プール5遊戯
ウオータスライダーの並びは朝よりかは落ち着きを見せていた。
それでも三十分という待ち時間を要されたわけだけれど。
途中からは屋根のあるところで、こういうところを見ると新しい施設なんだと思わせられた。たぶん、熱中症対策とか女性に優しい日焼け防止などなどの、毎日人が並ぶであろうところには並ぶ場所に日よけの屋根が完備されている。
よくよく見ると水をミストにして噴出するスプリンクラーもついているが、タイマー式なのか、常に出続けているわけではないようだ。
「今日も日差し強いよね。夏だね~」
あたりを見回していた俺にそんなことを話しかけてい来る。
「暑くなるのは速いからね・・・」
「こうなるとお肌のケアも大変だよね」
「・・・そう、だね」
残念ながら初めての夏なので、その苦労はわからないなどとは言えず、仕方ないので相槌を打つ。
あまり共感を得られなかったあかねは、不満そうに、
「瑞樹ちゃんは肌ももちもちでうらやましいよ」
恨めしそうに俺の二の腕やお腹周りを見ながら言うあかねは続けて、
「そういうぜい肉でも太ってるってわからない付き方は反則じゃないかな・・・」
「ごめん、その違いはよくわからないよ・・・」
「なんだと~」
たぶんスタイルがいいという表現だと思うけれど、いまいちあかねと自分との差が分からなかった。あかねも太っているわけではないと思うのだけれど・・・・・・・・・
そんなこんなで三十分話をしながら待った俺たちにやっと順番が回ってきた。
途中階段の休憩場所のような平坦になった場所で待ったが、どうやら階段の段差部分には並ばせないようにしているみたいだ。
だからか途中からは進みを早く感じた。
「それではこのボードの上に乗ってください」
そう案内されたボードには前に持ち手がついていて、後ろには何もない。
「前の方はこの持ち手につかまっていただき後ろの方は前の方の身体に密着して腕を前の人のお腹部分に回して乗っていただきます」
「じゃあ、私前に乗りたい」
あかねがそう言ったので、俺は後ろだ。
係の人の案内の通りに身体をあかねと密着させていく。腕はお腹部分に、足は前に開いて、あかねの足にくっつけるように出す。
「準備は大丈夫ですか?」
「はい」
俺たちは二人そろって返事をする。
「それではよい旅路を」
そう言って係の人はボードを押し出した。
そうして流れ出したボードはすぐにトンネルに突入し、急転直下の要領で落ちていく。
あかねはキャーと騒いでいたが俺にはそんな余裕はなかった。
途中よくわからないが幾度のカーブに揺られ、どんな仕掛けかわからないが何度もボードが跳ね、そしてまた落ちていく。
スピードを落とさない工夫なのだろうけれど、止まることを知らないそのスピードでそのままゴールにたどり着いた俺たちはボードが水の上を走るさまを最後に見て沈んでいった。
沈んでようやくゴールを実感した俺は勢いよく水面に顔を出し、あかねとボードを回収して、返却口にボードを返し、ちょっと休憩と近くの休めそうな場所に腰をおろした。
「楽しかったね」
「・・・いやいや、ちょっと怖かったよ」
「私は楽しかったけどな~」
ずいぶんとお気に入りになったみたいであかねは目を輝かせながら言う。
「私にはまだレベルが高すぎたみたい」
「なにそれ~」
笑いつつあかねは、
「じゃあ次は流れるプール行こうか」
「うん」
俺たちそのまま流れるプールの入口へと向かった。
入り口につくと、レンタルできる浮き輪が並んでいる。料金は取られないみたいなので、浮き輪を一つ借りていくことにした。
「浮き輪なんて必要?」
「何もしなくても流れていくわけなんだからぷかぷか浮いていたいじゃん」
「そんなものかな~・・・」
あかねは泳いでいる方が好きなのか、俺の気持ちをあまり理解していないみたいだったけれど、それでも俺と同じように浮き輪を借りていく。
いざ出陣とばかりに流れるプールに浸かり、浮き輪に乗って流れていく。
それをみたあかねは焦っているようで、
「ねえ瑞樹ちゃん?」
「何?」
「そういうサービスはこういうところではやらなくていいと思うの・・・やるなら私だけの目の前でね。なんていうか・・・・・・・破廉恥」
「??・・・・!?」
初めはあかねが何を言っているのかわからなかったけれど、改めて客観的に自分の姿を見つめ直してようやく理解することができた。
なんというか、破廉恥でした。
腰とお尻が沈み、腕は浮き輪に乗せていることで身体が丸まって胸を強調するみたくなっているし、足も浮き輪から上に出していたからいくら閉じていてもと言った感じ。
醜態を晒していたことを思うとなんだか身体が無性に熱くなって、水の中でよかったと思った。
それから一周する間は浮き輪を身体にはめて流れた。
一周し終わると一度上がって浮き輪を変えることにした。
運よくというか、あまりないクジラ型の浮き輪があったからそれを借りてあかねと一緒に乗ることに。
今度は上級者コースと看板が立った方に進み、
「うわ~~~」
「キャ~~~」
と波に揺られ、悲鳴を上げながら、何とか落ちなように踏ん張り、クジラが跳ねるように浮き輪が跳ね、それに乗った俺たちにもその衝撃が伝わり、何度もそのクジラごとひっくり返り、一周を終えて、二人で
「疲れたね」
と共感しながらプールを後にした。
それからもう一度プールに入る気にはなれず、今日は帰ることになった。
シャワールームで身体を洗い流し、髪をざっと乾かし、更衣室で着替えを済ませて帰路につく。
「今日は楽しかった」
「そう。じゃあまた来ようね」
あかねは嬉しそうに話す。
俺はすでにちょっと疲れていて、あまり内容は覚えていないのだけれど。
その背後に俺たちはのことを見つめる影。
こんな場所には似つかわしくない、きっちりとしたスーツを着込み、帽子をかぶった男。
その男が俺たちを見つめて、
「あの娘ですか・・・・・・なかなかに手強そうで困ったものですね~」
そんなことを言っていることなど俺たちは知らない。
そして、
「先にこっちを片付けますか・・・はぁ~~」
そう言って施設の方へ去っていった。




