また明日
「楓、ただいま~」
「お姉ちゃん、おかえり~・・・・・・あかねさんもいたんですね」
俺に挨拶を返してくる楓はこちらを見るなり、あかねの存在を発見しすぐさま声のトーンが下がる。
そんなに警戒しなくともいいのでは・・・・・・
「楓ちゃん、単刀直入に言うけど。・・・・・・明日ここでクリスマスパーティーやってもいいかな!!」
「お姉ちゃんはオーケーしたんですか?」
「私は楓に任せるよってことにした」
「そう・・・・・・」
楓は少し考えるそぶりをし、俺たちはそれをごくりと見守る。
そして、
「別にいいですよ。一人増えたところでやることは変わらないので。それにお姉ちゃんもその方がうれしいでしょうし」
「わ、私は別に・・・・・・」
照れる俺を見てあかねはにやりと笑みを浮かべる。
何か良からぬことを思いついたようだ。
「ええ~、瑞樹ちゃんは私といれてうれしくないの~」
「そ、そんなことは・・・・・・ないけど」
「先に聞くけど、楓の前で何させようと思ってる?」
「先に言うけど、キスしたい」
なるほど。今回はそう言う運びなのか、と俺は半ばあきらめモードであかねの注文を受けることにした。
ただ、なるべく健全な範囲で。
だから俺はあかねのぽっぺたに優しくキスをした。
「うん、今日はそれで許そう」
「イチャイチャもいいけど、私に魅せつけないでよね、お、ね、え、ちゃん」
「み、魅せつけてなんて・・・・・・」
「それじゃあ、私は帰るね。またね~」
「あれ、もう?」
「用は済んだし、それに楓ちゃんご立腹みたいだから」
それはあかねのせいでは・・・・・・
その辺はどうやら俺に丸投げのようで、こうなることも想定していたのだろうな、と思うと何とも俺の先ほどの行為を取り消したくなる。
あかねからしてみれば、自分の感覚から他人からしてもらえる方がうれしいのはわかるのだけれど、時と場所は考えようよ。
「それじゃあ、あかね、気を付けて」
「うん、瑞樹ちゃんも死なないでね」
「え?」
「ううん、クリスマスパーティー楽しみにしてるから。明日ね」
そう言ってあかねは帰っていった。
あかねには何も話していないはずだけど、何かに気づいていた?
それとも桜田がまた何か手を打ったのだろうか・・・・・・
またはこれが神社の巫女としての力とでもいうべきなのか?
とはいえ、またあかねに心配をかけてしまったようだった。けれど、俺は何も返してあげることはできないけれど明日また会うことを心の中で約束しよう、とそう決めた。
それから楓と一悶着あったけれど、どうにか機嫌を治してもらえたのだった。
本当に精神的に疲れた・・・・・・
何かを深く慈しむように、そこには一人のサキュバスが立っていた。
「私はこの時を待っていたのでしょうか」
咲かないはずの花が咲いたような気持ちだった。
会えないはずの人に会えたような気持ちだった。
その人は私のことを覚えていなかったけれど、確かにそこに生きて、そこに立っていた。
未来は確約されていない。
望んだ未来が例え在ったとしても、望んだ未来を手に入れられるとは限らない。
ただ私は待っていた。
きっとこの時を待っていた。
いくつもの失敗を重ね、幾重にも思考を巡らせ、幾千もの時を過ごし、この時を待っていた。
見た目がどうとか、感情がどうとかはもはや私には考えることすら億劫になるほどの時を待っていた。
私を拒んだその人は、私の大切な人。
それは紛れもなく、私が見てきた、大切な人のやさしさだった。
咲かないはずの花は咲いたのだ。
湧かないはずの水はその堀からこぼれるほどに湧いたのだ。
私にはあなたの後ろにとても大きく、ずっしりと構えるようにそびえたつ大樹が見えるよ。
きっと春には満開の桜を咲かせることだろう。
冬に葉が落ちたとしても、何度でもつぼみをつけ、咲かせることだろう。
私の研鑽が、天才が、努力が支えている。
何度嫌われようとも、拒まれようとも、あなたが生きるという選択肢を選べたならば私は満足なのだ。
私は待っていた。
失われた未来に、与えることのできなかった才能。
これは私の奢りで、理不尽で、ただのエゴだとしても、私はあなたに生きていて欲しかった。
私は未来をあなたに掴ませてみせる。
「いえ、私はこの未来を待っていたのでしょうね。私の才能が報われるこの時を」
さて、行きますか。




