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2-8話 口は悪いけど酒は美味いです。


魔窟での二日目は昨日より、客の入りが少ないと誰もいない店内で愚痴る。



「まあ、イブもクリスマスも終わったしそうなるよね」店長は宥めてくれるが「そんなに呑気でいいんですか〜!?いくら店長のご両親のお店だからって危機感ないですよ〜」と矛先を店長に向ける。



「デモンさんも何とか言ってやってください」

とデモンさんなら加担してくれるはずと思っていたが「まあ、アイツには借りがあるから肩はもてない」ときっぱり言われてしまった。



(役立たず)とデモンさんを凝視していると「おい、お前何考えていた」とジト〜ッと睨み返された。



(げ、心読まれた)

と慌てているとガラッと店の入り口の引き戸が開く。女性のお客さんだ。



「いらっしゃいませ、お嬢様!」とつい前のメイド喫茶業界の接客用語が抜けずつい自分も含めその場にいた全員が固まってしまう。



しかし何とか「失礼致しました。いらっしゃいませ、こちらのお席へどうぞ」と言い直しカウンター席に促しバッグを入れる籠を渡す。



最初は私の言い間違いに驚いていたお客さんもメニュー表を渡すとメニューを選びました。



その間私はカウンターに戻り店長の手伝いに入る。



そしてメニューが決まったのかお客様がカウンターにいた私に声をかける。



ウエイターならテーブルを拭いているデモンさんに注文ができるのだが。



とりあえず注文を聞くためペンと伝票を準備していると「あの、これってどれくらいのサイズですか?

とメニューを指を指したメニューは和風オムライスだ。魔窟には定食屋荒城のメニューが一部引き継いでる。



オムライスはセットで大きすぎず小さすぎない。



私も食べた事があるからこれには私も答えられる。



「そうですね、こちらのお料理でしたらこれくらいの大きさになります」と提供してるお皿を見せる。



「そうなんですか」とお客様は語尾が下がってまたメニューを選び始めた。



(もしかしてメニューに迷っている?)



すると店長が「よかったら量を調整する事もできますよ」と声を掛けると女性は「本当ですか?」と尋ねた。



「はい。料金は多くしたいならプラス百円、反対に少なくを希望でしたら百円でお出しできます」と店長が続けるとお客様は表情が明るくなり「じゃあ少なくにします」とメニューを決め注文する。



料理の金額は量はプラスマイナスで変動すると最初に教わっていたのでパッと対応出来なかった自分が不甲斐ない。メニューを作る間

「じゃあ次こっちお願い」と汁物を温めてサラダ等一緒に盛り付けをしお客様に和風オムライスセットを運ぶ。




「お待たせ致しました」と横からメニューをお出しすると小さい声でお客様は「美味しそう」と呟く。




そしてオムライスに手をつけると自分が初めて魔窟を訪れて食べた時と同じような顔になっていた。



私が店長に指示され作業している横でデモンさんがカウンターのお酒を置いてある棚を触っている。



するとその様子を食べながらお客様も見ていたのか「ここってお酒もあるんですね」と言って来たので「はい。何かご注文ですか?」と聞くと「いえ、ここって多国籍レストランなのにお酒の種類もあって不思議だなと思ってしまって」

確かに魔窟は店のコンセプトが個性的だ。



(確かに)お客様が気にするのも納得だ。



自分も気になって二人に聞こうとするとなぜかため息を吐いて先に店長が「いや、店を開く前に家の家族が道端に倒れてるコイツを助けたら酒を作るのに長けてるって気がついてですね。コイツは拾われ者なんです」と店長がデモンさんを指差して説明する。



デモンさんは、はいはいと店長の話を聞き流してる。「んでウエイター兼バーテンにしてるんです」とお客様に話す。



その話を聞いたお客様は絶句していた。




しかし時間が経つとお客様は平常に戻ったのか

「そうなんですね」と何とか話を理解したらしい。

(ヤバい、お客様引いてるじゃん。てか私も引いたわ)



確かに従業員としての接客が気合いがない理由に合点がいった。



しかし、そうなると少しデモンさんに対してイラつきが生まれる。



かたや魔窟に拾われたデモンさんは最低限の賃金はもらっているバイトか雇用形態は渡らないが店長に給料分は働けと仕事中言われてるのを聞いたからお給料はもらっている筈だ。



かたや私は自分で住み込みで(荒城の手伝いをするかと思ったが)魔窟の手伝い。無給の!

そう考えたらデモンさんを試したくなった。



私はまだデモンさんのお酒を飲んでいない。




お客様が料理を食べている間デモンさんに「私もデモンさんが入れてくれたお酒飲みたいです」と言うと「軽いやつな」となめられる。



カチンと来て「あ、言っておきますけど意外と私飲める方なんで」と言うと「店が終わった後に作るならそれから風呂入るだろ。風呂場で倒れられたら困る」と言われ「デモンさんって意外と気を使えるんですね」と言うと横で聞いた店長が横を向いてブハッと声を抑えて笑った。



「やっぱ作るの止めるわ」と言われ「ええ〜、褒めたんですよ」と弁解したところで「はいはい、木下さん、洗い物よろしく」と店長が笑わせないでとデモンさんから離れるよう示唆される。



(あれじゃデモンさんのお酒飲めない)



意外とガッカリした自分がいて驚いた。



いや、私も魔窟に貢献できている筈だ。



そう気合いを入れると皿洗いに取り掛かった。



その後お客様は意外とお腹はまだ空いていたらしくデザートを追加注文をしてくれた。



とはいってもジェラートだ。



魔窟のジェラートは三種類からニつ選べる仕様になっていて平皿のデザート皿の隅にはソースとフルーツがつく。



お客様はバニラとチョコを注文した。



てっきり店長が盛り付けをするものかと思っていたが「木下さん、アイス盛り付けお願い」と言われ

驚いた。『いいんですか?』とお客様からカウンターは見えるので目配せすると店長は頷きながら皿を渡した。



「アレンジしていいからかわいく仕上げて」と言われ店長にメイドの腕を買われていると意気込み奥に材料を出し先に冷やして置いた皿にまずはメッセージを書く。



『bon appetite』

英語で『召し上がれ』だ。



横に花を一輪描く。茎や葉も描く。



反対側の余白に横長の波を描きそこに細かくカットしたフルーツを乗せて真ん中にアイスを置く。



ジェラートの完成だ。



デモンさんに渡すと「お待たせしました」と出してもらうとお客様は「かわいい」と喜んでくれた。



そして「あの、写真撮ってもいいですか?」と聞かれ店長が「はい。大丈夫ですよ」と言う。



お客様はカメラにそれを映すと美味しそうに食事を楽しんだ。



そうして「ご馳走様でした」とお会計を済ませる時に「今日はたまたま車だったけどまた電車使ってきます」と嬉しいお声を頂いた。



「ここお店の情報とかってありますか」と営業時間をお客様は知りたそうだ。



「ありがとうございます。こちら十八時から夜一時までの営業になります」と案内しお客様は帰っいった。



「せめてショップカードは作りたいなあ」

とぼやく。



チラシも無理しなくていいよと言われてるし何かしたい。



と休憩中スマホを握り閃いた。



「そうだネットだ!」



あに♡ラブでもビラ配りの他にあーくんがやっていたSNS。告知やイベントレポート、新メニューが出る際に活用していた。



加えてメイド喫茶は今こそ行きやすくなっているが情報はネットで入手できコスパもかからない。



思いついたが先で休憩上がりに早速店長にSNS戦略を打ち明ける。



しかし「あ、うち一応ネットには上がってるよ」と言われ見てみると確かに自分でも調べて確認したネットサイトのトップ画面に出る周辺のお店情報を見る。



一応ある。でもこれでは店の詳細分からないしなんなら地名とランチで検索した荒城の方がレビューが目立って意味ない。



これじゃあ下がれないと店長にメリットをしゃあしゃあと話す。



「店長だって呟くでしょ!?」



見たところ二十代後半の男性だよなと店長を見る。



「いや、俺は見る専だし。ネットって情報収集する為に使わない?それに忙しいし、アイツに頼むにしてもー」と語尾を濁されこれには私も同感した。

「じゃあ、私が広報やります!」と申し出る。



すると「マジ!?ありがとうー!」と店長はあっさりOKを出した。



ニ日目の魔窟はどうなるかと思ったが昨日よりは客足は少ないがまずまずだ。



程よく間を空けて来る常連、好奇心で入ってみた人、荒城から興味を持って来てくれた人と様々なタイプのお客が来てくれた。



そして閉店前。



「そろそろ片付けるよー」と店長に言われ自分は皿洗いをし、デモンさんは飲みに来たお客を対応し引いたグラスやらを自分が洗う。




お客様が全員帰り作業が終わってグタっとしとしてるとまたデモンに「おい」と呼ばれまた洗い残しのグラスがあったかと思う。



(ちょっとは勘弁して)と思い疲れた顔をしてると

デモンさんの手にはカクテルが握られていた。



(かわいい、ピンク色の果実酒だ)



「デモンさん、意外と可愛いいやつ呑むんだ」とからかう。(仕事終わりだけど一応呑むんだな)と思っていると「これはお前のだが」と言ったので驚いた。



「嘘!?」と驚き「飲みます!」と申し出た時にはデモンさんが呑まんならいいとグビッと飲み干す。




「ああ〜」と情け無い声が出る。



「鬼!悪魔!」と言うとなぜかデモンさんは機嫌を悪くしたかギロっとこちらを睨むから「いや、冗談です」と言うとジリジリ警戒されて「そうか」と言われた。



そこでちゃっかり「私も呑みたかった」と言うとはいはいとあしらわれ「嫌いな酒はないか?」と聞かれ「う〜ん、大抵飲めるけど甘口が好きですね」とだけ言うと「了解」と言うとお酒を作り始めた。



店長は「長くかかりそうだから俺は先に上がるよ

」片付けはする事!と言うと鍵を置きカウンターには私とデモンさんだけになった。



私はカウンターに座り目の前でシェイカーを振るうデモンさんを見る。



「お酒って作るの難しいですか?」



バーには一回だけあーくんとデートに行ったのが初めてだ。



その時は彼と話していたけど、カクテルに興味があったがバーテンさんに聞けなかった事が今更口から出る。



「いや、材料は覚えなきゃいけないが作り方は似てるしあとは好みだ」



食べてる物に合わせたり、普段何を呑むかとかだなと言われ「デモンさんって凄いんですね」と素直な感想を言うと

「アイツの飯には敵わねーだろ」と自傷気味に言われて(デモンさんって店長のご飯大好きなんだ。

そして自重するんだ)と思ったが口には出さない。



また作ってもらった酒が呑めないのは嫌だ。



「はい。完成」と目の前には、先程より淡いピンクのカクテルが出てきた。


「パッシモグレープフルーツ」とデモンさんが付け足した。



「かわいい」と言うとカシャッとスマホで撮影をすると「それ」とデモンさんがスマホを指摘した。



「写真撮って楽しいか?」とデモンさんは不思議そうだ。



「はい。やっぱり華やかな料理とか景色とか忘れない為に撮っておきたいじゃないですか?お客様もそうだと思いますよ」と言うと「そうか・・・ 」と言うと後ろを向かれ片付けを初めてしまった。



気のせいかその後ろ姿はどこか上機嫌に見えた気がした。




後ろ姿を見ながら(ますますデモンさんは不思議だ)と感じる。



傲慢で根暗かと思えば素直で繊細。



ここに来たいきさつまでもが不思議だ。



デモンさんの作ってくれたカクテルは美味しい。



「うま〜」と誰もいない事をいい事に遠慮なくグイ〜と呑む。



「バーでそれすんなよ」行儀悪いなと言われ「普段は宅飲み派です〜。それに人が作ったのが美味しいじゃないですか?」



そう言うと「それは分かる」と珍しく息が合ったので笑いあった。


「まあ、元メイドでしたから」職業病で〜すと言うと真面目な目で見られてなんだかびくついてしまった。



デモンさんは怠けて見える分普段からは見た事ない真顔だと背景の雰囲気に緊張感があって落ち着かなくなる。



「なんですか?」とさっきまで和やかだったので聞いてみると「戻りたくないのか?店に」と聞かれ再び動揺する。




「昨日も言ったじゃん。帰れないし」と返す。



「でも満更でもなさそうじゃん。好きだったんだろ仕事?」と言われ図星だった。



メイド喫茶は可愛いい。ママの言う可愛いじゃなくて私が可愛いと思う全部がある。



働いてみて驚きもあれば楽しさもあった。



でもあんな事があった以上戻れない。



「とにかく、今は魔窟を盛り上げるんだからデモンさんも頑張ってください」と先制すると「一人でやれ」とあっさり想像通り突き放された。



「ご馳走様でした」と言うと「ここだけは片すからお前は他な」と言われて半端したが「酒代千円分」と言われ「高!」と半端したが「バーなら相場だ」と言われ従うしかなかった。


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