第二フェーズ 後編
さて、この状況は一体・・・・・・・
俺の意識が現実へと戻ってきたら、何がどうなったのか輪花さんと桜田が膝をついていた。
「もう終わりですか? あら、目覚めたのですね、我が娘」
「これはどういう・・・」
「私があなたの異変に気付き、今がチャンスと手を伸ばしたらそこの二人が阻んできたので、少し遊んであげただけですよ」
「僕としたことが、用意不足だったかな」
桜田は元気のない笑みを見せつつ立ち上がる。
「桜田、まだなのか?」
「まだ時間ではないんですよ。すみません」
「ちっ」
輪花さんはいら立ちのあまり舌打ち。普段は猫を被っていたのかな・・・・・・
「まあ、何はともあれ、決着はついています。さあ、我が娘よ、こちらへ」
「いやだ。私はリリスとは一緒に行けない」
俺はまっすぐにリリスを見つめながら言う。
「何を言っているのです。あなたに拒否権など」
「ある!」
「瑞樹ちゃん・・・」
心配そうに見つめる桜田。きっと桜田にはこの作戦はないのだろう。あったらこいつのことだから先に言っているはずだもの・・・・・・
「私はあなたの知っている娘じゃない。私はここで生き、ここで暮らす平凡な高校生、谷崎瑞樹だ」
「たとえあなたがどれほどそう言ったところで、私には関係のないこと」
「そう。リリス、あなたには関係ない。ただ、あなたに伝えておきたいことがある」
「それは何ですか?」
「私はすでにリリンと和解している。リリンはあなたとは一緒に行けないと言っていますよ」
「!!!」
リリスは驚きの表情を浮かべている。
どうやらリリンの予想は当たっていたようだ。
数秒の沈黙の後、リリスは口を開いた。
「・・・ふ、ふざけるな!リリンが、我が娘が私に姿を見せないで、そんなことを言うはずがない。お前の言っていることはでたらめだ」
言いながらにして、リリスは杖をこちらに向けて空気弾を放つ。
とはいえ、それが空気弾だと分かったのは、それを防いだ後のことだった。
防いだのはもちろん桜田。
「危なかったね。瑞樹ちゃん」
「は、はは、・・・ありがとう・・・」
「私は怒った。もう手加減の必要もない」
リリスは左右に杖をかざした。その後、左右上下に切り裂くように動かし、何やら呪文を唱えているようだ。
「・・・! しまった」
桜田が声をあげると同時に地面に貼ってあったお札が破れて空中を舞う。
「手遅れですよ」
俺の着ていると言えるほど布地のない服にさらに追い打ちをかけるように切り傷が無数に入る。
「これはかまいたち!?」
「さあ、次行きますよ」
「瑞樹ちゃんがどうなってもいいっていうのか・・・」
「ちょ、桜田。それって」
自分は平気みたいな言い方だけど・・・・・・・・
いや、桜田は平気だろうけどさ・・・・・・・
「これは防がないと皮膚も切れますよ!」
・・・・・・それはちょっといやなんだよね。
・・・・・・ギィィ~~~~ン
部屋の中に重い重低音の音が響いた。
「これは、魔力障壁!?」
・・・・・・リリン!?
俺は意識の中で会話する。
・・・・・・いや~、怒るとは思っていたけれどここまでとは。ママってば、怖い怖い。
桜田は今の状況をみて大丈夫そうだと判断したのか、リリスの方を向きながら立ち上がった。
リリスの横では輪花さんが動きを視つつ狙いを定めている。
しかし、輪花さんは動けない。簡単に言って相性が悪いからだ。
「リリス、君はわかっているのかい?」
「何をだ」
「ここで瑞樹ちゃんを連れて行ったとして、あちら側の因果をどう受け止めるというんだ。まあ、大方想像はつくけれど、それは今のままではうまくいかないよ」
「ふん、知れたことだ・・・おき」
「置き換えるというのはうまくいかないんだ」
桜田はリリスの言葉を奪うように言った。
「それにはリリンちゃん、だっけ? その娘の協力が必要不可欠なはずだ。その協力を得られない今、どうやろうっていうんだ。もうここは引き返すのが得策っていうものじゃないのかな」
「私が自ら引くなど・・・」
「あなたが言った通り、あの時決着はついていたんだ。もうあきらめろ」
それでもリリスは杖を振りかざす。
その動作を見て、桜田はやれやれと言った感じで、
「仕方がない。時刻だ」
そう言って聖杯に手を伸ばし、桜田が触れた瞬間、聖杯は姿を消した。
姿がなくなった聖杯はいつの間にか、リリスの背後にあり、どういうわけか聖杯は門に吸い込まれるようにあちら側へと消えていった。
聖杯があちら側へと姿を消すのと同時に、またあの重低音の音が鳴り響いた。
「貴様!? おのれ~・・・・・・・この思い、必ず晴らしてやる!!」
「はは、それは勘弁願いたいね」
ものすごい剣幕とともにリリスは門へと帰っていった。
「どうして聖杯があんなところに動いたんだよ」
「それは、”口寄せの札”というものを使ってみました~」
そう言って、桜田は丸の中に門と書かれた札を俺に見せた。
「これは対象物を札を張った場所へと移動させるものなんだけど、一回使うとなくなっちゃう、ちょっと高価な札なんだよね」
「じゃあ、何で聖杯は門に吸い込まれたんだ?」
「それはリリス自身が放った魔法の反動さ。あの魔法は前に飛ばすために後ろに力が働いていたからね」
「へえ~~」
あの最中によくもそこまでの分析ができるものだと俺は素直に感心した。
「桜田、それで時間って何だったんだよ」
「この座標が特異点でいられる時間かな。ちょっと時空がゆがみ始めていたから、そろそろ限界だろうと手を打たせてもらったよ」
「それで、これでおわったのでしょうか?」
輪花さんのその問いには誰も答えられなかった。
この章ももうすぐ完結です。今回の章はいかがだったでしょうか?
よろしければ感想を送ってくださるとうれしいです!!( ;∀;)




