リリスとの通信
「と、僕の期待ばかり押し付けるのも良くないよね。それに、ここまで頑張って乗り越えてきた瑞樹ちゃんの勇姿を見てきた僕が言うんだ。きっと大丈夫だよ」
「そんなこと言われても・・・・・・相手が悪いよ~」
俺としてはまったく自身が持てない。
リリスとは、よくわからない時代の因縁があるような関係で、その娘の生まれ変わりが俺というだけ。今だからこそ、行使できる力があるけれど、それだけじゃリリスとは渡り合えないのはもうわかっている。
「とりあえず。今日はこの情報を伝えたかっただけなんだ。そう遠くない日だと思うけれど」
「・・・・・・遠くない日」
「まあ、うまくいってもいかなくても、瑞樹ちゃんが自分の選択をするときが来たんだ。だから、いろんな覚悟をしておくことだね」
「選択?」
「いずれ僕から聞くよ。それじゃあ、また」
そう言って桜田は煙に巻かれるように姿を消した。
「忍者なの!?」
そう俺は桜田がいなくなった場所に向かっていってしまった。
その後、俺は静かな通りを、きれいに輝く星空を見ながらゆっくりと帰った。
家に着いた俺は、さっそく楓にどこ行ってたのと問い詰められた。
「桜田に会いに・・・・・・」
「もうこんな遅くに行かないでよ」
「ごめん」
叢雨の一件以来、楓はそれを引きづっているみたいで、とても過保護になっていた。
「お姉ちゃんが襲われやすいのは証明されているんだから夜は危険でしょ!」
なんだかこの頃母親みたいなことを言うようになってきていた。
「襲われやすいって・・・・・・」
「私は心配して言っているの。だからお姉ちゃんは早く自分の身を守れるようになってよね」
「重々承知しております」
そしてなんだか長くなりそうだったので、俺は冷えた身体を温めようと、
「ちょっとお風呂に入ってくるね」
と、逃げるようにお風呂場へと向かった。
衣服を洗濯機に突っ込んで、お風呂場に突入だ。
シャワーの水がお湯になったことを手で確認してから身体へとかける。
「はあ・・・・・・」
そして、髪を洗ってリンスをして、身体を洗って、それから・・・・・・やっとの思いで湯船に浸かる。ただもう半年はこれを繰り返しているわけだから、いい加減慣れもした。
「温まる~~~」
気の休まる瞬間だ。
お湯につかるという文化はさほど多くないらしいけど、これをしないなんてもったいないと思えてしまう。温泉のある国に生まれてよかった・・・・・・
自宅は普通のお湯だけど。
「それにしても」
俺は頭の中でぐるぐると桜田にいわれたことを考えていた。
選択ってなんのことだろう?
「桜田からの質問待ちってことは、そう言うことなんだろうけど」
あと、覚悟もしておけってことだったけど。
戦いの・・・・・・かな?
最終決戦って感じだったし、たぶんそうだよね・・・・・・
「結局手紙で呼び出すほどだったのか?」
リリスとの戦いが近いの一言で済みそうな内容だったけど。それとも、俺が慌てないように呼び出しただけ?
サキュバスの封印か・・・・・・
そんなことできるのか。いや桜田としては倒したいと考えていそうな感じだったけど。どちらにしろ、期待の矛先はどちらに向いているのだろう、という気になる。
「うふふ。立派な体に育ったわね」
「え??」
「長い間、いえ、瑞樹ちゃんからしたら短い間だけど、その身体が壊れないか心配してたのよ」
声のする方。
お風呂場の鏡の方を見ると、そこには淫猥な表情を浮かべるリリスと思わしき女性が映っていた。
思わしきと言うのは、サキュバスになった影響なのか、羽と尻尾があり、顔はどこか高揚しているように見えた。
「なんで、鏡から!?」
「ああ、これは魔法の一種よ。あんまり気にするとキャパオーバーになっちゃうぞ」
「そ、そう・・・・・・」
魔法と言われれば、現代人曰く、何でもありは慣れている。
いやそうであって欲しくはないんだけど。こういう時は、そう言うものなんだと割り切ってしまった方がいいことは今まで経験してきた中で学んでしまった。
「居場所を調べたらお風呂場だったから、見に来ちゃったっていうのは冗談。その身体を生で見ておきたくて・・・・・・」
そんな艶めかしく言っても何も出ない、というかできないという感じで俺は、
「もしかして、私の場所、どこでもわかるの」
ちょっと心配になったことを聞いた。
「まあ、あなたに流れる魔力は私と酷似しているからね。大抵は感知できるわよ」
「じゃあ、そんなリリスは今日は何をしに?」
「言ったでしょ。身体を見に来たって。それだけよ。問題あった?」
「いや、あるよ。それだけって言われてもこっちは驚きの連続だし」
「そう」
リリスはこっちのことはあまり関係ない様子だ。
それにしても、
「そろそろ上がりたいんだけど・・・・・・」
しれず、ずいぶん長風呂になってしまっていた。さすがに熱くなって湯上りそうだ。
「ああ、いいわよ。今度、直接会いましょうね」
「え!? え、まっ・・・・・・」
俺の返事は聞かず、リリスの映っていた鏡は普通の何の変哲もない、目の前のものを映し出す鏡へと戻っていた。
よくわからないけれど、約束を取り付けられたっぽい?
俺はフリーズした頭でお風呂場から出るのだった。




