2-10話 復讐は無事?完了しました。
翌日、自分はデモンさんに言われた通り店が定休日なのをいい事に引越し先を探す事になった。
今は無給だからお仕事をしてるとは言えないが貯金なら少しある。
なんとか不動産屋に近くの敷金、礼金が格安で即日入居できる物件が決まりなんとかその日の内に引越す事が出来た。
店長には申し訳ないが事情を話すと悲しいけどと理解してくれた上で、魔窟での数日間での住み込み逃亡は幕を下ろし今日は一週間ぶりに魔窟にエプロンを返しに行く。
ただ挨拶して帰るだけじゃ何だし客として少しだけ店内にいよう。
そうして魔窟に近づくと魔窟の入り口で誰かが言い争っている事に気がついた。
「嘘」
それはまさかのあーくんと買い出しから帰ったデモンさんだ。
遠目にあーくんがデモンさんに詰め寄るが肝心のデモンさんは相手にしてなさそうだった。
すると視線を感じたのかあーくんが私に気がついた。
「愛莉!」
あーくんの見た事なく怖い顔が和らぐ。
「無事でよかった」と行き良いよくハグをしてきた。
いつもならそこで喜んで私も抱きついていた。
しかし今はそれを素直に受け止められない。
「本当?」と自分から出た声は静かにあーくんとの間に響く。
それに異変を感じたのかあーくんは戸惑ったが「本当だよ」といつものように明るい笑顔で返す。
「本当に?」ともう一度あーくんに尋ねる。問いただすように。
「本当だって。どうしたの愛莉?帰ろ」
あーくんは私の手掴もうとしたがその前に「じゃあなんでゆいピと浮気したの?」と口から出てしまった。
あーくんは動揺を隠せていない。
「いや、勘違いだって。何?だからもしかして家出したの?何にもないから。安心して」とあーくんはまだ白状しない。
いい加減、拉致が開かない。
「何でゆいピなのって聞いてるの!!」
遂に今までの嘘や違和感に限界を抑えきれず叫んだ。
「私だって馬鹿じゃないよ。ケーキだって文字見りゃ誰が作ったぐらい分かるよ」
あーくんを睨むともう言い逃れはできないと思ったのか下を向いたまま何も言わない。
しかし、彼が次に発した答えは意外だった。
「だって愛莉は俺の一番にはなりたくないでしょ」
と意味が分からない事を言った。
「愛莉が店に入ってきた時にさ人気が出るの分かってた。可愛いいし、付き合ってくれてマジ嬉しかったけど。頑張るなって言われても愛莉なんでも頑張るじゃん」
だからなんなのだ。
「ゆいピはね、愛莉とはその辺違ってさ。安心する」
つまり私の独りよがりだったと言うわけだ。
思い返してみる。
あーくんと数日前まで一緒だった時の事。
初めてメイド喫茶の魅力を教えてくれた事。仕事でもプライベートでも店長にも言われた『頑張らなくていいよ』の意味の本心を知り私は恥ずかしくてまた涙が出てきそうになった。
つまりは好みの問題だ。
あーくんは自分が彼女を支配したい人なのだ。
他の誰でもなく自分好みに動く女が好みなのだ。
しかしまだモヤが心の中に残る。
「気持ち悪い」
そんな気まづい雰囲気を一蹴りするように一人の男が野次を投げた。
デモンさんだ。
「は?見てんじゃねえよ」
あーくんは気を悪くしたのかデモンさんに食いかかり、こちらに振り返る。
「愛莉、いつでも店に帰って来ていいからね。家だって今ないでしょ?よかったらまた一緒に住もう」
そう意味不明な事を言いながらあーくんは私に近づいてくる。
なんなんだ。本当に。
「気持ち悪い」
と目の前の彼に本音を吐くと今まで愛想をまいていた顔は血相を変え腕を掴まれそうになり目を閉じたが何も起こらない事に気がついた。
目を開けるとそこには「痛ええ!」と叫ぶ奴の姿があった。
見ると自分に掴みかかろうとした腕があり得ない方に引っ張られてる。
(何が起きたの!?)
突然の事で動揺してるとデモンさんが手を隠し「大丈夫か?救急車呼ぶか?」とまるで微塵も思ってない楽しそうな口振りで痛がるソイツに声を掛ける。
「ああ?見りゃ分んだろ。早くしろよ」とデモンさんを睨むとまた痛みが走ったのか「痛え!」と叫んでいる。
暫くし救急車が駆けつけて彼は呆気なく病院送りになってしまった。
そんなこんなであーくんとの三年間はデモンさんが復讐する暇もなく終わってしまった。




