お泊り会 本番
あかねの家に帰宅したのは夕方になってからのことだった。
それまで何をしていたのかは、特に何もしていないと言うのが正解だろう。
いわゆる女の子同士のショッピングをしていたのかもしれないとはいえるけれど。
成果はあった。
やはり女の子なあかねに化粧品のなんやかんやは聞くに限る。
・・・・・・俺はいったい何を勉強しているのだろうか。
これだと、戻っても癖で何かやらかしてしまいそうだと不安になってくる。
とは言っても、今はそんなの関係ないわけで、存分に楽しんでしまった・・・・・・・
あかねの家について、リビングに行くと、お母さんが夕飯の準備をしていた。
俺も手伝おうかなと思ったけれど、それはお母さんに、あかねと遊んできていいのよと言われ、阻まれてしまった。
あかねの自室に戻った俺とあかねは、とりあえず一息ついて、それから少しの間、それぞれがそれぞれのことをしていた。
あかねはスマホをいじったりしていたけれど、俺は持ち込んだ荷物の整理をしていたわけだ。
それから数分後、お風呂湧いたから入っちゃいなさいと言うお母さんの声で俺とあかねはお風呂に入ることになった。
とは言っても、一緒に入るわけにもいかないので、あかねに先を譲られた俺は案内されながら、先に入ることになった。
脱衣所には鏡の付いた化粧棚とか、洗濯機とか、お風呂場で使うものの予備とかが置いてあってこの辺りは自分の家と同じで少し落ち着く。
脱衣所で服を脱いだ俺は、洗濯機の上に出されていた籠に自分の服を畳んで入れた。
「・・・・」
「・・・・」
キョトンとした顔であかねに返された俺。
「なんでそこで見てるの?」
「タオルとか用意しようと思って」
「そ、それだけ?」
「何かご期待されてましたかな・・・てへへ」
何かを企んでいそうな顔をしているあかねに警戒心を覚えながらも俺は風呂場に入っていった。
あかねの匂い、もとい、シャンプーの匂いは、透き通るような柑橘系の匂い。自分専用のものじゃないと肌があれるとかそう言うのはなかったので、お風呂セットと言えば、というものしか持ってきていなかった俺は、普通に置いてあるシャンプー、それからリンスを借りた。
その後、自分で持ってきた洗顔クリームで顔を洗って、さっぱりしたところで湯船を確認。手を入れてみて熱すぎないのを確かめる。
そして、ゆっくりと湯船につかる。
「生き返る~~」
こう思うのはきっと日本人に生まれた性のようなものだろう。
「湯加減どう?」
「ちょうどいいよ~」
「なら、よかった」
それから数分浸かって、ゆだってきたと思ったことをきっかけに俺は身体を拭いてお風呂場のドアを開ける。
「・・・・・・・・」
「あら、もう出ちゃった」
「なんで裸!?」
「私も入ろうと思って」
「・・・・・・そっか」
これはきっとゆだっただけ・・・・・・
断じて、あかねの裸をみてしまったからなどではない・・・・・・にゃいよ~~~
「もう一回入るの?」
「あ、ううん、出るよ」
「ちぇ、そっか~」
残念そうに言うあかね。
俺と入れ替わるようにお風呂場に入ったあかねはドアを閉める前に、
「そこのタオルとドライヤー使っていいからね」
「わかった。ありがとう」
俺の返答を聞き終わったあかねはドアを閉めた。
身体の水分をしっかりとタオルでふき取り、髪でもう一度濡れないように少しばかり髪を優しく拭いていく。
こうやっていると、初めのころ、楓に雑に扱いすぎって怒られたのを思い出すものだ。
今ではもうこれに慣れてしまったけれど・・・・・・
人間の慣れるスピードって怖い・・・・・・・・
大体できたところで、下着を纏った俺は髪で濡れないようにタオルでカバーする。
今日は花柄の付いた純白の下着だ。
どれ持ってこうかなとちょっと悩んだりしたのは、あかねには秘密である。
いかなる状況にも対応できそうな下着にしたなんて言うのはもっと秘密である。
それから、ドライヤーで乾かしていく。
一か所に熱を浴びせすぎると傷んでしまうので、揺らしながら、風を通すように、じっくりじわじわ・・・・・・
「うん、私と同じ匂いだね」
「ひゃっ・・・・いつから」
いつの間にか後ろにいたあかねにすり寄られた俺は驚いて変な声を発してしまう。
「ちょっと前から」
「全然気が付かなかったよ」
「だろうね。真剣そのものだったもん」
「あはは・・・・・」
苦笑いをするしかなかった俺がそこにはいた。
その後、夕食に招かれて、あかね一家と一緒に食事をし、その後あかねの自室に戻った。
自室に戻ったあかねは自分のベッドにダイブして、
「今日も疲れたよ~」
「いつもこんな感じ?」
「そうかもね~」
と、気の抜けたようなやりとりをする。
俺もこの際だからと、全部用意しておこうと思って、
「えっと布団どこかな。私も用意しときたいんだけど」
「え~。いいよ~」
やる気を失ったあかねはダメなニートに化していた。
「いや、私寝れないじゃん」
「だから、私と一緒で良いでしょ~」
「そういうこと!?」
驚いた俺の声に驚いたあかねは、手をひらひらと振りながらこっちおいでの手招きをする。
その誘いに乗った俺は、つられるようにふらふらと近づいて行ってーーガシッといきなりあかねに掴まれた俺は、そのままベッドに倒れこんだ。
「ほら、寝れるでしょ」
「確かに、二人でも行けそうだけど、そういう問題?」
「そういう問題!」
あかねの顔を窺った俺は、今のあかねには何を言ってもダメだろうと判断を下し、後でお母さんにでも頼もうという決断に至った。
時刻は九時を回ったところ。
いつもならまだ寝ない時間なのだけれど、お母さんがいつ寝てしまうかわからないので、お手洗いに行ってくるという口実を付けて、会いに行くことにした。
一階のリビングでテレビを見ていたお母さんに、俺は申し訳なさそうに、
「あの・・・・」
「あらどうしたの」
「お布団、お貸しいただけないでしょうか」
「あかねが自分で用意するって言っていたんだけど、あの娘、用意してくれなかった?」
「いえ、自分と同じベッドでねればいいって言われちゃって・・・」
そう俺がどうしたものかと言うように言っていると、お母さんは笑い飛ばして、
「そんなの一緒に寝てあげればいいのよ。でも、一応、布団のある場所だけ教えて置くわね」
「ありがとうございます」
俺は布団の在り処を聞いて、あかねの自室へと戻っていった。
時刻は十一時。
そろそろ寝ようということで、俺もあかねのベッドにもぐりこむ。
「どうしたの。瑞樹ちゃん。今日は嫌にあきらめが早いね」
「なんだよ、あかね。もしかして恥ずかしい」
俺がわざといやらしく聞き返すと、あかねは顔を赤らめて、
「別に恥ずかしくないよ。ただ、今日はいつもと違うな~と思っただけ」
それはそうだろう。
俺でさえ、いつもと違うなと思っているもの。
だが、これも策略。あかねが寝たころを見計らって、布団の方に移動する算段だ。
俺も今日は疲れているからね、これ以上、いろいろやりたくはないし。
「私も疲れたからね。今日はもうここでいいかなって」
「へ、へえ~。そうなんだ・・・・・」
そう言ってあかねはリモコンで部屋の電気を消して、寝に入った。
あとは寝るのを待つだけだ・・・・・・・
・・・・・・・すう。・・・・・・・う・・・・・・すう。
・・・・・・・・・・・・すう・・・・・・・う。
よし、寝たかな。
俺もそろそろ移動・・・・・・・
俺が移動しようと布団をもぞもぞやっていると、それを好ましく思わなかったがのごとく、あかねが俺の動きを封じてきた。
どうやったかというと、寝返りを打ちながら、こっちに足を絡めて、俺を抱き枕か何かと勘違いしているのか、思いっきり抱きついてきたのだ。
・・・・・・・・俺、終わった!?
見動きの取れなくなった俺はそれでもどうにかしようと小さく動いてみる。
だが、俺があかねの方を向いたところで、あかねの引き寄せる力が強くなって・・・・・
柔らかいクッションがあってよかった~・・・・・・・・じゃないよ。
胸と胸当たってるって、俺のも当たってるけどそういうことじゃないって。
そんなこんなしているうちに少し苦しくなってきた俺は、半ばあかねに二重の意味でおとされるように眠りに入っていった。




