傍若無人.........?
鍾乳洞。
端的に言ったらそれだよね。うん。
純粋な自然魔力の塊が高密度で収束し、固形化する事で水色の半透明なクリスタルの様なモノが出来上がる。
この洞窟、《獄地》の第三層にして最下層のこの場所は、純魔力結晶に照らされて淡い光を放っている。
だけだったらまあ、ほら、、辛うじて普通の鍾乳洞って言えるよね? 言えない? そう?
まあいいや。
この鍾乳洞の中心には二つの祭壇があって、それぞれに魔法陣が置かれている。
祭壇には特徴があって、俺から見て右側が黒色で禍々しく。左側が白くて神々しい。
俺が神々しいなんて言っても説得力無いと思うけど。あれ? 情報隠蔽してるから神々しくもなんともないよね。
と、まあ、御巫山戯はここまでにしておいて。
それぞれの名前は『精霊の祭壇』と『悪魔の祭壇』。その名を冠する種族と契約する為の場所。
俺がこの場所に来た理由は単純明快。
異世界組を契約させるため。
ただその一点のみ。
ただ、問題があるとすれば、彼方さんの状態。
霊界と魔界へ手を出されてたらどうしようも無い。
『彼奴』なら[創世終世完解]を隠蔽する事も出来るだろうから。
という訳で、霊界と魔界の丁度狭間の空間、冥界へ行こう。
基本的に自由奔放な精霊王と悪魔王でも、流石に向こうに行けば集まるくらいはするでしょ。
さて、純粋に創始終焉神王として切り出された俺が、直々に出向くから準備すると良いよ。
まあ尤も、思念すら飛ばしてないから無理だろうけど。
......[瞬間移動]
――――――――――
視界が切り替わって、場所は巨大な神殿の内部。
黒と白の混濁したその神殿には、幾十にも結界が重ね掛けしてある。
まあ、俺にとって結界なんて、有ってない様なモノだしね。
当然、結界は何も反応を示していない。
僅かに、結界が感知できるギリギリまで魔力を放出する。
うん。面倒だね。
それは良いとして、俺は神殿の中を歩く。
当てもなく歩いても良いんだけど、それだと効率が悪いからね。
目的地に向かって歩きながら、放出する魔力を波の様に動かす。
感知できるギリギリの状態から感知出来ない状態へと、波長が変化する様なイメージでね。
この神殿、何も無いんだけど。
歩いても何も見当たらないし、当然なんだけど。
あ~あ。無駄に広いから面倒臭い。
だからって[瞬間移動]する気も無いし。
取り敢えず、音も無く歩く。歩き続ける。
――歩く。歩く。歩く。歩く。歩く。歩く。歩く。歩く。歩く。歩く。
「......長い」
うん。もういいや。
殺風景過ぎて飽きたし。
なにより長い。
という訳で、走る。
当然、抑えてね?
振動を無くして走ってるから周囲に被害は出ない。
だけど、長過ぎない? 抑えているって言っても結構な速度だよ?
もう五秒も走ったんだよ? それで四分の三を走破って。
一応、音と同じ速度で走ったんだけどなぁ。
結局、目指してた入り口に着く頃には二秒経過してた。
合計七秒。
約二千三百八十メートル走った事になるね。
「......だから、長い」
まあいいや。
目の前の扉に手を当てたら、内側に開いて行った。
明らかに設計ミスだと思うけど、まあいいや。
因みに、グランドスライドドアと呼ばれるモノだけど、細かい事はいいよね。
中に居たのは精霊と悪魔の頂点の方。
片方が金髪金眼、身長百四十センチ程の精霊神。
片方が銀髪銀眼、身長百八十センチ程の悪魔神。
それぞれの前には、守る様な布陣で五人ずつ、悪魔・帝級と精霊・帝級が立っていた。
「この場所に、何の用ですか?」
無駄に時間を使うのが惜しくて、早速質問してくる精霊神。
「用が無かったら、来たら駄目?」
う~ん。アザトイ。我ながらアザトイ。
「そんな演技には騙されません! 本性を見せないさい!」
面白くないなぁ。
それにしても、悪魔神の方は冷静だね。
ずっと俺の隙を伺っている。
まあいいや。
「じゃあ、要件を言うけど、拒否拒絶却下異論反論その他諸々は認めないから、その辺ヨロシクね。先ず一つ、この神殿には俺が結界を張り直す。次に二つ、この後、大体二日以内に精霊と悪魔のどっちかと契約しようとする奴等が約二十人来るから、対応宜しくね。で、三つ、結界張るから早く神殿から出て欲しいかな」
「わたくし共を甘く見ない事ですね」
俺が言い終わった瞬間に悪魔神の方がナイフを投げて来た。
失礼な。
俺は右腕を上げると同時に手の中に召喚したソレを飛翔してくるナイフに向ける。
パシュッ!!
そんな気の抜けた音と共にナイフが消滅する。
精霊神と悪魔神は兎も角、帝級の精霊と悪魔がポカンとした表情で見つめているのは、俺の右手に握られた武器。
銃だ。
黄昏色をした拳銃型のソレにモデルは無い。
完全にオリジナルの形状をしたこの銃の銘は〈末焉之黄昏〉。
本来ならもう一丁の銃と共に使う、創始終焉神王用の武器。
「......やめた方が身の為だと思うけど?」
「御冗談を」
「私共全員で掛かれば、貴方を倒す事も出来ましょう?」
戦闘態勢を取る悪魔神と精霊神に注意したら、何か言われた。
戦うのめんど......じゃなくて、戦うと彼方さんが大変な事になりそうだから、もう一度同じ台詞を言う。
今度は隠蔽していた情報を開示して。
「......やめた方が身の為だと思うけど?」
俺が情報を開示した瞬間に、帝級の悪魔と精霊は無意識に跪いた。
精霊神と悪魔神はその端正な顔で阿保面を晒していた。
因みに、俺の左手には既に別の銃が握られている。
暁色色のその銃は〈末焉之黄昏〉とも違った造りをしている。
銘は〈創源之黎明〉。
完全戦闘が出来る状態の俺を少しの間見ていた精霊神と悪魔神は、同時に跪き、これまた同時に言葉を放った。
「「......申し訳ありませんでした」」
その言葉を聞いて、俺は銃を片付けて隠蔽する。
ホッとした様に顔を上げる彼方さん。
うん。一件落着だね。
此処では。




