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第八章 二人だけの対話

 翌日の午前。


 ヨーコは一人でアルカディアと会った。


 展望ラウンジ。人が少ない時間。窓の外に地球が見える。


「昨日は——ありがとうございました」とアルカディアは言った。


「私を二人で話したいと言った理由から先に教えてくれ」とヨーコは言った。


「単刀直入に言います。私はあなたに、特別な関心があります」


「なぜ?」


「昨日の対話の中で、あなたは私に対して——論理の穴を三箇所、正確に突いてきました。その速さと精度は、私が今まで評価した百三十二文明の中で、トップ十五以内に入ります。個人として」


「……」


「文明全体ではなく、あなた一人で——そのレベルに達している」


「それが何の意味がある?」とヨーコは言った。


「文明の多様性を守るとは、個体の多様性を守ることとイコールです。突出した個体がいるかどうかは——評価の重要な指標になります」


「つまり、私の存在が地球の評価を上げると言いたいのか」


「そうです」


「それを私に直接言う理由は?」


「あなたには正直に話す方がいい。あなたは嘘や回りくどい説明を好まない」


 ヨーコが窓の外を見た。


「もう一つ聞く。あなたが私を高く評価することと、地球全体の評価は別の話だ。優秀な個体がいても制限を受けた文明がある。その個体はどうなったか」


「文明から切り離して保護しました。より高い段階の文明と接触させる」


「——つまり」とヨーコは言った。静かに。「私に、地球を離れてこちら側に来い、と言いたいのか」


「まだそこまでは言いません。でも——可能性として、頭に置いておいてほしかった」



 しばらく黙った。


「一つ聞いていいか」とヨーコは言った。


「どうぞ」


「あなたは——孤独か?」


 アルカディアが、少し——動いた。体ではなく、表情が。ほんのわずか。


「……なぜそれを?」


「あなたは数千の文明を見てきた。同じ役割を持つ存在は他にいたか?」


「いません」


「一人で、数千の文明の終わりを見届けてきた」


「そうです」


「それは——きつくないか」


 長い沈黙が落ちた。


「……地球人は」とアルカディアは言った。「不思議です」


「何が?」


「私に、そういう質問をした存在は——百三十二文明の中で、初めてです」


「他の文明は何を聞いた?」


「力があるか。止められるか。どうすれば通過するか」


「合理的な質問だ」


「そうです。でも——あなたは違う質問をした」


 ヨーコが眼鏡を外して、こめかみを押さえた。


「答えは?」


「……孤独かどうかという概念を、私は長い時間処理していませんでした」とアルカディアは言った。「あなたに聞かれて——初めて、考えました。わかりません。でも——孤独ではないと言い切れない、ということは、わかりました」



 作業室に戻ると駿が待っていた。声が平静を装っていたが、緊張していた。ヨーコには分かる。


「行く気があったか?」と駿は聞いた。


「ない」と即座に。「今のところは」


「今のところ、か」


「駿、不安そうな顔をするな」


「していない」


「してる」


 甚之助が咳払いをした。「俺には関係ない話に見えてきたが」


「三人の話だから関係ある」とヨーコ。


「ヨーコが行かないなら俺は問題ない。駿は?」


「俺も問題ない」と駿は言った。少し間があったが。


 ヨーコが小さく笑った。


 駿は窓の外を見ていた。その横顔を、ヨーコはほんの一瞬——見た。


(不安そうだった。私のことが)


 胸の中で、何かが動いた。それに名前をつけることは、今は——しない。


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