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エピローグ 愛莉の憂鬱1



(デモンさんは正真正銘の魔法使いだ。)



比喩ではなく本当にその事を知ってしまった。



見たのだ。

店の隅でグラスに向かって火花を出しているところを。



しかし、この衝撃と興奮を誰に伝えればいいんだろう。



こんな事信じようか。



そんな現場を見た後、愛莉は平然を装って店を後にした。





『お久しぶりです(^^)

来月の定休日店のみんなで花見しようと思うけど木下さんも来ない?』



メイドカフェの職場を退勤し、アパートに戻る途中、ラインを開いたら意外な人からメッセージが来ていて愛莉は驚いた。



送り主はリストランテ魔窟の店長からだ。



お世話になったクリスマス以来、たまにお店にお邪魔する事もあるが魔窟は彼女が以前お世話になった頃より少しは繁盛している。



あまり店長やデモンさんとも話なせる頻度が少なくなった気がしたのは寂しいと愛莉は思っていたが、三月中旬過ぎに魔窟に行った際に二人にはホワイトデーと称してデザートとお酒をご馳走になったのだ。



基本、勤務先のメイドカフェはホワイトデーのイベントの為出勤だ。



お返しが貰えるなんて思ってもいなかったから(とくにデモンさんには!)とにかくその時、愛莉は舞い上がってしまった。



しかし、その後見てしまったのだ。 



後ろ姿しか見えなかったが、人気がないカウンターで火花を出すいつものバーテン(デモン)を!




愛莉は回想を一旦中断し、スケジュールを見て休みと確認すると

『行きます( ^ω^ )』

と返信を送る。



店長からは

『よかった!当日はなにか一人一個なにか食い物持ちより参加をお願いしてます。作るも買うもよしです笑』

と返って来た。



成る程。

それは実に楽しそうである。



『店長の手作りご飯楽しみにしてます(^∇^)』

と返信すると



『Σ( ̄。 ̄ノ)ノ』

と、なぜ俺は手作り前提なんだと言いたげなスタンプが送られて来た。



それに笑ってると続けざまにまた店長から

『あ、あとお店のお客さん、というか一緒に仕事してる人にも声かけてるからその人も来ます』

と返信が来てさっきまでのワクワクした気持ちが消え緊張して来た。



『どんな方ですか?』

気になって店長に聞くと

『木下さんより少し年上の女性だよ。

お店のクッキーとか作ってもらってます(^^)』

と言われ驚く。



「そうだったんだ」



ほんの数カ月前、数日だけ働いただったが

その頃よりも、魔窟は変わっていっているらしい。



『分かりました。当日楽しみにしてます』

と打つのが精一杯だった。



(その女性はデモンさんに会った事はあるのだろうか。


一緒に仕事をしているってどこまで一緒なのだろうか。


どこまでデモンさんの事を知っているのだろうか)



なんだか急に頭にいろんな情報が入って来たからかまとまらない。



「とりあえず何もっていくか決めよ」

そう決めて愛莉は家路に着いた。



そして、花見の当日はやって来た。




「初めまして。美島 華といいます」

朗らかに笑う可愛らしい女性は、挨拶をすると名刺を出して来た。



「初めまして。木下 愛莉です」

と挨拶を返すと美島さんはとなりにいた店長に「すごくかわいらしいですね!どこで知り合ったんですか?」と興奮して聞いている。



すると

「前にお店手伝ってもらったんだよね」

と言って来たので

「そうなんです」と答える。


「美島さんはクッキー職人さんなんですね」

と話題を振ると

「職人っていうかただの趣味がこうじて店長達が拾ってくれたの」



(なにそれ。すっごい恰好いい!)



「じゃあ、お菓子は魔窟で作って?」

「ううん。クッキーは家で作って注文が入った分だけ送らせてもらってるの」

と美島さんから聞くと、何故だか今まであったもやもやが少し晴れた気がした。



(美島さんとデモンさんはいつも一緒に働いてるという訳じゃないんだ)



そう密かに安心した矢先

「あ、でも試食はたまにしてもらいに行ってるかな。新作とか」

と彼女の口からそれを聞くとまた心のモヤが発生した気がした。



話し込んでいると、横からしばらく聞かなかった声が聞こえた。



「おい、腹減った」

魔窟のウエイター、兼バーテンで好きな人だ。



「私も朝食減らして来たから早く何か食べたいです」

とサガンさんも横からブーイングを起こす。



サガンさんには何度か会っており、デモンさんとは対照的な美系だ。


まあ、デモンさんはイケメンかって言われたら謎だが。気になっている欲目だ。



(私の中ではイケメンだ)



人間ではないのだろうけど・・・ 。

なんだか妙にソワソワしてしまう。



「はいはい。お前ら皿は渡ったか」

店長は二人を宥めて、料理を取り分ける。



そして「そういえば二人は何持って来たの?」と聞いて来た。



「私はクッキーを」

と美島さんが答えハッとする。



愛莉もクッキーを持ってきていたのだ。



(どうしよう。被ってしまった)



「もしや新作?」と店長は楽しそうに美島さんと話している。



(気まづい。プロの作った物を前に素人の手作りなんて出せるわけない)



料理はお皿に渡ったが、店長が作ってくれた唐揚げも、サガンさんが作ってくれた塩むすびもなかなか喉を通らない。



「はぁ」



みんなにはなんと言おうか

そう考えていると横から

「食わないなら貰うぞ」



と横から箸がニュッと伸び、皿の上にある唐揚げをデモンさんが奪う。



「なんだ。体調悪いのか?」



彼の普段表情が分かりにくい顔が、少し困った顔をし覗き込まれて、食べかけた塩結びが喉に少し詰まってしまった。



咳をすると彼はさらに心配し

「大丈夫か?」

と言いながら背中をさすろうとしてくれた。



しかし

「大丈夫!」と言い切ると耐え切れなくなった自分は自分の持って来たクッキーの入った紙袋を持つとその場を離れた。



「おい!」

と彼から呼び止められた気がするが、それを聞いている余裕はなかった。

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