あたふた
今回はお兄ちゃんが倒れてしまったので代わりに私が主役です。by楓
前回からの続き。
お兄ちゃんが倒れてあたふたしていた私はお母さんに言われるままに、二人でお兄ちゃんの部屋まで運びベッドに寝かせることになりました。
汗がひどかったので、服を脱がせ温かいタオルでふき取り寝間着に着替えさせて、タオルで熱を冷ますように額にのせ、テーブルに戻ってきたところからの話です。
私はどうしても落ち着くことができずお母さんにあれがどういうものなのか訪ねずにはいられませんでした。
「お母さん、あれって危険な物なの?」
「今の状況を考えたらわからないとしか言えないわ」
「わからないものを持ってきたの?」
お母さんは首を横に振り、
「一通りの研究、解析は済ませていたの。それでは結局何のかはわからなかったけれど、危険物ではないとされていたわ。当然爆発なんてしないし、毒性もない」
私はそれでも納得できなかった。
お母さんのことは信用しているし信頼もしている。
でも、すでにことは起こっていた。
「でもあれはそういう解析も意味をなさないような出来事だった。なら私がやってきたことはただの見当違い。楓が悲しい思いをしたのも、瑞樹が倒れたのも私のせいだ」
「お母さんがそこまで思いつめることないよ」
私はお母さんを励ますことしかできない。
一言前とは言っていることが真逆に感じるかもしれないけれど、それは私が取り乱している理由とは違うからだろう。
それに、遺跡で発見したという話の下りで気づくべきだった。
四月からお兄ちゃんに起きている異変を考えれば、これ以上ないほどに関係性が高いことは察しが付く。
お兄ちゃんもバカじゃないし、気づいていたのかもしれないけれど、最近の言動からしたら私が思うに危険に身を置くことに慣れてきていたのかもしれない。いや、どうにかなるという感覚でもあったのかもと、そう思う。
「これが何なのかは推測は立ったけど、たぶんもう用済みね。それにならあれは・・・・・・でも誰が・・・・」
「お母さん?」
「あ、いえ、怪奇的現象に出くわして少し考えに耽っていただけ。私たちの仕事ではたまにあることなんだけど、今回は異常さが高いわ」
「じゃあ、お兄ちゃんが危険な状態ってこと?」
「見たところ発熱と異常な発汗は見られるけど、死ぬほどじゃないから大丈夫。でも長く続くようなら心配ね」
「そ、そんな」
私は愕然とした。
そんな私を見てお母さんは少し笑って、
「お兄ちゃんのことになるとずいぶんと真剣になる楓も相変わらずね。お母さんとしてはうれしい限りだけど、自分の心配も少しはしてね」
「それってどういうこと?」
「お兄ちゃんは今、言っちゃうと異常な状態だわ。その隣に身を置く楓にも異常が付いている。深淵を見るものは深淵に見られているなんて言うけれど、それと一緒ね」
「少し距離を置けって?」
少しむっとしたように口を開いた私にお母さんはそうじゃないということを示して、
「お兄ちゃんのことばかり心配していると次悲しむの楓じゃなくてあなたの大好きなお兄ちゃんになっちゃうわよってこと」
「だ、大好きだなんて・・・・・・」
私が反応するようにわざとそこだけ強調するように言ったお母さんは、私の反応を見てにやにやしている。
「好きでしょ?」
「それはもちろん。じゃなくて、もう~」
「少し気を紛らわせた方がいいわ。今できることは私たちにはないのだから」
「そうかもだけど・・・・」
「瑞樹が起きた時に私たちが倒れていたら、仰天してもう一度倒れちゃうかもしれないしね」
「む~~~」
私はなんだかはぐらかされた気になりつつも、少し別のことを考えることにした。
でも結局何も手につかなくて、ただぼおっとしているだけだった。
「待つのは得意だと思っていたんだけどな~」
「人間である以上、やるせなさは捨てられないものよね」
そんな私の反応にお母さんはため息交じりにそんな相槌を返してくる。
どうも私はお兄ちゃんがいないとダメみたいだ。
今も昔も・・・・・・・・・・・・・・
私は少し様子を見てくると言い残し、お兄ちゃんの寝顔を覗きに行くことにした。
「悪化してなきゃいいけど」
私は恐る恐る部屋の中を覗きこみ、まだ起きていないことを確認。
ベッドの目の前まで来て再度確認。
私はそっとベッドの片隅に腰を下ろした。
「こう見ると、可愛いかも」
でも少し、苦しそうだ・・・・・・
今お兄ちゃんに何が起きているのかわからない。
だから私には何もできないけど・・・・・・・
私は額を抑えて、お兄ちゃんと自分の熱を比べてみる。
「少し治まった?」
「んん・・・・・」
とりあえず、タオルを取り換えて、その影響で冷たくなった手でお兄ちゃんの手を握った。
それにしてもこの兄、寝てるとこんなにも色っぽいのか・・・・・
すやすやと寝息を立てる口元は緩み、艶のある唇が目を引き付ける。熱があるせいか、褐色の良くなった頬元が女性的な色っぽさを増していた。
襲ってしましたいよ・・・・・・お兄ちゃん、無防備が過ぎるんだよ・・・・・・・
そう思いつつ、自分で何も付けさせなかった左胸元にそっと手を当てる。
・・・・・・やわらかい・・・・・・・・じゃなくて、ちゃんと生きてるね・・・・・・・
この状況を見れば、寝ている相手の寝込みを襲っているようにも見えるが、私は寝込みなんて襲わない。だって、寝ていたら反応を最大限に楽しむことができないから!
「ん・・・・・・っ」
・・・・・・いやいや、私は襲っているわけではない。
手の動きは止まることを知らないようだけど、断じて違うよ・・・・・・
私はこれ以上はまずいということで、一言いい残してから、
「それじゃ、お休み」
私はそっとベッドから立ち上がって、掛布団を直してから部屋を出て行った。




