4-6話 ウエイター デモンの過去話6
長い間手放していた感覚に違和感を覚えた。
(寒!!)
目覚めるとそこは見たことない景色だった。
どこなんだ、ここは!!?
見た事がない街や露店が広がっていた。
「大丈夫ですかー!?」
知らない人間が、目の前で手をひらひら振っていた。
「・・・ ああ」
そう言うのが精一杯だった。
(なんなんだ、ここは!?)
自分を囲む見慣れない格好をした種族は
「救急車呼びましょうか?」
と聞いて来るがきゅーきゅーしゃが何か分からない。
とにかくこの場を離れなければ!
そう思い立ち上がり移動したが何だか知らない種族からの視線が気になり落ち着かない。
「あの人ボロボロじゃね?あ、やばこっち見た」
だのそういう声が聞こえ魔界にいた頃とは違った視線を浴び無性にむしゃくしゃした。
しばらくどこに続くかわからないが露天を歩くと誰かの声が声をかけてくる。
「お兄さん、今暇ですか〜?」
黒服を着た男が馴れ馴れしく話しかけてくる。
「もしかしてお困りならうち寮とかありますよ」
と話しかけられてりょうが何なのか分からないが助けてもらえるらしい。
平民の世話になるのは体裁が悪いがここは魔界ではないらしい。
デモンが話を聞く気になったのか黒服の男は店の待遇について話していたが意味が分からなかった。
代わりにぐう〜という間抜けな音がした。
「腹減ってるならうちの店で食っていきなよ」
「いいのか?」
「ああ、お兄さんお金困ってんならうちで仕事してもらう事になるけど皿洗いとかできそう?」
「勿論だ」
魔力で一瞬だろう。
しかしガシャン!!
と皿を何枚も割る羽目になった。
魔力が使えないだと!?
そういえば父上が魔力を預かったと言っていた。
黒服の男はキッチンの担当になんとかしてと言われに苦い顔をしていた。
仕事が終わりその日は店に泊まり昼になり店の者が来て寮の鍵渡し去って行った。
住所が書かれた契約書を見せられたがなにせ場所が分からなく魔力が使えない。
店の者は呆れていたが結局部屋まで同行しなんとか入居するかたちになった。
この世界の建物は土地が狭いのか建物も狭く古い。
金の装飾はないし木造だし魔界とは何もかもが違う。
しかしこの身体になってから腹は空くし自分が弱くなった気がした。
どうしたら魔界に帰れるのか
それを考えてるとすぐ出勤の時間になった。
「いや〜、出門くんの作る酒旨!」
皿洗いに苦戦していて酒を作って欲しいと言われやってみると好評だった。
こうしてデモンのキッチン担当はカクテル担当になった。
こうして数日は慣れないながらも平和に暮らす事ができた。
しかし、出る釘は打たれるのが世の中だ。それを協調性がないと口には出さないが態度で出すものもいた。
終いには鍵を渡した者に鍵を返すよう言われ抵抗したが相手に力ずくで鍵を渡さまいと必死に抵抗した。
その時、バチッと音と閃光が出て相手は驚いていた。
「静電気、ヤバ!」と何か言っていたが結局鍵は回収されまた魔界から来た時と同じ身一つになった。
そこで初めて野宿というものもしたし、腹が空きすぎて盗みも考えた。
自分は悪魔であって魔物ではない。
王位継承にはいかなかったが一応は王子。
しかし耐えがたい空腹で意識が朦朧とする。
「飯」
いつの間にか大通りから外れた錆びれた店の前まで
来てしまった。
ここは閉まっている店だ。
見ると朝九時から開くそうだ。
時計も時間感覚も金がない。
しばらく休みたい。
そう思い壁を背に座り込む。
幾分から経ちガラッと扉が開き女性の定員が暖簾をかけに来た。
「あら、おはようございます。今から開店ですので」
定員はそう声を掛けたがデモンは食欲と睡魔の限界で入り口で行き倒れてしまった。
「お客様!?」
定員からの呼びかけに答えられぬまま意識はまた遠のく。
(悔しい。悲しい。惨めだ)
今まで不自由した事がなかったのだ。
(何もかも夢であれ、魔界も人間界もどーでもいい。
ただ静かに暮らしたい。
自由に、気ままに、王位や民衆なんて気にかけず自由になりたいー)
何度目か意識を手放した傍らデモンはそう感じていた。
「あ、起きた」
目覚めると金髪の男が顔を覗き混んでた。
「・・・ 誰だ?」
開口一番についた質問に
「いや、お前がだし!」とツッコミが入る。
「ああ、親父に言いにいかな」
っと階段を使って下に降りようとする。
「待て、ここはお前の家か?」
金髪は言葉遣いや態度が気に入らないからか
「そーでーす」と棒で返事をすると下に降りていきしばらくすると戻ってきた。
「もう、起きれるなら起きて」
そういうと起き上がるがぐうと腹がなる。
「帰るなら下で飯食ってったら親父たち喜ぶんで」
あ、呑んだりはすんなよ。また、倒れっからな
と言って金髪は部屋を出て行こうとする。
「金がない」
そう白状すると金髪は落胆し
「マジでぇ〜?」
と肩を落とした。
「じゃあ、お前はいいとこの坊ちゃんでフラれて貫道されてホストクラブかなんかで働いてたけどクビになって今って事か」
金髪は慣れた手つきでフライパンで炒めた具材に電子レンジから出したパスタを慣れた手つきで作る。
金がないなら下でタダ食いをする訳にはいかない。
わざわざ作ってもらう事になった。
ホストクラブの賄いもパスタだったしこの見慣れない機械を使っていた。
「すごいな。こんなもので調理ができるんだもんな」
そう呟くと
「いや、電子レンジくらいあっただろ」と言われたがピンとこなかったので
「親は電子レンジ使わない派なんか?」と嫌味か何なの分からないがおちょくられた感はある。
「べつに賛否両論あるけど時短になるし俺はいいと思うけどね」
そう言うと美味しそうなパスタが完成した。
バター醤油ときのこの和風パスタだ。
これはデモンにとって初めての香りや味で今まで食べていたパスタのどれよりも旨さを感じる一皿だった。
「旨い・・・ 」
そう言ってパスタを無我夢中で食べる。
「そんなガッツかれても二人分しかないぞ」
と言われサラダもご馳走になった。
「本当に旨かった」
礼を言うと
「当たり前じゃん。これでも先月まで料理人してたんだし」
と言うと
「今は何してるんだ?」
と聞くと
「まあ、訳あって準備中だ」
そうキッパリ言い切られたので
「お前も無職というやつか?」と聞くと
「お前に言われなかねー」
とまたツッコまれた。
「ここ、リフォームして親父たちとは別の店として夜は俺がここの店長するの」
凄いだろー!
金髪はケタケタ笑う。
「まあ、まだ今はリフォームどうすっか決めるのに親父たちと打ち合わせ中なんだけどねー。メニュー決めたり楽しいんだけど意外と大変」
とどこか充実感で笑うその顔はデモンには眩しく思えた。
「そうだ。何か作ってよ」
ふと金髪に言われ
店で働けという事か?と思った。
しかし
「話聞いてたら呑みたくなってきた」とホストクラブでの酒を作ってたエピソードに彼は喰いついてきたらしい。
「まあ、礼だと思って」
しかし
「材料がない」
と言うと
「しまった。閉まるまで待つか」
と言われ暫く自由に過ごしていると十五時を過ぎ店が閉まってから金髪は下に降りていく。
定食屋だからあるのはビールと僅かな種類の酒とリキュールは全然ない。道具もない。
しかしと一応カクテルに手を出してみようと思ったが料理人を優先し余らせた道具を見つけ出した金髪が
「たしかレモンなら」
っと買いすぎて余ったレモンをベースに何か作れないかと考える。
炭酸はある。
あとは
「なあ、あれはないか?」
と金髪に聞いた。
「レモンサワーだ」
「・・・ 俺でも作れそう」
まあ、飲んでみろと言うと
「おお!いつもとなんか味違う」
金髪に聞いて持って来てもらったローズマリーを入れたのだ。
「次、レッドサン」
日本酒とトマトジュースのカクテルだ。
「おお、トマトのヤツとか初めて飲んだわ」
と言われ評価は上がったようだ。
「しかし、材料がない」
と即席カクテル屋を閉店すると
「だよなー、俺の店でも酒の種類もっと増やしたい訳よ。あ、そうだお前うちで働かね?」
そう言われたまんざらでもないような、しかしホストをクビになった為猜疑心が残っていた。
「すぐクビにする気だろう?」
すると意外な答えが返ってきた。
「ないない、俺しかいないのに。
人出不足になるって。まあ、給与は最低賃金だけど
家ないなら空き部屋使えばいんじゃね?」
と言我耳を疑う。
「お前馬鹿か。俺がこの店の有り金盗んで逃げるとか考えるだろう?」
「まあ、したら通報すっけど。軌道に乗るまでいてくれよ!人出ほしいんだってー!」
といい歳こいた大人が地団駄を踏む。
「二言はないな」と言うと
「あ、ウエイターもやって」
と言われ
「給与上げろ」と交渉しかけが
「宿代も含める代わり安くしてんだ」と言われ給与交渉はできず終いだった。
それから荒城の店長達に向かい入れられデモンは魔窟の一員になった。
最初は金髪の提案に両親共々呆れていたがデモンが酒を振る舞い受け入れてもらった。
それから開店の準備が迫り遂にその前日を迎えた。
そしてデモンは開店祝いと称され金髪・・・ から茶髪になった新たな店の店長に酒を作らされていた。
「キューバリブレ」
と作った酒を出す。
「甘〜」
と今日は飲むぞーと意気込む茶髪は配達してもらったピザと一緒に酒を飲む。
「コーラやラムが入ってるからな」
と説明するが
「まあ、呑めりゃなんでもいいのよ」
と折角カクテル言葉を考えながら作ったのにと意外と軽く傷つくデモンがいた。
「いいの、いいの。明日から忙しくなるんだし」
と開店と同時に繁盛すると妄想してる茶髪に
「来るといいな。客」と棒で言うと
「あのなあ」と繁盛するに決まってんだろといいたげに「お前こそ明日に備えてちゃんとしろよ。特に接客!キレやすいんなら問題起こされちゃ困る訳。
どうするよ。呑んでる客が絡んできたら」
「酔いつぶす」
とシェイカーを降るそぶりを見せ言うと茶髪はウケたのかガハハと笑った。
「やはり、それで貫道されたかな」
デモンは意外にも茶髪の言葉が気になりついめったに吐かない弱音を零すと
「んー。まあそれはどうか分かんねーけどお前は他人に振り回されすぎなんだよ」
と言われたが何の事か分からない。
そんな顔をしていると
「ダチの代わりにカタをつけるとかダチはそんな事頼んでないだろ」
と茶髪が言う。
しかしそれは友人=民を想ってだ。
「まんまと寝首かかれたしな」
と茶髪が言ったので反論しようとする。
「だからとーちゃんも自分の事だけ考えろって意味で一旦貫道したんじゃね?」
父上が?
そうなのだろうか?
そう疑問に思うと幼少期の記憶が蘇ってきた。
まだ人間でいう五、六歳の頃。
魔王は人間界をデモンを抱きながら見下ろし戦争をする人間達を見ていた。
「デモン。人間をどう思う?」
と聞かれ
「弱くて愚かだと思います」
そう言うと
「そうだな。しかし奴らは弱くて愚かだけな生き物じゃないんだ」と言って自分の怒りを糧に今までにないものを発明したりする者達をたまに見るとデモンに話した。
「怒りは威厳であり強さである。だから使い方は様々だ。我々も見習わなきゃな」ワハハと笑う魔王だったがデモンは人間ごときに父上は何を言っているんだと思ったが。
「おかわり!」
そんな沈黙を茶髪が壊す。
「お前、もうすでに呑んでるだろ」とテーブルに並ぶ空のグラスを見せると
「俺こんな呑んだか!?」と驚かれた。
「さあ、閉店閉店」
そう言ってデモンもピザを食べる。
しかし魔王は魔力を全部取ったと言っていたがそれは間違いだったようだ。魔界にいた頃よりは0に近いが『全く』ではないらしい。
ホストをクビになった際『静電気』の件で薄々気づいていたが・・・ 。
使える物は使わなくては
「ククッ」
と笑うと
「きめえ」とゲラゲラ茶髪が笑う。
さて。明日からここはどんな店になるんだろう。
そんな事を思いながらデモン達はまだ見ぬ『お客様』に想いを馳せた。




