3-3話 店内で喧嘩はご遠慮ください。
料理を待っている間、お互いに食べ終わったらどうしようかと話しやっぱり駅ビルも見たいという話になった。
お互いまだ今日の収穫は0だ。
「駅なら仕事の服安く買えるね」
となずなは喜んでいる。
「なんだかんだで最終的にはそこだよね」
はじめから駅で選べばいいのだがより個性の強い一品を見つける為休みが合うと理想が高い者同士だからなずなとの買い物は楽しい。
こうしているから物が増える一方なのだ。
広い部屋に住んでるとはいえ趣味は買い物。
でもなかなか捨てれない。
そんな自分の部屋のほとんどは雑貨や服が点在している。
それを見かねてかなずなは
「また、物増えてない?」
と質問してくる。
「うん。増えた」
ど白状すると彼女は呆れ半分という顔だ。
「また、せりの家行くから」
「いいの?先月も来たじゃん」
流石に今回はスパン短くないか。
「いいの、いいの。こっちもタダで来るんじゃないんですから」
と彼女はニマ〜っと笑う。
確かにタダじゃない。
家に来ては断捨離や家事をやりに来てくれる変わりなずなが引き取って物を売ってそれを手間賃という事にして渡しているのだ。
彼女曰くこれがなかなかいいお小遣い稼ぎという訳だ。
ちなみにそれを同じく物が多い後輩に話すと「もったいない。先輩ただでさえ高い物買ってるのに自分で売ればいいじゃないですか」と引かれた。
そうかもしれないがなずなには断捨離以外にもしてもらっている。こちらも助かりwin winなのだ。
(私よりもなずなの方が決断力あるし)
なんなら片付け、掃除ついでに作り置きも作ってもらって頭が上がらないのだ。
「はあ、本当私が男だったら結婚したいわ」と何気なく口にするとからかうなとケラケラ笑ったがふと意味深に「まあ、結婚はねえ?」と含みがある返し方をされた。
気になった私は「え、なんかあった?」と聞き返す彼女には数年付き合っている彼氏がいる。
もしかして別れたのだろうか。
すると彼女は小さな声で「うん、するかも。結婚・・・」と返してきたから驚いた。
彼女の相手なら知っている。神田さんだ。
「マジで!?」
なずなのあまりにも急な婚約宣言にここが店内だという事も忘れ声が出た。
そのせいで一瞬周りはしーんと静まったので私は小声で「すみません」と定員を見て謝る。
「え、なずな結婚するの?」
ついこの間まで彼女と恋バナした時に共感し合ったのは彼氏の家事のリクエストに応えるのはマジで無理という事だ。
家事はもっぱらダメな自分なので家事はするよりしてもらいたい派だ。
結婚したい焦りはあるのに余計な理想があり一向にできる気がしない。
私はともかく
「なずなは家事上手いじゃん。こないだのやつ(作り置き)も美味かったよ」
と言うと
「うーんと、料理を作るのが好きな人は自分で何を作るのを考えるのも好きであってそこに注文つけられるのは大っ嫌いなの。分かるかなあ?」と返されたが料理をしない自分にはピンとこない。
分かってない様子になずなは
「例えばせりの理想のインテリアで集めた部屋に彼氏がここもっとこうしたらなんて言われたらムカつくでしょ?」
「うん。ムカつく」
やっとなずなの気持ちが少し理解できた気がしたが
ますます結婚できる気がしなくなったガールズトークだった。
「でね」
カランとお冷のグラスを置いたなずなに意識が戻ると彼女は
「結婚はするけどさ、そうしたら店続けたいけど職場遠くなるしさ。続けたいけど迷ってて。
せりはバイヤーとかリモートでできるの?」
と何故か話題を彼女の結婚ではなく仕事に向けられて戸惑う。
「どうなんだろ。買い付けしてても会議はあるし、
事情があればリモートにしてくれるかもだけど」
実際今の私はそんな感じだ。
「そっかあ、いいなあ。・・・あのね、相談したい事があって今度店長に仕入れ手伝って欲しいって言われて取引先に搬入する商品選んで欲しいって言われたんだけどコツとかあるのかな?」
とアドバイスを求められる。
せりなら買い付けとかしてるから詳しいでしょ?
と期待されていつもだったら悪い気がしないのにどうしてだろう。
自分は
「直感」
と曖昧な回答しか言えなかった。
声のトーンが下がっていただろうか。
なずなは少し驚いていたが「そっか。直感かあ」とケラケラ笑い今度はいくつかグリーンが映ったスマホのスクショを見せてくる。
それと同時にイケメンのウエイターが「レディースセット二つお待たせしました」とメニューを運んで来た。
「うわ、美味しそう!」
となずなはさっきの話など忘れ食事に夢中になる。
確かに、レディースセットの唐揚げはどぎつい物を想像していたが丁度いい大きさで食べやすい。
「美味しい」
料理がしばし胸のモヤモヤを癒す薬になる。
しかし、大間食のなずなはメインの唐揚げとライスをもう食べたのかさっきの話の続きをしたいのかまた話を続ける。
「でね、さっきの話の続きなんだけどね。社内に置くグリーンを選んで欲しいって事で最終判断は店長にしてもらうけどせりにも見て欲しくって」とスマホをスクロールして候補を見せられたが私はグリーンに関しては素人だし枯らす専門だ。
仕事がら商品を選ぶ立場ではあるが受け持つジャンルが違う。
まあプレゼントサイトだから植物の買い付けもあるがその点は先輩にお願いして私は無関係なのだ。
相談する相手を間違えている。
「ごめん。先輩なら分かるかもしれないけど私は専門外」
そう断るとなずなはちぇーっと残念そうに残りの味噌汁を啜る。
そして何を思ったのか「分かった。今度せりん家来る時にグリーン私が買って持って来ますかね」と一肌脱いでやると言い出した。
「いや、枯らすって」
私の怠惰な性格を知ってるでしょ?と抗議したが彼女にそんな訴えは聞かなかったのか
「だーかーら日陰で手入れ楽なヤツを選んで来るって言ってんじゃん!花とか植物とか置くと自然と断捨離出来たって人多いよ。
あ〜、でもせりには無理かな〜?」
といつもの私の散らかしっぷりを知ってるからかなずなの態度は好戦的だ。
言葉の文だ。
せりに私みたいに「恋人」や「結婚」が無理なんてなずなは一言も言っていない。
でも
「止めてよ、頼んでないし!」
気がつくとまた思った以上に自分の大きい声が店内に響いた。
周りは一瞬シンとなって周りに二度目のお辞儀をするとまた店内は誰かの話し声で和やかになったが私達は違った。
「なんかごめんね。せりん家行くの迷惑だったかな」
(違う!)
と否定したいが動揺している彼女に掛ける言葉が見つからない。
(私、片付け下手だしと言っても余計誤解されるだけだし謝っても何がと聞かれても上手く答えれる自信がない)
「今日は解散しよっか。ごめん、私の分ここに置いておくから払ってて」
バイバイ
そういうと彼女は店を出て行ってしまった。
自分はというと唐揚げを少しとライスを少し食べ後は全部残してしまった。
(最悪。喧嘩なんてした事ないのに)
自分がこんなにも嫉妬深いなんて思わなかった。
美味しかったけどもう入らない。
仕方なく会計を済まそうとするとイケメンのウエイターがレジに入ろうとしたがなにやら戸惑っているようだ。
チラチラ見られたのでレジトラブルかと思ったが彼から掛けられた言葉は意外だった。
「あの、ご体調は大丈夫ですか?」と聞かれたので最初自分に言った言葉なのか分からなくポカンとしていると「随分残っていましたので」と言われ自分が結構食べ残してた事を指摘されて申し訳ない気持ちになった。
そんなに酷い顔をしていただろうか。
「あ、すみません。体調は大丈夫なんですけど」
(友達と喧嘩して食べる気がなんて言えない)
「そうですか。お顔が青かったので」と言われ
「大丈夫です」と優しい定員に心配かけまいと
振る舞う。
「そうですか。ではお会計1650円です」
と定員は慣れた手つきでレジを打つ。
「安!あ、別々で」
そう言って会計を済ませるとレシートとカードを渡して来た。
「こちら当店と魔窟のポイントカードです。三つ貯まるとどちらか一店舗でドリンクが無料ですのでお使い下さい」
見るとカードには『定食屋 荒城』と『リストランテ魔窟』と2つの店名が印刷されていた。
(定食とレストラン経営って全然違ってそう。忙しいな。レストランの場所はどこなんだろう)と下の住所を見るとニつとも同じでニ部性でお店が開店してる事が分かる。
(いろんな工夫を凝らしてるんだな。一体どんなお店なんだろう)
「料理は多様。お酒もウエイターの自作です。まあ私の方が腕利きではありますが」
愉快そうにクスッと笑う彼は多分ナルシストで性格は大分嫌な奴なんだろう。
(いや、私もか)
気付かぬうちに勝手になずなを下に見て冷たくあしらってどう考えても彼女が素敵なのは分かり切っているが同時に羨ましいと感じる。
「ウエイターさんと仲いいんですね」と声をかけると定員はキョトンとしてピンと来ないようだ。
「そうですかね」彼はうーんと腕を組み一生懸命返答に迷っているみたいだ。
「喧嘩する程仲がいいと言いますし」と言うと「まあ、私があの人を怒られて仲がいいかは分からないですが」
どうやら定員はまだ仲がいいと認めたくないらしい。
「私も今友達怒らせたから喧嘩できるのは羨ましいです」
そう今しがた起こった事を掻い摘んで話す。
「だからご飯残しちゃいました」すみませんと謝ると「そうだったんですね。大丈夫ですよ。お友達もお客様が謝ればきっと許してくださいます」
定員は優しい。
しかし、それは本当だろうか。
謝ると言っても何をどう言う?。
仕事に失敗した時も編集チーム達に謝れずにいた。
しかしそれよりも先に先輩が「大丈夫」と慰めてくれたが季節物の買い付けは失敗しないよう先輩と同伴になった。
まだ今ひとつ煮えきれないでいると定員はうーんと唸り「そうですね。それでも不安なら魔窟に行かれてはどうでしょう。癖が強いマスター、いやウエイターがいますし魔窟には一元様歓迎だからか分かりませんが悩みを持ったお客様がよく来られます。
お客様も是非」
悩みを聞いてくれるマスター兼ウエイターがいるレストラン。
そこに行けば悩みは楽になるのだろうか。
こうしてはいられない。
次にそこを訪れたのは紹介した定員が引いても呆れるであろう。その日の夕方だ。




