宣戦布告
あんな大見えきって言い放ったけれど、結局これだ。
俺の意識は夢うつつ状態で、もう意識と呼べる代物ではない。
「ここは・・・」
見たことのある景色。
俺の精神世界。
「叢雨の術中の中ってことか・・・」
俺がここに居るってことは今はリリンが俺の身体を支えているってことに違いない。
残念なことに、このパターンは初めて。
対応策は思いつく限りない。
いや、諦めるわけではないのだけれど、元を正せば俺はリリンの力を仮受けていたにすぎない。そして今はある意味で、引き離された状態だ。
そんな状態で俺にここからできることなんてあるのか、ないのか、そんなこと考えるまでもないだろう。
ただ、それでも、そうであっても、今回の俺は諦めるつもりなどないのだ。
そのころ、現実では。
「やっとですか」
「その姿は・・・・・・リリスの娘という話は本当だったんだね」
「私を呼び出すなんて、何考えてるの?」
俺の姿を纏ったとでも言おうか、そのリリンは俺の髪を銀髪に変え、目の色も紅になっていた。
リリンは叢雨をにらむように見据えた。
叢雨はまだ結界の中だ。
「私を外に呼び出せばどうにかできるとでも?」
「いえ、私の刀では中にいるあなたに手を出すことが少々厄介だった、というだけですよ」
そう言いながら叢雨は空中を斬るような動きをした。
「私の刀、妖刀叢雨は、この世のものでない者たちに対抗するための刀ですから。当然それに類する力も絶つことが可能です」
言い終わると同時に、桜田の用意した結界が砕かれ、叢雨を阻むものが無くなった。
「そうなのね・・・・・・でも、私が表に出てきたってことは力も使えるってことなのよ」
「私の用意した印では意味がないと?」
「瑞樹ちゃんを大事に思うからこそ、静かにしていたけれど、この程度どうということもないわ」
リリンは鎖を掴むと、強引に魔力を押し当て断ち切った。
「一つ聞いておきたいのだけれど」
「なんでしょう」
「その刀、肉体は傷つくのかしら?」
「通常ならそんなことはないですが、同調の進んだあなた方はわかりかねます。試しに一度斬られてみては?」
いうが早いか、叢雨はとびかかるように斬りかかってくる。
「瑞樹ちゃんの身体、実際に使ったことってないんだけど・・・」
瞬間、叢雨は行動を止め、一度さがる。
「あら、ずいぶん鋭いのね」
「ええ、あなたの周りからすごい魔力を感じたもので」
「肉体強化、精神強化、身体能力向上、身体機能上昇っと、このくらいで馴染むかしらね」
「ずいぶんと好戦的なのですね」
「私もずいぶんと昔のことを思い出すわ。こうやって魔法を唱えるとね」
リリンが指さした先、そのすぐ横をかすめるように風の刃は通り過ぎた。
「風魔法ですか」
外した軌道をさらに修正した二発目。それを・・・・・・
「ですが、魔法は偶像。この刀はそれすらも絶つ」
叢雨は斬った。
今度はドンピシャの軌道。
だけれど、叢雨の持つ刀、妖刀叢雨の方が刃の性能では上だ。
「いくら魔法を放とうと私はそのすべてを絶つ。そして私はあなたを正義の元に打ち倒します」
「私が安らかに眠れるのならば、それもいいと思った。けれど、結局瑞樹ちゃんに迷惑をかけるのならばそうも行ってられない」
叢雨はリリンが用意した風の壁をやすやすと切り裂きながら、飛び越えるように迫ってくる。
そして、最後の一枚。
最も厚く、濃密に積めた壁。
それも一閃。
叢雨は切り裂いた。
「これが私の望んだことの結末か・・・」
叢雨が振り抜く、その刹那、視覚外からの攻撃。さすがの叢雨もこれには反応できなかったようだ。
「まだ終わってないよ。リリン」
「なぜ意識が戻って!?」
「瑞樹ちゃんは時々予想以上のことをしてくれるからね」
「階段用意されていたからね」
・・・・・・どうやって。
・・・・・・リリンと同じだよ。鎖を伝って行っただけの話。いや~、魔法で手助けしてくれてよかったよ。
・・・・・・私はそんなつもりでやったわけじゃ・・・
・・・・・・結果助かったんだから、それでいいじゃない。あとは任せて。お姉ちゃん
俺は心の中で微笑んだ。
魂の在り方なんて知らない。
でも、一つの身体に二つの魂。いや、一つの魂に二人の意識だろう。ならば、リリンは躰を同じくした兄妹のような、姉妹のような関係だろう。
姉が困っていて、助けたい妹がいるとしたら、とる行動はもう決まっている。
ただ、素直に任せられないのが、リリンというお姉ちゃんなんだけれど。
・・・・・・いいえ、私も、私たちでやりましょう。
・・・・・・そうだね!!
「魔力ってこんな感じなんだ・・・」
「ありえない。なぜ谷崎さんがその力を・・・・・・同調がさらに深まったとでもいうのですか・・・」
「よくわからないけど、今の私を倒すなら容赦しないよ」
今度は私から宣戦布告だ。




