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2-5話 客寄せはお手のものです。 愛莉 談



「まあ、昨日が多かったんだけどな」横にいたウエイターがボソッと吐くと店長が「いや、イヴだけがクリスマスじゃないだろ」と苦笑いをすると「じゃあ今日までクリスマスメニュー出せばいんじゃね?」とウエイターが物申す。



「え〜、でもクリスマスディナーって普通は二十四日に食べるイメージがありますけど」



二十五日にクリスマスメニュー出すとこなんてあるんだろうか?そう考えていると店長が「いや、あるよ。ほらホテルのディナーとかは二十五日までしてるとこ多いぞ。まあ二十四日の方が予約数断然多いけどな」と言ったのでなるほどと相槌を打つ。



「じゃあうちも今日までクリスマスメニューにしたらいいんじゃない?」と口にすると店長は嫌ー!とばかりのけぞった表情を見せた。



「ほら、準備してないし、メニュー表にメニューは書いてるし無理だよ」と必死に無理無理言っている。



「そんな事言ってお前こないだ自分が食べたいだけで今日のおすすめ、ビーフシチューにしてたろ」とウエイターに言われ渋々「うるせ〜!俺は店長だからいいの」ほら持ち場に戻る!と店長に叱られる。



「昨日のメニューじゃなくていいんです。メインは今日のおすすめにして昨日のポテサラとかフルーツにアイス添えてミニパフェにするとかしたらどうですか?」と提案してみる。



するとウエイターが「甘いもん出すなら俺、そっちがいい」と味方してくれた。賄い余ったら食えそうだしと付け加えて。ウエイターが肩を持ってくれたのは意外だった。



「材料は確かあっただろ」とウエイターがまた言うと「お前、厨房あんま入んねーくせに材料把握よくできてんな」と店長がウエイターに言うと一瞬ウエイターの目が泳いだ気がしたが「自分で昨日余が出たっつったろ」と言うと「言ったか、俺?」と煮えきれないような苦笑いでウエイターを見た。



「私なるべく手伝いますよ。飾り切りとか少しならできるし」ウエイターに負けじと私も乗る。



「マジで!?助かるけどちょっと悪いな〜」とまだ店長はクリスマスディナーは乗り気にならないらしい。



「大体、ワンパターンなんだよ、うちは。通常メニューじゃ限界があるからやれって言ってんだろ」



ウエイターに厳しく言われ「だったらお前普段から真面目にやれよ」とぎゃあぎゃあ五月蝿くなりそうなので「でも確かにいつもより儲かるかも」とウエイターがワンパターンと言っていたのでもう一つ押してみる。



「二十四日に祝えなかった人とかいるだろうし、ホテルにも予約取る人いるなら需要はあるよね」と付け足すと「儲かる?」と店長が私を見て聞く。



「はい。あ、呼び込みしましょうか?仕込みやったら私外出れますよ。最初のうちしか外出れないと思うけど」と言うと「木下さん、何日でも家にいていいからね」とどうやら私は買ってもらえたらしい。



ウエイターは「ボード書き直す」とまた外から取ってきてキッチンの隅で書き換える。



「じゃあ木下さんにもポテサラを作ってもらいます。林檎入れるから林檎の皮剥いて薄切りにしてもらっていい?」と店長に言われ「任せて下さい!」と意気込む。



三十分以上経って準備が終わる。

後は客寄せだ。


「じゃあ、私呼び込みしてきます。チラシ下さい」

と店長に頼むと

「え?うちビラないよ」と言われ撃沈した。

(「ない」だと!?)

「え、じゃあ普段どうやってるんですか?」

「あ〜、うちはこういう経営状況じゃん。だからチラシとかは置いてないんだよね」

あははと店長は呑気に笑っている。




「じゃあSNSは?」

となりにいたウエイターを見たが首を傾げられた。

ダメだ。



この店に宣伝意欲は感じられない。



「分かりました。広報も担当します。とにかく今は人を呼ばないと。店長パソコンありますか?」

「うん」

その返事を聞いて「あと、メニュー表一枚借ります」そう言って店長のノーパソと印刷機をかり簡素ではあるがチラシができた。



上半分に今日までのクリスマスディナーをデカデカ載せてした半分に店長に追加で載せて欲しい魔窟おすすめメニューを値段を入れ下には地図を入れて完成だ。



「ちゃっちいけど」恥ずかしいレベルじゃない。



印刷して私はコートを羽織り交差点を渡って呼び込みをする。



魔窟は繁華街やオフィス街から少し離れたところにありすぐそばに大きな駅に向かう道路があるが店側にはあまり目立つところはないが反対側は店が多く賑わっている。



人通りが多いとこまできた。(この辺かな)

流石に他の店の前じゃやばいので曲がり信号のある人が通りそうなところに場所を決め呼び込み開始だ。



「こんばんわ、お腹空きませんか?」サッと近くにいた女性の手元にチラシを出す。



しかし女性は「すみません」と頭を下げ道路を渡っていった。



(めげない!)

今度はカップルや複数人の客を狙う。



「お食事どうですか?今日までクリスマスディナーやってます」と言うと女性の方が喰い付いてきた。



「え〜、嘘?どうする」と男性に女性が興味ありげに聞いている。



「え〜、お前肉喰いたいって言ってたじゃん」

「けどこれも美味しそうじゃん!」

彼女の方は興味を持ってくれている。



(よし!いけそう!)



その時彼氏の方が「これってこの辺ですか?」と聞いてくる。



「ここの道路渡って駐車場の向かい側にあります」

と説明する。そう言うと

「この通りじゃないんだ」と彼氏の方は渋ってしまった。



これには「はい」と言うしかない。



結局2人はこの通りで店を探していたらしい。



また客を逃してしまった。



なかなかターゲットを絞るのに難しい。



苦戦していながらビラ配りを続ける。



三十枚刷ってきたが余裕であまりそうだ。



早く配って店に戻って手伝うはずだったんだけどなあ。



焦りが混じりながら呼び込みを再開する。



次も女性だ。


「レストラン魔窟でクリスマスディナーを今日までやってます。一元様歓迎です。よろしくお願いします」と渡すと「一人でも大丈夫なんですか?」と不思議そうに聞かれ「はい。昼は別のお店で定食屋で営業してますのでカウンター席ですが

すぐご案内できます」と説明すると「あ、この近くですね」と受け取ったビラを見て気づいたらしい。


 

「はい。よかったらクリスマスメニュー今日までなのでよろしくお願いします」と言うと「ありがとうございます。行ってみます」とビラを受け取り店の方にお客様は歩いて行った。



(やったあ、一人目!)



そうしてまた一人とビラを配った。



三十分過ぎてまだ四枚くばり終えたけど店がピークだろう。



一旦戻る。



そうすると店の席は程々に賑わっていた。



「おかえり〜、ごめん。帰ってきて悪いけどレジはアイツするから接客お願い」



店長に指示をもらいお客さんの注文にまわる。



途中、ディナーを運んでいるとビラを渡したお姉さんが声を掛けてくれた。



「どうも」と会釈をしながら「追加でお酒を注文したいんですけどおすすめありますか?」と聞かれてこれには私も迷った。



「少々お待ちください」と断り酒はウエイターが作るからそいつに聞けと言われていたのでウエイターに訪ねると俺が行くと注文を取りに行った。



ウエイターの接客は心配だったがお姉さんは楽しそうに話していてウエイターも珍しくにこやかだ。



なんだか接客スマイルなのか分からないが知ってる奴の猫かぶりは可愛くない。



イライラしているとウエイターはキッチンに入るので私に「後の接客お願い」と言うと酒を取り出し作る。



悔しながら普段の接客は難点はあるがお酒の提供の仕事は出来るらしい。



バーで働けばいいじゃんと思うが店長が拾ったって言ってたし、彼の過去が気にならないと言えば嘘になる。



その後も休憩に入ったりまた第二のピークタイムが来たりで魔窟での初めてのアルバイトは終わった。

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