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第十四章 使う、という言葉の正体


 三人が作業室に揃った。


 ヨーコがライのデータを説明した。


「バロス連合、ガラン族、タールク星系——全部が一つの上位意思に動かされている。そしてその意思は——地球の多様性を『使う』ことを目的としている」


「使う、とは何だ」と駿が言った。


「まだわからない。でも——」ヨーコが端末を開いた。「一つ、仮説がある」


「言え」


「アルカディアが言った。宇宙は均質化に向かっていると。強い者が弱い者を飲み込み、多様性が失われていく。オムニアはその流れに抗う星として地球を評価した。でも——」


「でも?」


「均質化する宇宙の中で、多様性は——希少資源になる。希少なものは、利用できる」


「多様性そのものが武器になる?」と甚之助が言った。


「あるいは——エネルギー源。均質化した宇宙の中で多様性を維持する星は、理論的に高いエントロピーを保持できる。そのエントロピー差を——動力に変える技術があれば」


「地球が電池になる、ということか」と駿は言った。


「最悪その可能性がある。使い続ければ——多様性は失われる。地球は——擦り切れる」


 沈黙。


「アルカディアはそれを知っているか?」


「わからない。でも——アルカディアが地球の多様性を高く評価しているのは確かだ。その評価が、この計画と——どう関係するかは」


「まだ見えない」


「そうだ」



 翌朝、アルカディアに直接聞いた。


「地球の多様性を『使う』という計画を知っているか?」


 アルカディアが——止まった。


 微笑みが、一瞬——消えた。


「……何の話ですか」


「知らないのか、それとも答えられないのか」


「知っています」とアルカディアは言った。「でも——」


「でも?」


「私がこの問いに答えることは——評価の中立性に影響します。あなた方が今、私に何を期待しているかで、私の答えが変わる可能性がある」


「正直に言ってくれ」と駿は言った。「お前がΩ-17の後悔を持っているのと同じように——この計画について、後悔に似た何かを持っているのか?」


 長い沈黙。


「……選別委員会は、当初から地球の多様性を評価することを目的としていました。でも——私が調査を進める中で、計画の一部に私が知らなかった側面があることを——最近、気づきました」


「使うという計画は、お前が知っていたものか?」


「知りませんでした」


「それは——本当か?」


「本当です」とアルカディアは言った。「私は選別委員会の代理人として評価を行っています。でも——委員会全体の計画の全容を、私は知らされていない部分がある。今日、あなた方に言われて——初めて、自分が知らされていない側面の存在を、正面から確認しました」


「騙されていた、ということか」


「……そうかもしれません」


 駿が、アルカディアを見た。


 完璧な微笑みを持つ存在が——初めて、その微笑みの裏に何かを見せた気がした。



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