プール2着脱
すでにチケットを持っていた俺たちはチケット売り場を素通りし、入館ゲートへと向かった。
チケット売り場にはすでに三人体制で並ばせる列管理の職員の姿があり、列の方も着々と伸びていっていた。
入館ゲートはというと、こちらにも行先に沿った列形成がされていて、俺たちはプール方面と書かれた列に並んだ。
開館までにはまだ少し時間がある。
「ちょっと早かったかな」
「この感じだとちょうどいいくらいじゃない」
俺は素直な感想を言った。
「ここで時間かけるくらいなら早く来た方がいいじゃん」
「だよね」
家を出る時は正直早いと思っていたけれども、これなら何の問題もなかった。むしろ、侮っていたと言わざるを得ない。
「まもなく入館開始となります。お子様、お連れ様とはぐれたりやお荷物のお忘れなどがありませんよう、周りに十分気を付けてお進みください」
というアナウンスが二回ほど流れて、まもなく入場が始まった。
時間は十分ほど早いがすぐに行先につくわけでもないらしいから、そのための時間配分だろう。
先頭に行先の書かれた看板を持った人が立って先導する。
俺たちは人波に流されぬよう気を付けた。
「手を繋いでおけばはぐれないよね?」
急に手を繋がれた俺はドキッとしてしまったけれど、やった本人のあかねはそんなそぶりはない。
けど、なんだか手が温かいような気がした。
自分の手かもしれないけれど・・・・・・・・・
途中で屋外、屋内と行先が分かれるところがあったが、俺たちは屋外の方に進んだ。
手前の廊下を折れた先に男子の更衣室、奥が女性だ。
なんだか、ちょっと、いたたまれない。
本当に俺はこっちに入っていいのだろうか・・・・・・
学校ではどうしていたのかと言われると、空き教室で済ませておりました。まあ、授業終りの着替えはみんな遅いから、いち早く行けば何とかなっていたし、そんなことにはなっていなかったんだけど。
そう、そんなことには・・・・・・
・・・・・・・マンガでみた景色が今目の前に!!!
「ど、どうしたの?瑞樹ちゃん今凄い顔してたけど」
「あ、ううん・・・・・・なんでも・・・・・・・」
ヤバい。理性が持たないところだった。
ありがとう。あかね・・・俺は心の中で礼を言った。
ところで、心を乱すわけにはいかない俺だけれども、この状況では無理が過ぎるのではないだろうか。
「着替えないの?」
「えっ、・・・あ、着替えるよ」
あかねが明らかに不審がっている。
どうにか誤解を解かなければ、と考えて思いつく。誤解とは、そもそもどういう誤解なのだろうか。
問題をはき違えては解くことはできない。
・・・・・・・・・・とりあえず着替え始めよう。
俺は持ってきた荷物の中から先日買った水着を取り出し、目の前のロッカーを開けて、脱いだ服を軽く畳み下着を上に置いて、水着にサクサク着替えていく。
後は髪を軽く持ち上げてまとめて、完成だ。
うん、全神経を着替えに集中させていたから何も見ていないぞ。
そう、俺はあかねがピンクの下着を履いていたことなんて知らない。知らないからね~~~~
「ねえ、瑞樹ちゃん?」
「ん・・・・・・何!?」
「周り気にしすぎじゃない?」
「そ、そうかな~」
「そうでしょ。私の下着の色もしっかり確認してたし・・・」
じとっとガン見されて俺は目を逸らした。
「じゃあ、問題です。私の下着は何色でしょう?」
「そ、そんなの答えられるわけ・・・・・・」
「じゃ、ピント。四択ね。黒だと思う? それとも反対に白かな・・・はたまたピンク? 過激に赤とかかな? ねえ、どれだと思う?」
言われた色をそれぞれあかねと合わせて、赤面していく俺。それを楽しむかのように耳元でささやくあかね。
もう、本当は色なんてどうでもいいんじゃないかと思えてきた。
「~~~~~~~~~し、知らないよ・・・・・・・」
「もう! 知ってるでしょ」
耳元から離れてふくれっ面になったあかねは、
「知ってるのに知らないふりをする方が立ち悪いと思うな」
そう言って、もう一度聞いてくるので俺も仕方なく、小さな声で答えを言う。
「ぴ、ピンク」
「なんだ、やっぱり知っているじゃない。それじゃあ、隠そうとした瑞樹ちゃんには罰として、今日のお助け言葉はピンクね。私がそう言ったらしっかり助けてよね」
「・・・・・・・? うん」
どういうことかよくわからないけれど、助ければいいのか・・・・・・
俺はこの時軽い冗談、もとい、軽いパシリ程度のお使いを任されるようなことだと思っていた。
まさか、もっと大変だなんて考えてもいなかった。まあ、本当、考えが足りていなかっただけなんだけれど・・・・・・・・・




