第3話「みらい」
崩れるとは、思っていなかった。
放課後。
同じ道。
並んで歩く。
距離は、少しだけ近い。
「最近、ちょっとマシになってきたよね」
「前より、見られてない」
フィラは答えない。
「慣れたのかもね」
笑う。
間が空く。
フィラが口を開く。
「……なんで」
「……なんで、お前は」
止まる。
言い切らない。
「ん?」
普通の反応。
それだけ。
でも、
何かが変わりかけている。
信号の前で止まる。
人が並ぶ。
その人は、いつも通り立っている。
フィラも、そこにいる。
少しだけ、近い。
青に変わる。
人が動き出す。
フィラも歩く。
半歩、遅れている。
その瞬間。
強い音。
遅れて、理解する。
何かが近い。
視界の端で、動く。
車。
近い。
その人が、いる。
フィラが、口を開く。
「……み」
届かない。
その一瞬で、
すべてが終わる。
次の瞬間、
その人の姿がない。
遅れて、
地面が見える。
人の声。
ざわめき。
全部、
少しだけ遅れて届く。
フィラは、手を伸ばす。
届かない。
指が、何かに触れる。
冷たい。
ひびの入った感触。
止まっている。
少し後。
屋上。
風が吹いている。
フェンスの向こうで、
街が動いている。
フィラは立っている。
何もしていない。
教室では、
また同じように距離が空く。
視線は逸らされる。
声はかけられない。
それが続く。
変わらない。
前も、そうだった。
今も、そうなっている。
違いはない。
ただ、
一つだけ分かることがある。
自分は、
そういう存在なのだということ。
指が動く。
無意識に、
左の耳に触れる。
金属の感触。
少しだけ、重い。
止まる。
そのまま、
手が下りる。
手の中には、
小さなものがある。
ガラスが割れている。
針は、動かない。
フィラは、それを見る。
意味は分からない。
でも、離さない。
それでいい。
風が吹く。
何も変わらない。
ただ、
そう感じる。
「……みらい」
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