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ハチオウジギア  作者: ティーマン
シーズン1 Part1
23/29

23 ハブ・ア・チャット・アット・鳥平民②

22~24まで続きます。





 高取は原付を走らせていた。夏が近づき蒸し暑い風が頬をかすめる。非番の日を利用してフシモリ本社のある北野に向かっていた。


 八王子区北野周辺はフシモリ本社を中心に様々な技術を集めた街作りが成されている。


 高取は信号待ちの間、フシモリ本社ビルを見上げた。フシモリの本社ビルは低層階が横に広く、その上に墓石のような高層階が建てられていた。本社ビルと工場を囲うような壁が覆っている。


 まるで要塞である、悔しいが後藤の言うようにここには多くの強力な超人や最新鋭の迎撃システムがあり、単独で突入してもリトルグレイに辿り着く前に無駄に死ぬだけというのは正しい。こんなに近くにあるのに手出しができないとは、高取はもどかしさを振り払って現実の光景に戻った。


 マホの話からリトルグレイは黒いフードを着て仕事をこなし、その姿のまま本社に戻っていると考えた。そこで高取はここを見張れば正体を見極められるという期待を抱いた。


 信号が変わり原付を走らせ、北野駅の有料駐車場に入ると原付を止めた。高取はまず、フシモリの本社周辺へと歩いていった。フシモリが仇だと知ってから何度か見に来ていたがいつ来ても人通りが多い。フシモリ関連のサラリーマンや外国人の姿も多く見かける。設置されている街頭モニターから声が聞こえたのでふと顔を向けた。


『皆さんこんにちは、株式会社フシモリの社長を務める鎖藤さとうコウナガです』


 モニターには額が後退していて、眼鏡をかけた五十すぎの男、鎖藤コウナガが映し出されている。高取はモニターを睨み付けた。


『我々、フシモリは知っての通り、死の年の大災害で不幸な目に遭われた方々を救う為、全力で技術革新を進めてきました。その結果として日本大災害でも復興に協力し、日本を始め、世界にも認めて頂けるまでの企業となることができました。ですが、我々はまだまだ、世界中の不幸な目に遭われている方々を救う為に未来に向けて走っていかなければなりません。このハチオウジ市でその為の準備を住民の皆様や取引先の皆様と力を合わせて進めていきます』


 にこやかな鎖藤の姿が映し出された。


「ちっ」


 高取は舌打ちをするとモニターから目を逸らして歩いていく。


 フシモリの各通用門には武装警備員が配置されていた。


「!?」


 高取が歩きながら道を隔てた通用門を見ていると門に向かってグレーのパーカーを着た男が走り寄ってきた。金髪で無精髭が生えた精気のない顔だ。パーカーの男が懐からオートマティックのハンドガンを取り出すのが見えた。


「うぉぉぉぉぉぉぉ!」


 パーカーの男は武装警備員に向けて走りながら狙いをつけて


パンパンパン! 乾いた音を響かせて撃った。その時、


ギュン! キィンキィンキィン! 


 武装警備員とパーカーの男の間に巨大な警備ドローンが通用門の奥から一瞬で駆けつけ、立ち塞がった。


『敵対行動確認シマシタト! 敵無力化モード開始シマスト!』


 警備ドローンが音声を出す。車のボンネットのような本体とその両サイドに腕のような機銃が装備され、逆間接二足歩行のこのドローンは「メタルヅメGP2」と呼ばれる。本体の真ん中にある2個のカメラアイがパーカーの男を凝視する。


『撃ツゾ! 撃ツゾ! 撃ツゾ! ット』


 ドォン! と鳴り、GP2の機銃からゴム弾がパーカーの男へ向けて発射された。


「うがぁぁぁぁぁ」


 パーカーの男はゴム弾を受けて地面に倒れた。武装警備員が駆け寄るとハンドガンを押収し、腕を手錠で拘束した。


「ぐうっ! お前らのせいで俺は会社を・・・・・・げぇ!?」


 パーカーの男が言い掛けるのを武装警備員が無慈悲に殴りつけた。


 GP2は周囲を見渡すと、


『近隣ノミナサン、オ騒ガセシ、申シ訳ゴザイマセン。危険ナ状況ハ改善サレマシタット』


 そう言い、再び通用門の中へと戻っていった。パーカーの男も武装警備員に通用門の中に引きずられていく。


 周囲のサラリーマンは何事もなかったように歩く中、高取はその光景を立ち止まって見ていた。パーカーの男は恐らくフシモリの企業買収で切り捨てられた人財なのだろう。高取は怒りで拳を握り締めた。


「前を向いたまま、聞いてくれ」


 高取は後ろから声を掛けられた。声の主は情報屋の五次安だ。高取は米山に紹介され何度か顔を合わせていた。


「何であなたがここに?」


 高取が前を見ながら尋ねた。


「それは俺の台詞。駅の近くにある仙一珈琲で話しをしよう」


 そう言うと五次安が先に歩いていった。高取は少しの間、その場に留まると駅へと足を向けた。



 仙一珈琲せんいちコーヒーの店内で高取は五次安と向かい合って座っている。


「リトルグレイか・・・・・・」


 五次安が呟く。


「ええ、うちの生徒が見たというのでもしかしたらと思いまして・・・・・・」


 そう言うと高取はコーヒーをブラックのまま飲んだ。


「そんなうまくいくわけないでしょう。後藤さん達に勝手に動くなと言われていただろうに・・・・・・」


「あなたこそ何故?」


「俺は一応、表向きはフリージャーナリストだから伝手を通じて取材でフシモリに行っていたんだよ。メタルヅメを本格的に海外展開する情報があってね」


 高取が何か言いかけるのを制して、五次安が話し始めた。


「奴らは海外、日本の政界、財界とどんどん食い込んでいる。すごいよ。別の業界だけどライフウェーブ製薬も同じように動いている。ハチオウジは素晴らしい企業を持っているな」


 高取は五次安を睨み付けた。


「何が素晴らしいんですか、人を踏みつけにして平気でいられる奴らですよ」


「その通り・・・・・・俺も同じように思っているよ。でも、そんな奴らがのさばっているのが現実だ。俺は奴らに踏みつけられていた者達が噛み付いて、奴らがビビる姿が見たいんだ」


「それが我々に協力する動機ですか?」


「そんなところだね」


「私はそんなことはどうでも良いんです・・・・・・リトルグレイに復讐ができれば」


 五次安がコーヒーに砂糖を入れてかき混ぜ、外を見ている。


「リトルグレイについては俺も知りたいんだ。大貫さんに言われて情報収集を手伝っていたから寝覚めが悪くてね・・・・・・。リトルグレイは基本的にフシモリに仇なす超人や人物の処刑に駆り出される存在だ。あなたの事件も恐らくはそこにいる者を処刑するために起こした行動だろう。あれだけのことを起こしたのは見せしめの意味合いも強い。誰を狙ったのかターゲットがわかれば糸口が掴めるかもしれないけど今の所は全然わからない」


 五次安が外を眺めながら言った。


「ターゲットですか・・・・・・」


 高取は呟くと苦悶の表情を浮かべながらも記憶が解れていく。


「そういえば・・・・・・あの時、リトルグレイが放った光は私たちの後ろの席に着弾した・・・・・・そこに座っていたのは・・・・・・筧という四人家族でした」


「筧・・・・・・俺が調査した所、被害者は際立った特徴はなかったけどもう一度見てみよう」


「お願いします」


 高取は頭を下げた。 


 



『全世界で原因不明の大災害発生!』


 服田ふくだダイスケは自室のPCで「死の年」と「日本大災害」に関する情報を収集していた。友人の兼田かねだヤスヒデから超人の数が増えてきたきっかけは死の年と日本大災害が契機になっているという噂を教えてもらい早速調べることにした。この二つの大きな災害は授業を通して知っているとはいえあまりにも謎が多すぎた。服田はネットから死の年に関連する記事を次々と拾っていく。


 一九九九年三月に南アメリカ大陸のベネズエラで大地の隆起現象が発生した。その隆起は数百万人の死者を出したながらボリビアを中心に同心円状にベネズエラ、アルゼンチンまで波及。この災害によって断裂した大地の中から、青色をした水晶状の石のようなものが発見される。これが後に「聖石せいせき」と呼ばれる未知のエネルギー体であり、この聖石がある場所が「留燃りゅうねん」と呼ばれるようになる。


 この南アメリカ大陸の隆起現象はさらに北アメリカまで波及し、米国も甚大な被害を受ける。さらには五月にはエジプトを中心にしてアフリカ大陸、ユーラシア大陸、オーストラリア大陸も同様の現象が発生し、被害が拡大。一方で日本列島については南九州の一部で同様の現象が起きるに留まり、本州と北海道は無傷のままであった。この未曾有の大災害は最終的に九千万人以上の死者を出し、政治機能のマヒ、インフラの断絶、貧困の拡大、難民、治安の悪化等、全世界に大きな爪痕を残した。この災害について巨大地震や様々な説が浮上するがどれも現象について説明ができず今もって原因不明となっている。


「ここまではだいたい知られたことだけど・・・・・・」


 服田はそう呟くとさらに情報を検索して読み進んだ。この後、各国ではオカルト系雑誌やサイトだけではなく、一般の新聞やニュース番組でも超能力や心霊といった超常現象の目撃談が過去に類を見ない報じら、大きな話題となった。


『あの災害の後、倒壊した自宅の中から亡くなった娘を探す為に瓦礫をどける作業をしていたのですが・・・・・・重機もなく、皆自分のことに必死で協力してくれる者もいないので、あの時は悲観にくれていました。そして、悲しみに任せて瓦礫を蹴りつけた。そうしたら瓦礫が木端微塵に砕け散ったんです。気づいたんです、いつの間にか自分の全身を光の膜に覆われているのに』


『突然、彼の後ろに黒い人の形をした影のようなものが見えて・・・・・・その影が彼の口の中に入ったんです!』


『彼の手を光が覆って、その後、彼の手がハサミのような形に変化したんです、ええ、鉄のような質感でした。それで私に斬りかかってきて・・・・・・』


 これらの現象は大災害による精神的なトラウマ、集団ヒステリーによるものと片づけられて急激に鎮静化した。兼田によればこれは真実を葬る陰謀ということらしい、ついこの前までであれば与太話と笑って済ませていたが今では兼田の言うことの方が筋が通っているように思える。


 死の年から十六年後、日本の八王子を中心に同心円状に北は北海道、南は九州まで大地の隆起現象が発生する。死の年を経て、技術の発展、聖石の試験運用等により、防災対策はとられていたもののそれでも八十万人以上の死者を出して日本もまた大きな被害を受ける。そして、死の年と同じようにオカルト系雑誌やサイトだけではなく、一般の新聞やニュース番組でも超能力や心霊といった超常現象の目撃談が過去に類を見ない報じら、大きな話題となり、沈静化された。


「同じ出来事・・・・・・たしかに、大災害による精神的な傷と考えることができるけど、確実にハチオウジで超人が跋扈している」


 この二つの大災害は相似形を成しているのは確かだ。大災害により超人が覚醒している、でもなぜなのか? 服田は眠気を堪えながらもPCで情報収集を続けた。



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