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エピローグ 愛莉の憂鬱2

何か時間を潰せるところはないだろうか。



少し歩いたが今は花見シーズンだ。

この公園にはかなりの人がいてベンチも埋まっていて多分トイレも今人が多いだろう。



「困った」



落ち着かなくて、その場を離れたものの意味はあまりないようだ。



お腹も空いて来た。



しかし屋台も人が多そうだ。



決めた!自分で作ったものは自分で食べてしまおう。



美島さんと被ってしまったなら仕方ないのである。



みんなには落として駄目にしたと言っておこう。



丁度公園の端に座れそうな木がある場所があったのでハンカチを引いて腰を下ろす。



ついていい嘘もあるのだ。



(私がママにしていたように・・・ 。

ママのお利口なお人形だった私は嘘をつく事には慣れている)



そうして袋から出したクッキーを食べる。

「うん。なかなか」

味は桜の塩漬けをクッキーに入れてるので、塩辛さがアクセントになってサクサク食が進む。



しかし、それも半分まで食べると飽きてしまった。



もういっその事、体調不良を理由に帰ってしまおうか。



そんな弱気になっていると

「腹は大丈夫なのか?」と何故か目の前にデモンさんがいた。



お腹が痛くなってきちゃってと言おうとしたが、今手に食べかけのクッキーの入った袋を持っている状況だから、その言い訳は使えなくなってしまった。



持ってるクッキーに気づいた彼は

「それ、美味そうじゃん」と声を掛けてきた。



「貰っていいか?」と聞かれて驚く。



「美島さんの方が美味しいですよ」

と言うと

「さっき食ってきた。お前が遅いからアイツらに言われて探してたんだ」


「ごめんなさい」と謝る。

「腹は大丈夫なんだな」と聞かれ「はい」と答える。



「そうか。じゃ、これ貰うから」

と断るとデモンさんは自分の手からクッキーの入った袋を取り、ボリボリ食べ始める。



「塩っぱいな」

と言われたので

「桜の塩漬け、入ってるから」



そうかと返事をすると、彼は頷いてまだボリボリ食べる。



「旨」

と一通り食べたデモンに言われると、ちょっとは作ってよかったかもとやっと思えた。



しかし、彼は手についたクッキーの粉を舐めた後

「あ、やべ。食い過ぎた」

と残り少しになった袋の中身を見て少し動揺していた。



「全部食べていいですよ」

どうせだからその方がこっちも助かるのだ。



「アイツらと食うために作って来たんだろ」

と言われ、もう言い訳できないと観念した自分は正直に白状する事にした。



「美島さんと被っちゃったからみんなの前に出せません」

と言うと彼は

「なんじゃそりゃ」

とため息を吐いた。



(今、デモンさんは100%私の事『コイツ、面倒くせー』という顔をしている!

そりゃあデモンさんにとっては大した事ないかもしれないけど私にとっては空気読めない真似はしたくない!)



そう身構えてると彼は

「アイツ(美島)のはクッキーだけど、もっとスイーツ系だったぞ」

と言われ不覚にも

「え、そうなの?」

と動揺してしまった。



「いや、マジで。美味かったし」

甘かったけどな

と彼は付け足す。



「なんだ・・・ 」

てっきり美島さんも桜の塩漬け味のクッキーを持って来たかと勘違いしてしまってたのだ。



「食いたかったのか?サガンが全部食べてなきゃまだ残ってると思うけど」


「え、そうなの?」

早く戻らなきゃいけない。



「それはそうと、もっと怒られると思った」

「言いたくない事は別に言わなくてもいいだろ。

ほら、言うだろ?『言葉は親切で、塩味のきいたものにしろ』って。答え方もそれぞれでいいらしいし」



意味が分からない。



「まあ、嘘は方便って事だ」

「最初からそう言って下さい」



(まったく・・・ )



彼はたまに本当に意味の分からない教訓めいた事をたまに言う。



理解不能だ。



(まあ、彼なりの励ましと受け取っているので私としてはいいのだ)



そんな事を思ったら、店長から美島さんの話を聞いた時から、今までの事のモヤが今度こそ晴れた気がした。



「まあ、いっか。デモンさんは変な事言う宇宙人、いや魔法使いですもんねー」

と吐き捨てると急に彼はギクッとした表情になった。



「お前!まさか何か見たのか?」



「見ましたよ。デモンさんがキッチンでなんか火を出してるとこ。後からしか見てないけど」

と言うと彼は狼狽える。



(そんなに動揺するなんて!

やはり正体を突き止めたので動揺しているの!?)



「お前、それはな」

「はい?」

ごくっと生つばを飲む。



(誰にも言うな。俺は宇宙人、いや魔法使いだ

だろうか?)



そう構えていると彼は驚きの一言を放った。



「花火だ」


「は?」

今度は自分が固まる。



「だから花火。ほらサプライズ用のカクテルに付ける奴を練習で作ってたんだ」

分かったかっ!

と吐き捨てると彼はさっさとみんなのいる方に戻って行くとこだった。



「・・・何それ〜〜〜!」

(完全に私、イタイ奴じゃん)



絶句してその場に呆然と立っていると自分はなんだか別の意味で戻りにくくなってしまった。



ブー、ブー



気がつくとスマホに着信が来ていた。



「はい?」

と出てみると店長が心配そうに

「木下さん、大丈夫?」

と心配して連絡をくれたみたいだった。



「すぐ戻ります」

そう伝えると、ずっと先を歩いているデモンさんを追って魔窟のメンバーと合流した。



そこには

「お腹やっと膨れました〜」と

満腹になってご機嫌なサガンと

「なんかドリンクない?」

と飲み物をご所望な店長達がいた。



「酒でいいならあるぞ」

とデモンがみなに声を掛けると

意外にも美島さんが一番乗り気で

「え?それってビールですか?」

とソワソワしていた。



「ビールはすまん。そんなに持って来てない」

と珍しく市販で売られているビールを一缶、デモンさんが美島さんに配ると彼女は「やったー」とすぐに蓋を開けぐびっと一口飲み「旨〜!」と上機嫌になる。



あんな控えめで朗らかな人が酒豪?

と唖然としてると

「お前らはこっち」

と苺のリキュールとソーダを持って来たらしいデモンさんが紙コップを配る。



「混ぜて飲めよ」とマドラーと一緒に渡される。



「今日はシェイカー振らないんですね」

と言うと

「今日は持ってきてないし待たせるからな」

と言われこういった形式で呑むのも悪くないなと思う。



今までモヤモヤして景色を楽しめなかったけれど周りの木々は満開の桜でとても美しい。



「綺麗・・・ 」

と言うとデモンさんも何を思ってるのか分からないが桜を見ているらしい。



ふいに思いついて、彼に聞いてみた。

「私の誕生日も花火付きのカクテルにして下さいよ」

と言うと彼はまたいつものバツの悪い顔になり「却下」と即断った。



「いいじゃん!」

とやっきになって攻めようとする。



「ハイハイ。酔うの早過ぎじゃね?」

とあしらわれるとイラッとする。



本気でお願いしているのだ。



全く、なんでこんな人を好きになってしまったのか。



(ママに今の私はまだ見せられない。



好きな人だってこの人でいいか分からない)



でもー



「デモンさん、もう一杯!」



感傷に浸っていると、間にズイっと美島さんが入って来て、デモンさんにビールのおかわりを要求して来た。



「もうねえよ」

と面倒くさそうに彼が答えると美島さんは「嘘!?まだ1缶しか飲んでないじゃん。おかわり〜!」

と諦めきれないのか意地悪なバーテンを追い詰める。



「うるせえ、酔っ払い!お前も飲み過ぎるんだからあえてそんだけにさせてんだ」

いい加減にしろ!と彼と彼女のやりとりを見てると、まるで大型犬がチワワやマルチーズとキャンキャンやり合ってるように見えた。



それをつまみにしたのだろうか?

店長とサガンさんはバカ笑いしながら酒を飲んでいる。




(ああ、もしかして私は今日みんなを介抱しなきゃいけないのだろうか)



今の自分には不安しかない。



(全く、この店の人達は変わり者すぎる!)



今朝とは別の不安が頭をよぎる。



そして、また景色に目をやる。



満開の桜は何も知らない様子で、風に吹かれ綺麗に揺れているのであった。


【完】

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