決着
「盛り上がっているとこ悪いけど、僕は後退させてもらうよ」
「桜田は手伝ってくれないの?」
「いやいや、僕がいない方が思い切りいけるだろう」
「それでは私も援護にまわりましょう」
いつの間にか戻ってきていた春樹さんも桜田に賛成の様だ。
「作戦会議は終わりましたか? 行きますよ」
向かってくる叢雨。
相対するは私とリリンのコンビだ。
風の刃じゃ効かなかったけれど・・・・・・
「魔力は気持ち。威力は願い!」
・・・・・・今、瑞樹ちゃんは私を受け入れ、私もまた受け入れたわ。今のあなたはもう私から魔力を借りているんじゃないのよ。あなたの手の中に魔力の種はあるの。仮ものじゃない。あなたの本物、使いこなしてみなさい。私は支えになってあげるから!
「何をぶつぶつと」
「イメージは水。あの刀と渡り合える強度、硬度・・・」
俺は眼を瞑ってイメージをする。
はっとイメージが固まったところで、それを握る。
瞬間、俺の手には刀が握られていた。
「文字通り、付け焼刃で私に勝てるはずがない」
「その通りだよ。私は剣技で叢雨に勝てない。だけど・・・」
斬りかかる叢雨。
それを今しがた作った水の刀で受け止めた。
「なに!?」
「言ったでしょ。願いは威力。私は受け止めるだけの力を望んだ!!」
もちろん、それだけで受け止められるはずがない。
叢雨の振り抜きは、俺の目では追えない。
ではなぜ、受け止められたのかって?
そんなのは簡単だ。
リリンが俺に身体強化系の魔法をいくつも、ありったけかけてくれているからだ。
だから今の俺には、常時では視えない速さのものが見える。ありていに言えば、スローモーションの世界にいるような気分だ。
・・・・・・勘違いしてはダメよ。能力は上がっていても基礎体力は上がっていない。あまり長くやり合ってはダメ。
「わかっている。はあぁぁっぁ」
叢雨の刀を払いのけ、逆に俺が斬りかかる。
「それでは甘いですよ」
「もう一工夫いる・・・・・・」
「ならこれはいかがかな」
後ろから声がかかると同時に俺の足元に丸の中に門と書かれた札が飛ばされてきた。
「なるほど」
俺は咄嗟に叢雨に斬りかかる。
当然叢雨もそれに反応し、刀同士が触れ合う刹那、俺の姿が消える。
「はあぁぁぁぁあああ」
忽然と姿を消した俺は、突然叢雨の後ろから姿を現したのだ。
突然の出来事に一瞬の遅れ。
その遅れだけで今は十分だった。
叢雨の刀が振り返りざま止めに入るその前に俺の水の刀が切り裂いた。
「う、ぐうぅぅ・・・・・・」
まさか結界を張っていた紙の裏に出口を設定させていたなんて、桜田は一体何手先まで読んでいたのか、ちょっと恐ろしすぎる所業だけれど。今は気にしないでいよう。
「私は命亡き者。いくら切り刻まれたとて諦めません。正義を・・・」
「正義なんて危うさでしかないよ。立場が変われば、どんな正義だって通用してしまうもの」
「そんなことはない。私は人の悪に立ち向かって」
「それがあなたの正義ですか」
「でもそれは私の正義じゃない。正義なんてなくてもいいと思うんです。だって悪がいなければ成り立たないのだから」
「そんなことは、絶対にない、はずだ・・・・・・私は今まで何度もこの正義で感謝されて」
「その時はその時ですよ。ただ今回は悪はいない。あなたのそれはただの暴力だ」
「違う!!!」
叢雨は怒り狂った怒号を乗せて斬りかかってくる。
けれど、その刀にもう威力はない。
彼女は怨霊だ。肉の身体は壊れれば再生しない。
動いたことによってさらに切り口から出血が激しくなる。
「叢雨さん。私は初めて会った時、あなたをただの着物が好きなおばさんだと思った。そんなあなたを私は倒さないといけない。私はこれを正義なんて思いませんよ」
「ふふ、いいんですよ、谷崎さん。私からすればそれはただの偽善ですが、私とあなたの正義は違う。それが正解です」
「そうだ、これは私・・・俺の勝手でただの偽善だ。だけど、貫き通したい思うがある時、気持ちと気持ちの衝突は必然で、しなくちゃいけないことで、その結果がこれでも・・・・・・」
「あなたが悲しむことはない。あなたは私を退けた。ただそれだけです」
俺がこの人を・・・・・・
桜田はそう言うことではないと言っていたけれど、でもこれは一人の人生の終わりを・・・・・・
「あとはこの短刀を破壊するだけですよ」
叢雨をそう言うと、自分の刀を捨てた。
俺は願えるだろうか・・・・・・
これを破壊するだけの思いを抱けるのだろうか・・・・・・
「ああ、一つ言っておきましょう。置き土産、というやつですよ。私をこのビルに差し向けた、その人物、いえ悪魔でしたね、あれは。確か・・・サキュバスのように見えました。きっとあなた方に必要な情報でしょう」
「サキュバス??」
「さあ、一思いにお願いしますね」
「瑞樹ちゃん、その状態で放置は逆にかわいそうだよ」
「う、うん」
俺は悲しみを抑え、刀を壊す、そのことだけを念頭に置き、自分を脅威から守るのだと、そのことを思い出し、力を望んだ。
そして、一思いに、水の刀を短刀に突き刺し、砕く。
瞬間、叢雨は白い光とともにいなくなり、そこには壊れた刀だけが残った。




