【龍王】と龍神の特訓
――――《獄地》第一層・火山環境
「お兄様、私達は何をしたらいいんでしょうか?」
火山地帯であるにも関わらず余裕な様子を見せるシルニア含む【龍王】の面々。その中で最もヴァイスと距離が近いと自負しているシルニアが代表して質問した。
白神龍王ことヴァイスはそれを聞いて、一瞬だけ考える素振りを見せると、納得したのか小さく頷いて言った。
「貴様等には龍の力を磨いてもらう」
「龍の力を磨く......兄、どういう事?」
当然と言えば当然な疑問を口にしたセラに、ヴァイスは分かりやすいよう丁寧に答えた。
「簡潔に言えば、人の身で龍の力を使え。と言う事だ。見ていろ」
そう言って、ヴァイスは純白の光に包まれた。それは純白の卵の様にも見える。まるで今まさに生まれる様なそれは、神秘性と神聖さ、そして儚さを併せ持ったそれは、何も感じ取る事が出来ない。
力も、気配も、魔力も、何も感知できない。
唯目の前にあると言う事だけが認識できる。本当にそれだけ。一周どころか五周程して不気味だと感じるレベルだ。
ふと、純白の光に罅が入った。それは一瞬で全体に広がり、一拍置いて割れ、光の粒子となって中央に集まる。
光の粒子が集まると、それは人の形を取っていく。その足先は地面から十センチ程浮いている。
そして、遂に光が霧散した後に居たは龍だった。
但し、当然の事だが唯の龍ではない。純白の龍は人型を取っていた。身長は二メートル程。完全に浮いているが、二足歩行であり鋭い爪を持った手も指が五本ついている。
尻尾と翼も、当然龍の顔や牙もある。神々しさと猛々しさを兼ね備えた姿のヴァイスは、浮いたままシルニア達を見下ろし、微動だにしない。
対してシルニア達は、此方もまた微動だにしていなかった。口をポカンと開けっ放しにし、目を見開いたまま動かない......死んでないだろうな? と聞きたい程だが、当然死んでいる訳では無い。単に見入っているだけだ。
美形集団が阿保面をしながら人型の龍と見つめ合っている様は、傍から見れば中々にシュールな光景だ。此処はヴァイスが居るから何とか『シュールだな......』とか言われない様になっている。
『何を呆けている貴様等』
シルニア達が阿保面を晒していると、突如[念話]の様に、いや、更に深い心の中に直接ヴァイスの声が聴こえた。
『む、すまん。少々調整を間違えた様だ。これでどうだ?』
その確認の声は心の中ではなく、空間そのものに響く様に聴こえた。
「あ、あの、お兄様......?」
「に、兄......」
双子のセラとシルニアはヴァイスから何かを感じ取ったのか、困惑に満ちた声を出した。それが良く分からない残りの【龍王】は首を傾げた。が、次の瞬間、皆仲良く凍りつく事になる。
『まさか我を越えたいと想うとはな。龍としての本能では仕方ないとも言えるが、撤回はさせん。越えたいと想ったからには徹底的にやらせてもらうぞ。せめて、人の状態でブレスは放てるようにならねばな』
未だ微動だにしていない龍の顔に、ニヤリと笑みが浮かんだと幻視してしまう様な声音で言うと、漸く動き出した。
『我は手加減が巧くないのでな。精々死なぬように頑張るがよい』
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――――《獄地》第一層・凍土環境
「はぁ、はぁ、はぁ......」
「ほら、ヴェルデ。まだ来ますので気を抜かないでください」
幾百幾千の魔物に囲まれ、息も絶え絶え、外見もボロボロなヴェルデに再び容赦無く魔物達が襲い掛かる。
それをしている張本人、森霊神王のアニマはヴェルデの影に同化しながら優しく声を掛けていた。
「はい。一時休憩です」
アニマはそう言いながら、その場に居た魔物の一切合切を影、と言うよりも闇に引き擦り込むとズタボロのヴェルデの前に姿を現した。
「大丈夫ですか? ヴェルデ。レベルを上げたいと言う貴方の要望に答えてこうしていますが、あまり無茶をし過ぎても意味は無いですよ?」
「いや......我はもっと強くならねばならない......」
「私の強さは人としての強さはありませんよ?」
噛み合わない会話が途切れ、奇妙な沈黙が空間を支配する。アニマの張った結界のおかげで吹雪は無いので、雪から伝わる冷たさと結界の外の吹雪と分厚い雪雲が此処が何処かを明確に認識させてくれる。
何故殆どの生物が死滅するこの場所に居るのか、それどころか、何故アニマ達はそれぞれの得意な環境に居ないのか等、ヴェルデには分からない事だらけだ。
当の本人であるアニマはヴェルデの疑問に気付いていて気付かない振りをしているが。
微妙な空気のまま五分程が過ぎた時、ヴェルデが再び魔物を呼ぶようにアニマに頼んだ。
「......分かりました。死なないよう、頑張ってください」
アニマはそう言いながら結界を解除し、ヴェルデの影と同化した。
それと同時、ヴェルデの体は吹雪に包まれ、四方八方からあらゆる魔物の咆哮が響き渡る。
前後左右に上下、あらゆる場所から幾百幾千の魔物が襲い掛かってくる。
その特訓の休憩は極僅か。そんな高難易度な特訓を、何度も何度も繰り返す。
流石は龍の神だろう。その成長速度は速い。アニマもそれに合わせて魔物を強化して召喚するのであまり実感は沸かないだろうが。
そうして、アニマ達に鍛えられていく面々。ネオが関わった以上、その運命は何処に向かうかの予測は難しい。無限とも言える運命の分かれ道を、ネオは全て確認と予測を繰り返しながら把握していく。
そんなネオに鍛えられる面々がどうなるか、文字通りネオのみぞ知る事である。




