手紙での呼び出し
二週間後にはクリスマスという今日。
俺は肌寒い夜空の下、コートを羽織って外を歩いていた。
「なんでこう・・・・・・寒い日に足出してるんだろ」
俺は黒いタイツを履いているからといってスカートで出てきたことを後悔した。
「それにしても、こんな手紙で呼び出さなくたって、訪ねてくればいいのに」
そんな文句を延々言いながら歩いて行く。
そう、俺が夜空の下、こんな冷え込んできた時間に外にいるのは呼び出されたからだ。
「瑞樹ちゃんへ
最近は何事もないと知っているけれど、その後元気でやっているだろうか。ってそんなこと聞くまでもないよね。
僕はこれからちょっと痛めつけられそうな人にあわなくちゃいけないんだけれど、どうか無事を祈ってくれると嬉しい。
と、前置きはこのくらいで十分かな。
それで。
今回こんな形で手紙を送ったのは、もちろん世間話をしたいからじゃない。
あの一件で敵の出方を見ることはできたんだけれど、それで輪花さんはケガを負ってしまった。やはり今回も瑞樹ちゃんの手を借りずには、済ませられないみたいだ。
まあ、これは瑞樹ちゃん無しでは語れないことだろうと僕は思っているよ。
だから、僕はクリスマスの二週間前から、あの場所で待っている。
話がしたくなったらおいで。
PS
瑞樹ちゃんは普通と百合ならどっちを選ぶのかな?
依頼引き受け人より
「こんな手紙を送ってくるのなんて、桜田しかいないっての」
俺は大きなため息をついた。
目的地はここ。
ゲーム会社跡地。
今は取り壊されて、いろいろ資材やら木材やらが置かれているだけになっているけれど。
いろいろと因縁のありそうな場所で、俺と桜田が初めて会った場所。
「桜田~。いないの~」
「こっちこっち」
奥から声が響いた。
俺は声の聞こえた方へと歩く。
確かこの場所は・・・・・・
何もここまで再現しなくてもいい。
桜田とあった部屋があったであろう場所。
「やあ、瑞樹ちゃん。元気してた?」
「今、まさに凍えそう・・・」
「それは残念。と、まあ、要件は手紙に書いた通りなんだけど」
「えっと。私事でまた何かありそうな感じなんだよね?」
「遠からずな答えだ、それは。これは瑞樹ちゃんが招いたことだからね。だが、本来なら専門家として早急に片を付けるべきなんだけれど、相手が相手なだけにそうもいってられなくてね」
「そんなに大事なの?」
俺は桜田の表情からことの大きさを悟った。
「今回は瑞樹ちゃんも良く知っている人物。いや、リリンちゃんの方が知っているかな。その人が相手だけれど、ちょっと厄介でね」
「厄介?」
「相手が相手ってこと。まあ、魔人となった人だし、魔族を相手にすることになるのかな」
「魔族なんているんだ・・・・・・」
「ああ、そこからだよね。えっと、結論から言うと、そんなものはいないよ。ただ、あういう類のものは、伝承、伝説、物語に登場するキャラクターだ。ただそれが浸透していればいるほど、それらを模倣した、者たちはディープな存在、平たく言えば強い存在になるんだ」
「つまり、相手は強力だってことね・・・・・・」
「そう。そしてここからが僕たちの世界では昔からよくあった話なんだけど、魔に落ちるって言って魔人になる者がいた。これは瑞樹ちゃんも他人事じゃないよ。魔力を持っている者は皆、その危険性があるからね。で、今回の相手だけど、僕の見立てでは、サキュバス」
「サキュバス? あのお色気満載のサキュバス?」
「そう。キャラクターとしては強くなさそうだと思うかもしれないが、皆が知っているからこそ、存在としては強力だ。そして、ここが一番重要なんだけど、元になった人間は、リリスだ」
「リリス・・・・・・それってやっぱり私を狙っているってことだよね」
「そうだね・・・・・・。あの時、リリスを退けた全員の可能性もあるけれど、やはりその根幹に居るのは瑞樹ちゃんだろうね」
俺はその言葉を聞いて笑うしかなかった。
「ただ今回は倒す以外に、他にも方法がある。過去でも未来でもなく、現在に居るリリスの成れの果てサキュバスならば封印というのも一つの手になる」
「やっぱり倒すことはできないんだね・・・」
「倒したいなら、専門家の精鋭を百人で足りるかってところだね。もちろんそんなことはできないんだけれど。ただ、やはり同じものを受け継いだ瑞樹ちゃんならあるいは・・・・・・」
「そんな期待の眼差しで見ないで!」
「期待はしているさ。切り札は、最後に取っておくものだろう。いや、やっと出来上がったと言うべきかもしれないがね。まあ、僕は瑞樹ちゃんを信じているから」
「うう~~・・・・・・」
唸る俺の肩を桜田は優しくたたいた。
私の技量が足りないのは承知の上ですが、最後までお付き合いいただければと思います。
最高の形なんて知らない。考えてもわからない。私はできることをするだけ!




