第五章 問いの形
対話の場所は会議室になった。
テーブルを挟んで、アルカディアと四人が座った。
「選別とは破壊ではなく——分類です」とアルカディアは言った。「価値のある文明は保護され、より高い段階へ進む。価値が認められない場合は——文明の進歩を一定期間制限します。具体的には、宇宙進出の能力を削ぎます」
「消滅はさせないのか」
「私は破壊者ではありません」と変わらない微笑みで。「最適化しているだけです」
「管理される覚えはない」と甚之助が言った。
「そうですね。でも——あなた方の銀河系だけで現在四十二の知的文明が存在します。全てが無制限に発展すれば——百年後に七つが宇宙規模の破滅的な戦争に発展するシナリオがある」
「だから今のうちに選別する、と」
「そうです」
◆
「質問してもいいか」とヨーコが言った。
「もちろん」
「あなたが見てきた文明の中で、評価を通過したものはいくつあるか」
「百三十二文明を評価しました。通過したのは四十九です」
「残りの八十三は?」
「技術制限を受けた文明が六十一。それ以外が——二十二」
「それ以外、というのは」
「制限をかけた後、内部崩壊した文明です」
ヨーコが眼鏡の奥を細めた。「つまり制限をかけることで文明が崩壊するケースがある」
「あります」
「それはあなたの予測の範囲内だったか?」
「……七文明は、予測の範囲外でした」
「つまり、あなたの最適化は——完璧ではない」
アルカディアの微笑みが、ほんのわずかだけ変わった。
「完璧ではありません。それは認めます」
「なら」とヨーコは言った。「完璧でないあなたが文明の存続を決める権限を持っている根拠は何ですか」
沈黙が落ちた。
「良い質問です」とアルカディアは言った。「でも——権限を誰かが持たなければならない。あなた方人間も、裁判官を置く。誰かが決定を下さなければならない場面がある。私は宇宙的規模でその役割を担っています」
「誰があなたに任命したのか」
「選別委員会が」
「選別委員会は誰が作ったのか」
「……それは、また別の機会に」
「答えられない、ということですね」
「あなた方にまだ——準備が必要です」
◆
対話の一回目が終わった後、廊下で白峰が言った。
「ヨーコさんは、すごい。あの存在に正面から論理で詰めた。私は途中から声が出なかった」
ヨーコは何も言わなかった。
対話の途中で、アルカディアの視線が自分の上に止まった瞬間を——まだ、思い出していた。
(なぜ私を見た?)




