第十三章 正体、十人以内に迫る
白峰奈緒の保護指定申請が——却下された。
「内閣府の上層部に反対意見が出た」と白峰は言った。「ヨーコさんを保護対象にすることで、その存在を公認することになる。難色を示した評議官は——」
「バロス連合と繋がっている可能性を調べてる、と言っていた」
「はい。でも今は確認できていない」
「それより問題があります」とヨーコが言った。「EDF解析チームが研究センターのプロトコル痕跡を解析した。候補者が十名まで絞られた」
「十名か」と甚之助。
「そのうち私が含まれている可能性は三分の一程度。でも次の解析ステップに進めば五名以下になる。そうなれば——EDFから任意の聴取が始まる」
「受けるか?」と駿が言った。
「受けても情報を与えすぎなければ問題ない。でも聴取自体が、俺たちの行動制限になる。その期間、「アマテラス」を離れた行動がしにくくなる」
「アルカディアの干渉は機能してるか?」
「研究センターのプロトコル調査には機能してる。でも別の経路からの調査は止められない」
「別の経路?」
「ガルダ号の飛行ログだ。量子エンジンのシグネチャーを変えていない。飛行パターンを解析すれば——行動圏が割れる」
「変えられるか?」と甚之助が言った。
「時間がかかる。今夜中には無理だ」
「先手を打つ必要がある」と駿は言った。「ガルダ号のログを——」
「改ざんはしない」とヨーコが即座に言った。
駿が止まった。
「……そうだな。俺の言い方が悪かった」
「ガルダ号を当面使わない。少佐の申請が通るまで——普通の学生として過ごす」
「地味だな」
「地味でいい。派手にやったら捕まる」
◆
その夜、ヨーコが一人で解析を続けていると——ライから通信が来た。
「一つ確認したいことがある。ヴィアルカの尋問で、重要な情報が取れた」
「どんな内容だ」
「バロス連合の計画の全体像に関係する。お前たちが想定していたより——大きい」
「送れ」
「送る。ただし——これを見た後、お前たちの判断が変わるかもしれない」
「どういうことだ?」
「今まで俺たちが戦ってきた相手——バロス連合、ガラン族、タールク星系——は全部、同じ上位の意思に動かされている可能性がある」
「……それが『本当の理由』か」
「そうだ」
データが送られてきた。
ヨーコがファイルを開いた。
読み始めて——手が止まった。
接続されている名前。組織。計画の規模。地球を狙っていたのはバロス連合だけじゃない。全部が——一つの意思のもとで動かされていた。
そして——その意思の発信源が、どこにあるかが書かれていた。
「……嘘だ」
でもデータは——嘘をつかない。
「ライ」と言った。
「なんだ」
「これが本当なら——今まで俺たちが戦ってきたもの全部が、一つの計画の中にあった。そして——その計画の目的は、地球の多様性を消すことじゃない」
「そうだ」とライは言った。「地球の多様性を——使うことだ」
「どういう意味だ」
「俺にもまだ全部はわからない。でも——オムニアがお前たちに言ったことを思い出せ。地球の多様性は、宇宙で奇跡に近い状態だと」
「言っていた」
「その多様性は——何かに使える」
ヨーコが一つ、息を吐いた。
「駿を起こすべきか」
「それはお前が判断していい。でも——朝まで待てる話でもないかもしれない」
通信を切った。
端末を持ったまま、しばらく考えた。
立ち上がった。
仮眠室のドアをノックした。
「駿。起きてくれ。大事な話がある」




