第2話「隣にいる人」
何も変わらない。
でも、少し違う。
放課後。
帰り道。
並んで歩いている。
「今日、めっちゃ見られてたね」
フィラは答えない。
「まあ、分かるけど」
少し笑う。
「どっちか分かんないし」
間が空く。
「でも、別にいいじゃん」
軽い声。
「どっちでも」
フィラは、視線を向ける。
「気にしてんの、周りの方じゃない?」
動きが止まる。
言い返さない。
その人は、
自分の耳たぶに触れる。
軽くなぞって、
すぐに離す。
フィラは、それを見る。
目が離れない。
ほんの少しだけ、息が止まる。
人が多い場所でも、同じだった。
フィラの周りだけ、少し空く。
誰も近づかない。
その人だけが、隣に来る。
「ここ、空いてるね」
普通に立つ。
フィラの隣に、人がいる。
初めてだった。
帰り道。
「……なんで」
言葉が遅れる。
「話しかけるの」
「なんとなく」
すぐに返る。
「一人だったし」
「嫌だった?」
「……分からない」
正直だった。
「そっか」
それ以上、聞かない。
少し歩く。
「話せるなら、それでよくない?」
否定しない。
距離が少しだけ縮まる。
意識していない。
ただ、並んでいる。
それだけだった。
同じような時間が続く。
教室の空気は変わらない。
フィラの周りだけ、少し空いている。
誰も近づかない。
でも、
その人だけは、毎回同じように隣に来る。
「おはよ」
それだけのことが続く。
「今日、静かだね」
短い会話。
途切れても、気にしない。
それが繰り返される。
フィラは、いつの間にか、
その声を待つようになっていた。
理由は分からない。
読んでいただきありがとうございます。
次話に続きます。




