未来を変えるには
某日、桜田はあの方からの依頼を引き受ける。
某所にて女の子に出会う。
某日某所、桜田環はある女の子を助けることを決めた。
それから。
現在。
桜田は女の子を救う道を模索し、考え、企て、行動し、導いてきた。
あの日、僕は一度死にかけた。
自分のミスだ。
女の子を救うため、ある箒を壊した。そこから出た魔力のリリスに殺されかけたのだった。そんな自分を助けたのは紛れもなく、その女の子だった。
その子は自分のしたことを覚えていなかったけれど・・・・・・
僕はその時のことをよく覚えている。
「桜田です」
「入りなさい」
「失礼します」
僕は固く閉ざされたふすまを開け、中で待つ女性に一礼し、部屋に入る。その際、ふすまを静かに占めることも忘れずに。
中で待ていたのは、僕たちがあの方と呼ぶ存在だ。
なぜあの方と呼ぶのかと言えば、本人にそう言われているからだ。
僕は何かと呼び出しを食らうのだけれど、それはお気に入りとかそう言うものではなく、僕の能力があの方と近しいからだろう。
僕の能力は予知夢に近いが、あの方はそのさらに上の上くらいの能力だ。
「桜田、あなたの考えは変わりませんか?」
「はい。私は助けることを目的としています」
「そうですか。それは世界に反してでもですか?」
「そうならないために、今日まで土台をつくってきました」
「そうですね。知ってますよ。ですが、まだ足りないのではないですか?」
「はい。サキュバスとの接触まではうまくいきましたが、覚醒にまでは至っておりません」
「そうですね~・・・・・・私の依頼を覚えていますか?」
「もちろんです。リリスの調査、それとできるなら排除、そう覚えております」
「なら、桜田。あなたの行為は、第二のリリスを造っているとは考えないのですか。私は同等の脅威を作り出そうとしているように感じるのですが」
「いえ、魔力を持ったただの人間ならば私と同じです。たとえ強力な魔力を有していても、使い方を間違えさせなければ問題ないと」
「ふう~・・・・・・なるほど、なるほど。でもあの子は男に戻ることを目的に頑張ってきた。そんな子があなたのしてきたことを受け入れられるかしらね~」
「わかりません。できなかったときは、自分たち、並びにあの子の魔力を使い、リリスと同じことをするほかないと思っています」
「そう。別に私はこの世界一つで済むならなくなっても、次があるのだからいいのですけれど。あなたはそうじゃないでしょう、桜田。私はあなたを連れていくことはできないのよ。だから、うまくやりなさい」
「はい。私の能力に誓って」
そして、僕は部屋を後にした。
さて、僕は次の行動に移らなければね・・・・・・
僕は自分の能力であることを知った。
それは、
『過去を変えることはできない』
という、純然たる事実。
過去を変えると未来が変わり、なんてよく言うけれど、あれも侮れない考え方だ。
実際はってやったことはないけれど、僕の過去を変えれば、今の僕の世界が無くなる。そして連鎖的に僕とその後かかわった人の世界もなくなり、結果大きな波になり、世界全体へと影響が出る。
この世は、パラレルワールドだ。
いくつにも分岐した僕と言う可能性の世界が、一秒ごとに変化しているに過ぎない。
だから、逆に言うと、未来を変えることができるのは、その可能性が存在しているからだ。
ここで、彼女に置き換えて考えてみよう。
彼女、谷崎瑞樹について。
男が女になっていることなんて、普通はありえない。
普通はないことなんだ。ならば、今の彼女は世界に反していることになるだろう。
反さない、正しい世界に戻したらっていうのは、瑞樹ちゃんの目的にたどり着くわけだけど、いろいろ代償が大きすぎる。これはできればしたくない。
なら反したままの世界に・・・・・・
そうできるよう、僕は彼女に覚悟を決めるよう言ったんだけれど、これはまた後で・・・・・・
突然男が女になることが普通の世界・・・・・・
なんだか、頭が痛くなるような世界だけれど、やることはそう多くない。なぜならその下準備は、すでにリリスがやっていたから。
世界の過去なんて、言ってしまえば記憶である。ならば、瑞樹ちゃんが男だったという記憶を消してしまえば済む話だが、これも受け入れない気もするんだよね・・・・・・
はあぁ・・・・・・・・・・・・
だから僕は、彼女のために世界を一つ、作ることにした。
そんな大それた話ではない。
この世界は突然変異体のようなものだ。
だからこそ、脆い。
その脆さを生んでいるのが、彼女の男へと戻る意志に他ならない。
この世界は分岐した世界ではないから、どうしても元の世界へと引きよせられてしまう。
つまり引き寄せる力をなくせばいいということだ。
そして、僕の次の行動はこれだ。
僕はポケットからスマホを取り出した。
「もしもし、楓ちゃん?」
「はい」
「桜田だけど・・・・・・お兄ちゃんのために今後、瑞樹ちゃんのことはお姉ちゃんと呼ぶように心がけてくれない?」
そう言うのだった。




