文化祭当日 3
あかねと屋台巡り、それから出し物巡りをしながら、いろいろな物を食べ、見ていく。
「あ、唐揚げ棒売ってるよ~。買っちゃおう」
そそくさと並んで買ってきたあかねは、
「はい。一口どうぞ!」
と、俺の口に半ば無理やり食べさせる。
「ちょと、無理やり過ぎない!?」
「だって、瑞樹ちゃんこういうの恥ずかしがって食べないでしょ」
「う・・・・・・」
それはそうかもしれないと思ってしまって、言い返せない。
「じゃあ、今度は瑞樹ちゃんが何か食べさせてよ」
「え~・・・じゃあ・・・」
と周りの様子を窺う。やきそばがあった。
「やきそばはダメよ」
「え、なんで?」
「青のり付けたメイドさんなんてみんなひいちゃうよ~~~」
「う・・・・・・」
まさかこういうところまで制限されるとは思っていなかった俺は、またもや言葉に詰まる。
「じゃあ・・・・・・」
ポテトが売られていた。今度は何かを言われる前にそそくさと買いに行った。
「はい」
「・・・・・・」
「あ~ん」
「よろしい」
遊んでいるな・・・・・・しかし経験上、残念なことに耐えることが一番安全だ。間違ってもやり返してはならない。そうしたら・・・・・・
「で次どれ・・・あ~うん、何か食べようね」
「うん・・・」
俺たちはそのまま食堂に向かった。
食堂ではいつも通りのメニューが売られていた。
ただ、ここは休憩所としても成り立っているため、昼時と重なったこともありほとんど席がない。
ようやく見つけた席も二人席。
まあ、空いていただけありがたい
「じゃあ、何か買ってくるね」
「うん、いってらっしゃい」
あかねに席を見ていてもらい、俺は食券を買いに行った。
いろいろなメニューの中から、コスパ、ボリュームともにいい甘辛揚げ定食を注文した。
白米と味噌汁、おかずに千切りキャベツの上に乗った甘いタレと辛いタレでそれぞれ味付けされた唐揚げが乗った、そんな定食。
「買ってきたよ~」
「じゃあ、私も」
「うん」
俺はあかねが戻ってくるまで待っていた。
「あの~~」
声を掛けられて振り返る。
「あなた、孤高の黒姫ですよね」
「え??」
よくわからない男から声を掛けられてどうやって追い払ったものかと思案を巡らせる。
「ちょっとそっちで一緒に写真撮ってもらってもいいですか?」
「いや、今休憩中なので」
「いいじゃないすか。ちょっとだけ」
「いや、そういうの困ります」
「ちょっとだけ、ほんのちょっとだけっすから」
「こま・・・」
「迷惑なのよ、あんた」
俺が言いかけた瞬間、さらに後ろからお盆を持ったあかねによくわからない男は突き飛ばされていた。
「さ、食べましょ」
「ちょ、まてよ。女~。よくも蹴飛ばしてくれたな」
怒っちゃってるよ~・・・・・・ほんとこういうの迷惑なんだけどな・・・・・・またあの手で追い払う・・・・・・
「先生こっちです」
「ちっ・・・・・・」
騒ぎを聞きつけた生徒が先生を呼んでくれたようだ。助かった~。
「あの様子だとちょっと危ないかもね」
「せいぜい気を付けましょう」
「あかねも注意してよ?」
「はいはい」
う~~ん、ちょっと心配・・・・・・
そんな眼差しで見ていると「なによ~」という睨み返されてしまった。
って、そんなやつはもうどうでもいいや。
「冷める前に食べようか」
「そうね」
俺たちは昼食を食べ始めた。
昼食を終え、あかねもこの後仕事があるということなので、ともに教室に帰った。しばらくして、楓が訪ねてきた。
「お姉ちゃん??」
「?? 誰の妹さん」
「あ、楓。こっち」
「お、お嬢様の妹!?」
「お姉ちゃん・・・」
いったい何がどういうことなのという表情をされ、まあ、こっちおいでと手招きする。
そして俺の向かいの席に座ってもらって、
「いらっしゃい」
「ねえ、これは一体」
「見ての通りです。良く言えば学校での私は有名人。悪く言えば遠い存在」
「はあ・・・ここまでだとは思っていなかったよ」
「ちょっとは知ってたんだ?」
「うん。あかねさんから聞いた」
俺の知らないところで俺の情報は駄々洩れだった。
「そうだ。お姉ちゃん今日はいつまで?」
俺は時計を確認しつつ、
「後二時間かな」
すでに二時を回っている。一日目終了が四時だから、差し引いて二時間。
「じゃあ、待ってる」
「わかった」
と、楓は他を見てくると教室から出ていった。
今の光景をさっきの奴が見ていたなんて、俺はこの時気づいていなかった。気づいていてればこの後の展開はなかっただろう。
帰り道、予定よりちょっと遅いがメイド服から着替えていたりしたからしょうがないよね。
で、もうすぐ家に着くという頃、事件は起こった。
「孤高の黒姫さん」
「え??」
「孤高のく・・・む」
振り返りざまに、俺は先ほどの奴だと分かり警戒態勢に入ったが遅かった。
「楓!!」
楓が捕まってしまった。
「妹ちゃんを返して欲しければ、俺と写真を撮ることだなぁ」
「お兄ちゃん」
助けてといわなくても伝わる。含みのない感情に俺は、迷わなかった。
「楓から離れ、消えろ!!!」
「何言って・・・あ、あああぁアア」
その男は壊れた人形のような動きで楓を離し、その刹那楓が俺の元までかけてくる。
俺は楓を抱きしめて、次の瞬間、その男をにらんでいた。
しかし、その男は俺の目など見る暇もなくその場から駆け出していた。
よかった。
一安心、一呼吸おいたところで、
ズキッ!! ズキズキッ!!
「ううう、ああぁぁぁぁアアアアア・・・・・・・」
うめき声をあげて俺は頭を押さえながら跪いた。
頭が痛い・・・いや、腹か・・・でもそんなことどうでも・・・・・・イタイ・・・・・・
「お、お兄ちゃん!???」
「だ、大丈夫、だ。家に、帰ろう・・・」
「で、でも・・・・・・」
「しんぱい、ない。すこし寝れば・・・なんとか、なる」
「・・・うん」
楓は俺の苦しそうな姿に涙ぐんでいて、それでも必死に耐えているようだった。
俺は楓に肩を借りて、ゆっくりと家まで帰った。
その後、ひと眠りついた俺は、次の朝まで目を覚ますことはなかった。




