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男子の挑戦

 あの後ヴェルデを回復させ全員で晩飯を食った。


 因みに、俺のあの森霊神王に分かれたやつは誤魔化しといた。


 どうやってか? 『自分の手札を態々(わざわざ)教える命知らずは唯の阿保だ』みたいな事を言ったら引き下がった。


 まあ、伊達に勇者や戦闘してないからね。うん。


 で、今は晩飯を食べ終え全員で談笑している。


 和食だったのは気にしたらダメなんだろうね。


 米が美味かった。


「そろそろ風呂入るか」

「そうだな」

「よっしゃ! 行こうぜ!」

「じゃあ、私達も行こう?」

「そうね。行きましょう」


 一人が言った言葉に反応して皆口々に風呂へ入ると言い始めた。


 風呂ねぇ、巫山戯(ふざけ)て造った奴は有るけど、あれそこまで何回も入ろうと思わないんだよね。


 俺自身風呂入らなくても汚れるどころか雑菌細菌その他諸々は、消えるからね。便利。


「私達も一緒に入ります」

「ん。私達も、入る」


 セラとシルニアも入るらしい。ヴェルデは入らないらしいけど。


 あ、この屋敷の風呂場って面白い造りしてて、T字型で左下が男湯、右下が女湯、上がヴェルデが入る風呂なんだよ。


 で、この三カ所を隔てる壁は全て天井から十センチは離れてるんだよね。


 つまりはそう言う事。


「あ! お兄様も一緒に入りましょう!」

(にい)も、一緒に入る」


 その瞬間、風呂への準備をしていた男子、女子の動きが止まった。


 爆弾発言は控えさせようかな? いや、この方が純粋に楽しいからいいか。


「一緒に入る事は別にいいんだけど、シエリアとセラと風呂に入る女子達は俺が男だった時の姿が分かるから抵抗あるだろうし、だからと言って男子達と入るわけにもいかないから、二人は女子達と入ってきたら?」


 セラとシルニアは不満そうな顔をしているけど、何も言って来ないし納得はしてるからいいか。


「ふむ。では我の風呂場を使うとよいのではないか?」

「じゃあ、俺はそっちで入るから、今日くらい女子達と入って来い」


 セラとシルニアが何か言う前に言った。


 なんか益々(ますます)不満顔になったけど知らない。


 女子は少し安堵してるし、男子は若干ガッカリしてる。


 俺が男子と入ったらどうなるのかは少し気になるけど、まあ、視ないよう考えないようにしとこう。


 そんな訳で俺達は風呂へ向かった。


 途中で別れて、俺は一人で脱衣所に入り装備を外す。


 っと、そう言えば、[転変]。


 俺が念じた瞬間、俺の装備全てが消えた。代わりに、光の珠が空中に現れ俺の体に溶ける様に消えた。


 よし。因みに、[転変]は[変質]の上位スキル的なやつだ。


 俺は風呂に入り、湯船にお湯を注ぎ湯気を発生させた。


 雰囲気って大事だからそう言う事で。


 俺は二カ所から聞こえてくる声を聞きながら体を洗い始めた。




――――――――――




 此処は男湯。凱斗(かいと)を筆頭とした異世界の男子達が腰にタオルを巻いて入っている。因みに、ルイは此処にはいない。即ち、欲望を抑える者がいない。それが何を引き起こすか。


「いいか。気付かれない様にしろよ」

「分かってるよ」

「良し、こっちはいいぞ」


 男子達が何をしているのかと言うと、半分は上から女湯の方を覗こうとし、もう半分は気付かれない様に壁に穴を開けている。壁に穴を開ける役目の者は少し工夫して、魔力による偽装までする徹底ぶりだ。下らない事に無駄に高い技術を集める下衆の集まりがそこにはあった。


「よし。後もうちょいだ......よし! 開いたぞ!」


 意図的に小さくした声に壁に穴を開けていた者達は一斉に「よし!」といってガッツポーズをする。


「こっちも出来たぞ! 登れ!」

「おう!」

「よっしゃ!」


 同時に上から覗く組も準備が出来た様だ。男子達はそれぞれの場所へ駆け寄り、迸るパトスを抑えもせず、鼻息荒く桃源郷へ欲望と願望を求めて覗き込む。


「えっと、皆さんは何をしようとしてるんですか?」

「変態」


 穴開け組が覗いてから見えたのはシルニアの顔だった。そして上から覗く組の目の前には宙に浮いたセラが。セラの絶対零度の如く冷めきった眼と、対照的に困った様な顔のシルニア。セラは男子達に掌を向けると、無言で風魔法を使用し男子達を吹き飛ばした。


「シルニア。どいて」

「え? えっと、分かりました」


 セラはシルニアをどかすと、穴から覗いていた男子達へ向かって掌を突き出す。男子達は冷や汗を流し、穴から離れようとするも時すでに遅し。上から覗く組と同じく風魔法によって吹き飛ばされた。


 最初に吹き飛ばされた数名は再び壁へ駆け寄る。


「ちくしょう。結界を張られた!」

「くっそ。どうする? 後もう少しなんだぞ」

「くっ......」


 あたかも深刻な問題に直面したかのように顔を歪めて悩んでいるが、悩む対象がアレなだけに阿保にしか見えない。そこで、一人の男子生徒が呟いた。


「じゃあ、(こう)、じゃなかった。ネオはどうだ?」


 男子達はその呟いた奴を見て、一瞬固まると、「天才かお前!」と叫んでネオの方へと覗く準備をし始めた。


「どうした凱斗。やらないのか?」

「いや、俺はやめとく。うん」

「んだよ面白くねえな」

「こんな所で怖気付く何て男じゃないぜ!」


 口々に凱斗の事を馬鹿にして準備を進めていくが、当の凱斗は一人湯船に浸かりながら目を閉じ我関せずと言った態度を冷や汗を流しながら取っている。


「よし。こっちはいいぞ!」

「こっちもだ!」


 先程よりも早く準備が終わった面々。一度やっただけで技術が向上する。この情熱を戦闘に持ってくることが出来ればいい線行く筈なのだが。


「湯気が多くて見えにくいな」

「風魔法で飛ばすか」

「いや、それだと気付かれる」


 何やら熱心に話し合っているが、次の瞬間動きが止まる事になる。


「好きだよね。男子ってこういう事」

「そりゃそうだろ! 覗かずして何が漢だ!」

「変態」

「は?」


 聞こえてきた声に返事を返していたら予想外の言葉が飛んできて、更に声が中性的であったことにも気づいた。気付いた途端ドッと冷たい汗が吹き出し、体が強張って動かなくなった。


 ほんの少し視線を動かすと、壁の穴から顔だけ覗かせたネオが居た。認識阻害等は掛けていないからそのままの姿で美しさを抑えていないが、今はそれが恐怖しか誘わない。


「まあいいや。って訳で一般的な対応をするから」

「へ? ちょ、ちょと待っ」


 ネオは男子の制止の言葉を無視し、問答無用で風によって吹き飛ばすと蒼獄炎(そうごくえん)と黒雷を放った。ちゃっかり回復もしているので気絶できない様にもしている。


 少しの間、三つの風呂場には男子達の絶叫が響き渡った。


 その様子を見ていた凱斗はそっと安堵の息を吐いた。


 男達の夢は儚く散った。だが! たったこれだけで終わるほど軟弱ではない! 男達の欲望と願望への挑戦はまだまだ続く!





何をしたかったんでしょうか。唐突にネタ回が湧いたから書いたんですけどね。まあいいや。

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