第6話「気づけない異変」
フィラが、立ち止まる。
「……あそこ」
視線の先に、建物がある。
古い寮だった。
明かりはついているのに、どこか静かすぎる。
「……なんだよ」
ヴァルが眉をひそめる。
「普通じゃねえな」
「うん」
リクは、迷いなく頷く。
「でも、いるよね」
「……は?」
「中に」
リクは、扉を見ている。
少しも迷っていない。
「……あれ、まだいる」
フィラが、小さく言う。
「もう崩れかけてる」
「ここで止まるか、中で壊れるか」
ユエが、腕を組む。
「選択肢はそのくらいかな」
「……面倒くせぇ」
ヴァルが舌打ちする。
「放っとけよ」
「関係ねぇだろ」
「関係あるよ」
リクが言う。
声は静かだった。
「まだ残ってるなら」
「触れば戻るかも」
「……お前」
ヴァルが顔をしかめる。
「それで戻らなかったらどうすんだよ」
リクは、少しだけ考える。
それでも、目は逸らさない。
「それでもいいよ」
沈黙。
ユエが、わずかに目を細める。
「……そういう選び方、するんだ」
フィラが、一歩だけ前に出る。
「時間はあまりない」
「中で崩れる」
「……チッ」
ヴァルが、短く舌打ちする。
「勝手にしろ」
「ただし」
視線が鋭くなる。
「離れるな」
「うん」
リクが頷く。
扉の前で、全員が止まる。
中から、かすかに笑い声が漏れる。
「……あは」
空気が、わずかに歪む。
ヴァルが、小さく息を吐く。
「……気持ち悪ぃな」
ユエは何も言わない。
ただ、視線だけが奥を測っている。
リクが、扉に手をかける。
「……行こう」
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