静かなる朝
「ん~~~~~~~」
気持ちのいい陽の光に照らされながら目を覚ました。
大きく伸びをして眠気を覚ます。
「ん?」
夏でもないのにとんでもない汗をかいていることにようやく気付いた俺は、ちょっと不思議に感じながらも、この何とも言えない気持ちの悪さを早く遠のけようと、足早に着替えを取り出し風呂場へと向かう。
「おはよう」
「おはよう、お兄ちゃん。今日は早いんだね~・・・・・・といけないいけない」
「??」
目覚まし通りの定時に目を覚まし、リビングへと降りてきた俺は楓に朝の挨拶をかわし、さっそくこの言われようだ。
いつもの光景が目に浮かぶ。
「ちょっと汗かいたからお風呂入ってくるね~」
「うん」
「そう言えば昨日楓と会ったっけ?」
楓は顔を横に振り、
「私が帰ってきてからはお姉ちゃんとはあってないよ。ずいぶんと疲れてたんじゃない? 夕食も食べずに眠り続けていたんだから」
「そっか・・・・・・」
そう言えば夕食を食べていなかった。
それにしても、眠っていたからだろうけれど、いつもと違うことをして抜けた空白の記憶にはちょっとした違和感を覚えざるを得ない。
お風呂場で、まずはお風呂のお湯を沸かす。
ただ、楓が入った後だからそう時間はかからないだろう。
シャワーでざっと身体を流し、石鹸で洗っていく。
十二月ともなると朝は寒い。
朝にお風呂に入ることはそう多くない俺だが、これはありかもしれない・・・・・・
「それにしても・・・」
いつもしないことをすると、いつもとは違う気持ちになったりするわけで、
「俺の女体は魅力的なのか?」
と、そんなことを鏡に映った俺の身体を見ながら思いつつ、石鹸をしっかり流していく。
そして髪もわしゃわしゃと洗っていき、リンスで整えて軽く流し、髪を少し拭きまとめて湯船に浸かる。
「はあ~~~。ん? ・・・・・・最近ここで何か・・・・・・」
こんな感じの状況で何かあったような・・・・・・
「気のせいか・・・・・・な」
それからしばらく、朝風呂を堪能してからお風呂場を後にした。
とりあえず下着だけというか下だけ履いて、髪をタオルで軽く水気をとってドライヤーで乾かす。それが終わってから着替えをすまし、洗面所からリビングへと戻った。
そこにはすでに俺の朝食が用意されていた。
【別宅 床の間】
時は少し遡り、瑞樹がサキュバスと会っていた頃のこと。
高級住宅街のとある邸宅。その床の間に寝ているのは、先の戦闘で負傷した輪花さんだ。
桜田は今、そんな輪花さんから永遠と愚痴られていた。
「桜田は知っていたのか」
「まあ、僕としては望んでいない方の結末でしたよ」
「なぜ言わなかった」
「言ったら刀、抜かなかったでしょ?」
「まあな。あれは女の身に余る業だ。多勢に無勢になりやすい私みたいな者にはありがたい業だが、その分反動も大きい。できることならあまり使いたくはない」
「でしょうね。僕もあまり使わせたくない。だけれど、今回はそちらに回せる人員がいなかった。そんな状況で切り札を使わずに終われるほどたやすくはないでしょう?」
「確かにそうだが・・・・・・一言言ってくれれば、私もこんな傷を負うこともなかった。お前は一体何を考えているんだ」
「僕の考えですか・・・・・・最前の最善ですかね」
それを聞いた輪花さんは、ひと呼吸を深く吐いてから、
「まあいいわ。それよりも私が負傷したことで、未来は絞られたのかしら?」
「無数にあった道が無数引くちょっとになっただけですよ」
「そう。ならいいわ」
「とは言っても、状況はあまり芳しくないですよ。あの方の言う通り、僕は自分の役目を全うするつもりですが・・・・・・」
「芳しくない・・・・・・か。それは後の話だろ?」
「もちろんです。瑞樹ちゃんの調整はサキュバスが接触した時点で整います。あとは使いこなせるか、だけですね。それに、あの娘を助ける方法はこれしかないですから」
「私にはあまり難しいことはわからないが、世界構築とは逆、崩壊をさせないための対策だろ。仕方ないさ。あの娘を死なせないためなんだから」
「でもやはり、魔王を倒した勇者を恐れた人間が、今度はその勇者を倒す。みたいな役は僕にはどうも、気が乗らないですよ」
「あの娘にはもう?」
「いえ、それとなく考えておくよう言いましたが、ただの女の子なのでわかっていないでしょうね。僕としては後悔のない選択を願うばかりです」
「後悔はするさ。何をしても。ただ、自分の納得のいく後悔であるべきだ」
「そうですね~」
少しの沈黙。
「では僕はこの辺で失礼しますね。お体いたわってくださいよ」
「ああ、気を付けるよ」
そして桜田は出ていった。




