武闘大会予選 弐
三人称視点。作者の中では巧く書けた気がする(あくまで気がするだけである)。
楽しんで読んでくれたら幸いです。まあ、少々文字数が多くなってますが、前回が短すぎたので。
秋晴れの様な晴天の下、都市『スタリウム』の中央。其処にある円形の闘技場は興奮する観客達と、闘いに燃える出場者達の影響で空気も雰囲気も暑く、騒がしい、興奮による熱気で包まれていた。
そして闘技場の中では、ツヴァイと呼ばれる予選ブロックのバトル・ロワイヤルが開始しようとしていた。
『さあさあさあ!! 本日二度目の予選はツヴァイだ!! 先程の第一予選であるアインスより猛者の集うツヴァイの試合はどうなるぅ!?』
闘技場全体に響く、男性実況者の興奮気味な声。その声に誘発されたかのように観客からは雄叫びとも言えるほどの大歓声が闘技場内に響き渡る。
「ルイさん。次の試合で見所がある選手とかいますか?」
そんな闘技場の中、短い黒髪に目尻は若干垂れているが鋭い光を宿すダークブラウンの瞳は、周りにいる人々からすれば異様に目立つ。彼は法幢凱斗。凰が死んでから必死に特訓し、今ではAランクの魔物ならば倒せる程に成長していた。
「ああ、いるぞ。それも、相当な実力者がな」
凱斗の問いに答えたのは、身長百八十センチを超える長身に、ガッシリとした肉体。赤茶色の短く逆立った髪に赤色の鋭く吊り上がった眼。彼はルイ・ラテース。クライヒ王国騎士団長その人である。今回は凱斗の護衛として来ているが、その実力は技術的な面で凱斗を凌いでいる。言い換えれば、純粋な力は凱斗に劣っているのだ。
『おぉっとぉ!! ここでツヴァイの選手達が舞台へ上がって来たぞ!!』
拡声器とは違い、無駄な雑音などが一切入らない実況者の声が聞こえた。因みに、この実況は風魔法を付与した魔道具を使っている。
『ツヴァイの出場選手達は先程のアインスよりも圧倒的に質が高い!! その中でも、注目の人物を紹介していくぞ!!』
何気にアインスの出場選手を貶している実況者。しかもこれを観客達が認めているのだ。意図的な悪意を感じる......
『今回の出場選手で最も注目すべき人物は≪双綺剣≫アムル!! 冒険者ランクSの超実力者だ!!』
実況者の紹介に、観客の、特に女性の黄色い歓声が大きく響き渡った。だが、それとは違った反応を見せた凱斗。その視線は舞台に釘付けになり、両目を限界まで見開いて驚いていた。
「お? どうしたんだカイト? まさか、Sランク冒険者が出てるとは思わなかったのか?」
実に嫌らしくニヤニヤと笑いながら凱斗を見つめるルイ。見ようによっては、いや、確実に凱斗を挑発している事が分かる。更に、反応を見て楽しもうという下心が透けている。それでいいのか騎士団長......
「当たり前ですよ! Sランクの冒険者が出るなんて聞いてませんでしたよ!? 俺!」
完全にルイの思惑に乗せられている凱斗は、そんな事には全く気付かずにルイを見ながら不満を叫ぶように言う。
「いやいや、俺は言ったぞ? 相当な実力者が集うはずだと」
「相当な実力者っつっても、色々あるだろうが! 俺は最高でもAランク冒険者程だと思ってましたよ!」
興奮しすぎたのか敬語まで崩れてしまった凱斗。流石に最後の方は敬語になっているが、それだけ動揺したことが丸分かりだ。そんな反応に満足したのかスッキリとした、実にいい笑顔で頷いたルイ。
「......殴りてえ、その笑顔」
「ん? 何か言ったか?」
「いえ。何も言ってませんよ」
それに気付いた凱斗がボソッと呟き、うまく聞き取れなかったルイは聞き返したが、はぐらかされた。若干不満そうな表情をするルイだが、その表情を見た凱斗がまたイライラし出すのは別の話。
『全ての選手が舞台に上がったぞ!! それではこれより、予選を開始する!! 選手達!! 準備はいいかぁ!!』
ルイと凱斗が話している内に、全ての選手が舞台に上がり、説明が終わったのか、実況者が選手達に確認の声を掛けた。
選手達は各々の得物を掲げ、雄叫びの如き返事をし、闘気を高めていく。
『試合!!』
一瞬にして選手全員が武器を構え、臨戦態勢を取り、緊張感から観客さえも口を噤み、息を吞む。
『開始!!』
実況者の言葉を合図に、観客達と選手達が雄叫びを上げ、予選試合が開始した。
試合の様子は正に苛烈。全ての選手が本選に出場しようと躍起になり、激しく、荒々しい戦闘が行われていた。
そんな中、特に目を引く戦闘があった。周りとは全くと言っていい程質と種類の違う戦闘。その戦闘を行っているのは≪双綺剣≫のアムル。
踊るように襲い来る敵の攻撃を受け流し、そのまま流れるように敵を攻撃する。双剣を用いたその戦闘方法はまるで剣舞の様に美しく綺麗である。
これが、アムルが≪双綺剣≫と呼ばれる所以だ。その戦闘方法は踊るように美しく、舞の様に綺麗な双剣技。≪双綺剣≫とはここからきている。
アムルが襲い来る選手を返り討ちにし、時に自分から向かって選手達を減らしている場所とは別の場所でもまた、違った種の戦闘が繰り広げられていた。
そこでは、一人の女性が弓に矢を番え、射る。一本しか放っていないにも関わらず、その矢は空中でぶれたかと思うと、三本になり、選手達へ当たると同時に爆風を発生させ周りを巻き込みながら対象を場外へと吹き飛ばす。
まるで捩じれた木の様な外見の弓を操るその女性は≪増爆矢≫ミラル。こちらもアムルと同じくSランクの冒険者である。
一本の矢を弓に番え射る。対象に被弾する前に空中で複数に分裂する矢。対象へ被弾すれば爆風を生み出し複数の敵を同時に吹き飛ばす。≪増爆矢≫の名に相応しい攻撃だ。
その後はこの二人の戦いだった。いや、本人達からしたら遊戯だと感じていたかもしれない。圧倒的な戦闘。
その後、ニ十分程で決着のついたツヴァイ。最後に立っていたのは、案の定、Sランク冒険者の二人だ。
『試合!! 終了!! ツヴァイの予選を勝ち残ったのは!! ≪双綺剣≫のアムルと!! ≪増爆矢≫のミラルだ!!』
観客の歓声を聞きながら退場していく二人。これにて、ツヴァイの予選は終了した。
「やっぱりあの二人が勝ちますか......」
「ガハハ! そりゃあそうだろ。なんたってSランク冒険者なんだ。このくらいやれなきゃ、Sランク冒険者なんて名乗れやしねえよ」
恐らく無意識であろう凱斗の呟きに、ルイは返答する。それを聞いて、凱斗も「それもそうか」と納得する。
「お主、ルイか?」
そんな時、不意に声が掛けられた。声音だけから判断すると、老いた男性である。
その声に反応したルイと凱斗が振り向くと、そこにはこの街の冒険者ギルドのギルドマスターが立っていた。
「おお、ハゲジジイじゃねえか」
「誰がハゲジジイじゃ!! 誰が!!」
ルイがギルド長を認識した瞬間に煽り、その煽りに反応して激昂するギルマス。
「もう一度あの時みたいになりたいのか!!」
「ヘッ!! やれるもんならやってみやがれ」
完全に遊んでいるルイと、それに激昂するギルマス。そこで呆然として置いて行かれた凱斗が間に入り、説明を求めた。
「ルイさん。遊んでないでその人を紹介してください」
「ああ、悪いな。この人はこの街の冒険者ギルドのギルドマスターをしているアンガス。見ての通りドワーフでハゲでジジイだ」
「ハゲでジジイは余計じゃ!!」
ギルマス改めアンガスはルイの余計な説明に激しく突っ込みを入れる。
「お主、名前は?」
「あ、俺の名前はカイト・ホウドウです」
アンガスがルイを気にしないことにし、その近くにいた凱斗へと話題を移した。
「ルイよ。こやつが?」
「ああ、まあ、そうだ」
アンガスの問いに曖昧な返事をするルイ。一瞬訝し気な表情をしたが、直ぐに元の表情に戻り、話題を移した。
「カイトよ。お主の出場する予選はどれじゃ?」
「あ、俺はフィーアです」
「ふむ。なら次の試合も見て行くのじゃな?」
「はい」
色々と確かめて来るアンガスに多少の疑問を浮かべながらも返事をする凱斗。アンガスは温厚な笑みを浮かべながらカイトへと言った。
「なら儂も一緒に見てもいいかの?」
「はい。全然かまいませんよ」
「よし。ならカイトよ、少し教えてやろう」
「何をですか?」
凱斗の問いにニヤリと笑みを浮かべた。
「次の出場選手、ネオと言う名の者をよく見ておれ」
「......? 分かりました」
「きっと、ドライの勝者はそのネオだけじゃろうからな」
カイトはアンガスの言葉に素直に驚き、今まで蚊帳の外だったルイは訝し気な表情をした。
そんな三人を余所に、ドライの選手達が次々と舞台へと上がってきた。




