3-2話 いらっしゃいませ!荒城へ
ブティックから歩くと気温が下がったのか二人とも早足になる。
「ねえ、なずな。ちょっと休もう」
先を行く彼女に声を掛けると
「あ、じゃあ私行きたいとこあるんだ」
そう言うと道路を渡り出すので彼女の歩く方に着いていく。
彼女の行く方にあまり店はない。
「何?なんかこの辺あったっけ」
最近できたカフェとかがあるのだろうかと思っていたら彼女がふと足を止めた。
その拍子に後ろに転びそうになったのを彼女が振り返り私の腕を掴み支える。
「ごめん、せり!大丈夫?」
心配そうになずなが私の顔を覗きこむ。
この小さい身体のどこにそんな力があるのか。
「大丈夫、大丈夫。でどこに行くの」
と尋ねると彼女は目の前の建物を指差して言った。
「ここだよ」
そう彼女はもう着いたよと楽しそうにしていたが私の気持ちは反比例していた。
「定食屋じゃん!」
いつもの彼女とは嗜好が違いすぎる。
「こないだお客さんに聞いて行きたくなったんだよね〜!ほら以外と綺麗じゃん?」
「だからって女子だけで定食屋ってなんか嫌じゃない?」
そうなずなに聞くと彼女も
「だから二人で来てるんじゃん。それに以外と今は女性も多いんだって。なんか定員がイケメンとかで」
そう聞くと私の気分は変わりイケメンというワードに興味が向いた。
「イケメン」が定員だから定食屋の良し悪しを判断するのは暴論だが私はバイヤーであって綺麗な物に弱い=面食いなのである。
「ねえ、せり入ろう?」と入り口で待っているなずなに呼ばれ「今回だけだからね」と返すとガラッと入り口の引き戸を開けた。
「いらっしゃいませ」
店内に落ち着いた、でも張りのある声が響いた。
数歩前にはなずなの言ったとおりイケメンがいた。
入り口で止まっていると「2名様ですか?」と対面式のテーブルを案内される。
「ね、言ったでしょ」
なずながメニュー表を渡しながら小声ではしゃぐ。
「うん」
確かにイケメンだ。
定食屋に似合わず金髪だけど。
そのせいで定食屋と分かっていたはずだが和風イタリアン屋かと勘違いしそうになった。
改めて店内を見渡すと壁に様々なメニューの板がかかっていた。
メニューも唐揚げセット、チャーハンセットなどがあり、横のカウンター席を見ると唐揚げセットを食べてる人がいてやっと本当に定食屋なんだと実感した。
それに私達は入り口奥のテーブルに通されたが正面、入り口側のテーブルは私達みたいに女性が二人で座っていて客の半数は女性だ。
「本当に女性に人気なんだ」
私のイメージする定食屋とは全然違った事に驚いた。
「なんか増えたのも最近らしいよ。まあ理由は、ね」となずながカウンターにいるイケメンのウエイターをチラッと見て私に向き直った。
成る程。
みんなこのウエイターが目当てなのだろう。
しかもしばらく見ていると男性が注文をするとお店にいる女性(店主のご家族だろうか)が注文を取り女性にはイケメンが注文をとりにいくというやり方をとっているらしい。
(店としていいんだろうか)と思ってるとなずなが
パラパラメニュー表をめくる。
「私、これにしようかな〜」
彼女はすぐさまレディースセットを選び終わるとメニュー表を私に渡した。
「即決じゃん。もっと悩まないの?」と呆れ半分で返す。
「う〜ん。人気って書いてあるし。ほら、ご飯の量も選べるらしいよ」と言って私の代わりにページを開いて見せる。
「本当だ。じゃあ私もそれにする」
確かにここのお店は唐揚げやチャーハンなど量が多そうなメニューが沢山だ。
なずなが手を挙げると例のイケメンがやって来て注文をとっている間意味もなく少し緊張してしまった。




