れ、左に傾くとコールマンは素早く光るペンを下北の首へ目掛けて斬り付けた。


「やめぇ・・・・・・」


 叫び終わる前に下北の首が光るペンで切り裂かれた。頭は勢い良く飛んで窓ガラスを割り、外の闇に落ちていった。切断面から血を撒き散らしながら、頭の無い胴体が床に倒れた。コールマンは身体に着いた下北の血を拭った。





 米山は銅田とミルコの前に立ち、光る右手の指を鳴らして威嚇した。超人ではない二人を殺すのは簡単だ、だから、絶望を味合わせることにした。


「どうだ? お前たち自慢の超人も後、一人だ」


「頼む、助けてくれ! 何でもする!」


 銅田が土下座をして大声で懇願した。


「いやぁぁぁぁ、助けてぇーー」


 ミルコも負けじと叫んだ。


「そうやって、助けを求めた信者を踏み躙ったのは誰だ」


 米山は光る右手でミルコの頭を掴んで引き起こした。


「ギャッ!?」ググッ、ミルコが直立した。じょじょに指の力を強めていく。


「やめなさぁーーい」


 ミルコが喚いた。頭蓋骨の軋む音を響かせながら、米山がさらに右手に力を入れた。


「悶絶!!」


 米山が叫ぶと板が割れるような音が響き渡った。


「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァ」


 ミルコの頭が光る右手に握り潰された。血飛沫と肉片を壁に飛び散らせながら、頭を失ったミルコが床に崩れ落ちた。


 米山は右手に付着した血を振り払って、目線を返り血を浴びて、震えている銅田に移した。


「ひぃぃ、化け物め!」


「次はお前だ」そう呟き、米山が銅田を見下ろした。銅田は震えながらも高取と上素斗の戦いに向けると引きつったような笑みを浮かべた。


「ひっ、ひっ、なんだ、お前の仲間は押されてるじゃないか? 上素斗! そいつを倒して、私を助けなさい!」


 米山は高取の戦況に目をやる。高取が上素斗の衝撃波により、壁に縫い付けられていた。だが、彼は衝撃波を受けながらも、屈せずに体勢を変えようとしていた。


「面白い、銅田、決着が着くまで待っていてやる。上素斗がやられて絶望するのはお前だ」





「ぐっ、助けを求めてますよ。早く私を倒さなくて良いんですか」


 上素斗に団扇の衝撃波で押さえつけられながらも高取は言った。抗うように右膝を少しづつ曲げている。


「バカにして! 主よこの者をくたばりさせたまえーーー!」


 上素斗が怒りの表情で団扇を扇ぎ続けながら叫んだ。ガァン! 周囲の壁がへこんで高取はさらに押さえつけられた。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 高取は気合いを入れると、なんとか右膝を曲げて足の裏を壁に押しつけた。さらに力を集中すると身体を光が覆った。


「ひ・・・・・・人を馬鹿にしたものはいつか・・・・・・しっぺ返しをくらうっ!!」


 グゥン、高取は押さえつけられていた上半身を前に倒し、右足で勢い良くバネのように壁を蹴った。同時に身体を覆う光が刃に集中した。


「何!?」


 上素斗が驚きの声を上げた。高取は両腕の刃を前に伸ばして構えると空気を切り裂く音と共に弾丸のように上素斗に突進した。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 断ちな!!」


 高取は両腕を真っ直ぐに伸ばして光る刃で上素斗の腹部を貫いた。


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 上素斗が叫び声を上げる。


「まだですよ! 断ちな! 断ちな! 断ちな! 断ちな! 断ちな! 断ちな!」


 高取は両腕の拳を連打した。何度も光る刃が上素斗に突き刺さり、残光と血が飛び散った。


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 上素斗の悲鳴に構わず、高取はさらに突き刺し続けた。既に上素斗の腹部は破壊されて血塗れになっている。


「死にな!」


 渾身の右拳と共に光る刃が繰り出されると上素斗の腹部はついに破裂した。上素斗の胸から上は引き千切られて中を舞いテーブルに激突した。


「うげぇっ」


 破壊されたテーブルの中で上素斗がくぐもった声を一回だけあげると血を吐き出して目を閉じた。高取は立ちつくしていた上素斗の下半身を蹴り倒した。


 奥に目をやると米山が震える銅田の襟を掴み、入口の方に引きずっているのが見えた。


「さて、決着が着いたようだな。バーカ」


「・・・・・・ひ・・・・・・助け・・・・・・て」


「駄目だ」


 米山が銅田を放り投げると高取の横に転がった。


「あがっ」


 高取は怯える銅田を見下ろした。米山、コールマンも近づいてきた。


「金ならやる! だから、私を助けてくれ!」


 銅田は泣きながら、土下座をして叫んだ。ゴキィン! 米山は光る右手を開き、掴む構えをとる。


「自分のことばかりだな、バーカ。お前らのせいで多くの信者が地獄を見た、今度はお前が地獄を見る番だ」


 そう言うと米山は光る右手を伸ばし、銅田の頭を掴んだ。


「ぎゃっ」


 掴まれた頭から骨が軋む音がする。


「ちっとは人のことを考えろよ! バァァァァカァッ!!」


 米山が叫んだ。バチュン! 銅田の頭が砕け、血と脳漿が当たりに飛び散った。


「終わったようね。四階を燃やすわよ」


 高取はコールマンに頷いた。





『・・・・・・この一〇〇種の成分を配合した健康サプリ、プラシボエーはライフウェーブ製薬から来月発売されるとのことです。続いてのニュースです。昨夜、昭島区の新興宗教団体、セイナール教会で火災がありました。この火災で教団の代表、銅田モチさん、その妻、銅田ミルコさん、上素斗ムウさん、下北チヤアチさんの四名の死亡が確認されました。このセイナール教会は・・・・・・』


 部屋の窓を通して、夏の光がまだ強く差し込んでいる中でヒトエはセイナール教会のテレビ報道を食い入るように見つめていた。昨日、矢迷値から依頼を完遂したという連絡があった、彼らは本当にやり遂げたのだ。


「終わった・・・・・・」


 ヒトエは言葉にできない思いを胸に押し込み、深く息をついた。長く握りしめていた手がゆるみ、膝に落ちる。汗と埃でべとつく皮膚に、ようやく少しだけ冷たい風が触れる。


 目の奥に、止まっていた何かが微かに動く。頬をつたう涙が、長い絶望の間に固まっていた感情をそっと押し流した。


 ヒトエは小さく息を吐き、肩の力を抜く。まだ夏の熱気は部屋に満ちているが、心のどこかにわずかな軽さが戻っていた。



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