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第四章 調整者、来訪

選別委員会の通信を解読したのは、翌朝だった。


 ヨーコは眠れなかった。数式と暗号の間に、時々——宇宙空間で左肩を撃たれた駿の映像が混ざった。


(集中しろ)


 自分に言い聞かせた。何度も。


 解読が完了した時、手が止まった。


 一文だけになった。


【地球の「例外性」評価開始。調整者を派遣する】



「調整者が来る」と三人に告げた。


 駿は四時間眠った顔をしていた。左肩に痛みがあるが、機能している。


「オムニアの記録にあった調整者と同じ存在か?」と駿。


「おそらく。地球の評価のために、直接代理人を送り込んでくる」


「どう対応する?」


「戦う相手じゃない」と白峰奈緒が言った。連絡を受けて来ていた。「記録にある限り——調整者は対話を求める。でも対話の結果で、文明の評価が決まる」


「どんな対話だ」


「文明の価値を問われる。なぜ存在するか。何を守るか。何のために進歩するか」


「準備する」と駿は言った。


「二日後の到着だ」



 二日後。朝。


「アマテラス」外部スキャナーが、未確認の飛翔体を一機捉えた。


 艦隊ではない。単機だ。大きさはガルダ号と同程度。しかし形状が——どこかで見た有機的な曲線を持っていた。


「着艦要請を送ってくる」とヨーコが言った。「標準プロトコルで。こちらの言語体系に対応している」


「どう答える?」


「……許可」と相手は返した。完璧な日本語で。



 格納庫で三人が待った。


 ハッチが開いた。


 人型の存在が降りてきた。


 白銀の髪。淡く光る瞳。中性的で年齢が判断できない顔立ち。

 口元に——静かな微笑みがある。


 美しい。という言葉が浮かんだが、それだけでは足りない気がした。


「ご挨拶が遅くなりました」


 流暢な日本語だった。


「私はアルカディア・ゼロと申します。この宇宙では——調整者と呼ばれています」


「あなた方のことは、かなり長く見ていました」とアルカディアは言った。「藤堂駿。白坂陽子。江藤甚之助」


 本名を呼ばれた。


「驚かせたなら申し訳ない。隠す意味もないと思いましたので」


「何をしに来た?」と駿は言った。


「お話に来ました」


「地球を評価するのか」


「地球を——あなた方を通じて、評価させていただきます」


 白銀の瞳が、三人を均等に見た。


 しかし——その視線が、ヨーコの上でほんの一瞬だけ、止まった。


 ヨーコ以外には、気づかれなかった。


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