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三十四話 体の友達 ~子宮頸管粘液~

 

 ▲極立ぴかリ▲


 私は、ポケットに不気味な重みを感じながら、屋上に立っていました。


 高校を出て、真っ直ぐ進んだ先に、商店街があります。昨日、ふと通り過ぎたところ、先日まで工事を続けていた店舗が開き、どうやら喫茶店では無く、パフェ屋さんが出来上がりました。こぢんまりとした店内ながら、可愛い装飾や明るい店内で、何よりパフェがとても美味しそうでした。放課後、早速アマネと一緒に行こうと思って、絶交したことを思い出しました。私、何しているんでしょうか。別にアマネと金輪際会話をしなくても、セセギ君が私を好いてくれるとは限りませんし、その可能性は限りなく零に近いです。私は、唯一の友達を切り落とし、相手を傷つけて、自分も傷ついて、……一体何をしているのでしょうか。鞄に括り付けられた人形、アマネとお揃いの羊の人形が、私の体を叩くように当たります。それを掴み、眺めると、視界が歪みました。

 キィ、と音が鳴ります。ふと顔を上げると、屋上の扉が開いていました。自動ドア……ではありません。しかし、人の影がどこにも見当たりません。

 ひゅんッ

 ――風? え?「ふぎゃぁッ!」「リンちゃんゲットぉお!」

 それは完璧なタックルでした。影が私に地を這うように接近し、両足を掴むと、地面へ倒したのです。痛いです。お尻が、超……痛い、です……。

 アマネでした。私は痛みと衝撃で、何を言えばいいのかわからず、口を閉じてしまいます。

「リンちゃん!」

「は、はい……」

「さっき聞かされたあの話ね、私、やっぱり拒否ります」

「え?」

「だって、私はリンちゃんを好きだから、絶交なんて、絶対に無理だもの。もしリンちゃんを見かけて、私を無視しても、私は、今見たいに強烈なタックルで捕獲するから」

 二ヒヒといつものように笑顔を浮かべて、アマネは高らかに宣言します。その言葉で、ぐっと喉が詰まりました。アマネは、その太陽みたいな活力に、私の卑下た後悔は散り散りになって消え去ります。しかし、それでも、私には、セセギ君への想いが、私を離しません。

「あと一つ。実は、さっきセセギに告られた」

 ふ

 ひゃ

 ガーンッ! うぅぅ、うぅぅ「断ったけど」

 ……え、え、「何故ですか?」

「セセギは、ただの友達だから。私が、この世で最も……愛しているのは、極立ぴかリン、通称――リン!」

「は、はい?」

「リンちゃんだからね」

 ……え、えーと、私は、女の子で、アマネも、女の子、です。一緒にお風呂入りましたし、それは確実です。

「あの、アマネ、冗談ですか?」

「本気。私は、性別なんて関係無く、リンちゃんが好きなの。犯したいくらいに、大好き!」

「私、女の子です」「知ってる」「アマネも女の子です、よね?」「うん、そうだよー」

 アマネの両腕がハサミのように持ち上がり、私の腰を抑えます。身動き出来ません。

「リンちゃん、女の子×女の子で付き合ってはいけない、なんて法律はございません。リンちゃん、私を大好きなんでしょ、うわぁ、相思相愛じゃん」

「わ、私は、アマネは、その友達として、大好き、という意味で、その……えぇと、恋愛的な感情は絡めていませんよ」

「でも好きなことには変わりない。大丈夫、そんなちゃちな思考、吹き飛ばしちゃうほど、私のテクニックで快感を味あわせてあげるから」

 アマネの眼は本気でした。あまりの迫力に私は震えましたけど、アマネの腕が震えすら許してくれません。

「私は……。アマネ、ごめんなさい。セセギ君が、好きですので、アマネの気持ちには答えられません」

「そっか、うん、わかった駄目許さない犯す犯す犯す」

 カタコトで呟きながらアマネは私に抱き着き、私は押し倒される形で仰向けに倒れます。アマネは即座に私のお腹の上に腰を降ろし――マウントポジション! です。これでは、もう抵抗すら出来ません。

 私は必死に腕を持ち上げ、アマネの行動を妨げようとしましたが、アマネは電池が切れたかのように、動きを止めました。虚ろな眼で、私を見下ろしています。

「ア、アマネ?」「あはは、冗談だよ。リンちゃんって、たまに無償に虐めたくなるんだよね。うん、フラれたことだし、私の留学について、お話しましょうか。かくかくじかじか」


 アマネは、自身が来年から海外へ留学する意向がある、と私のお腹の上で私を見下ろしながら語りました。

「来年から、ですか?」

「うん。期間は半年から、一年かな。さっき先生に聞いたら、今回はあまり候補が集まらないみたいで、私はほぼ確実に行けるってさ。だから、遊べるのは、二年生の間だけ、かな」

「もう、会えない……のですか?」

「長期の休みの時に、会おうと思えば、合えるって……ねぇ、リンちゃん、超泣いているんだけど」

 道理で、アマネの顔が滲むはずです。両目の縁から、涙が垂れて行くのがわかります。だって、だって、そんな……後半年くらいしか、一緒に過ごせないのですよ……。

「い、いやぁ、……行かないでぇ、ください……」

「ごめんね、これはもう、私の中で決めた問題なんだ。夢のため、勉強しに行くの。ていうかさ、何、行かないで、ってさっき、あんなに絶交とか許さないとか憎いとか……言っていたのに……行かないでぇ、……は無いでしょ」

 ポタポタと、私の顔に雫が落ちてきます。アマネの涙です。二人で眼をウルウルさせながら、見つめ合っていました。夕日に照らされるアマネは、言葉で飾れないほど美しいです。

「ア、アマネとずっと一緒にいたいですぅう。離ればなれになりたくないですー! 今日も、い、一緒にぃ……パ、パフェ屋、さんに……一緒に行き……たい。やだやだやだ! 留学しないでぇ!」

「もう、友達なら、潔く頑張ってきな! って見送ってよー。それに、セセギを私がフったから、リンちゃん、そう思うんでしょ」

「それは……それは……うぅう、ごめんなさい……」

「はぁ? 大丈夫だ、って思ってるの? だから行かないで? ふん、なんちゅー性格の悪い女だ、悪女! ロリ巨乳! チビ! それにリンちゃんは甘い。どうせ今頃、セセギはキト君に私の写真を撮らせて、それをオカズにしてるよ。ていうか、なんでセセギを好きになるの? 他に良い男ならこの学校にたくさんいるでしょ? そのアザトイパワーもあるんだしさ」

「セセギ、君は、わ、私のこの力でも、普通に、話しかけてくれる……男子です。そ、それに、私をずっと睨んできて、なんとなく気になって、恐いけど、私にいつも非道い言葉を投きますけど、それが、その新鮮ですから……」

「え、リンちゃんって……マゾなの?」

「ち、違います!」

「いやだってそうじゃん。睨まれて言葉攻めされて興奮してたんでしょ。マゾっ子リンちゃん、極マゾだ。うわぁー超変態がここにいまーす! セセギの言葉責めを想像しながら毎日オ○ニーしてまーす!」

「もう馬鹿! 違います、それに毎日はしませんッ!」

 言った瞬間、しまったと顔が青ざめます。「へぇ……ってことは、セセギの言葉でマ○ターベーションをしたことがある、と」今度は、顔が真っ赤に染まるのがわかります。アマネが邪知な笑みで私を見下しています……。

「図星だ! 顔真っ赤になってる! ……でも、リンちゃんのそういう部分、知りたくなかった。リンちゃんには、何故使わない穴が一つあるのか、ずっと疑問に思って欲しかったや……」

「ア、アマネだって、そういうことしていますよね!」

「ったり前よー! もちろん、リンちゃんを思い浮かべながらしてるわ。二人に尾行された日も、パチンコのトイレでしたぜ。最近のトレンドは、リンちゃん拘束系、かな。夜中、トイレに行きたいけど恐がるリンちゃんと一緒にトイレの前まで行ってあげて、そこで無理やり拘束して、お漏らしさせる、って妄想かな。あはははは、そのうち実現させようね!」

 もう夜中トイレには行けなくなりました……。

「アマネのド変態! 私をいつも邪知な眼で見ていたのですか?」

「そうだよ。リンちゃんに最初に会ってから、現在、そして、未来も……」

 記憶がどばっと蘇ります。そうです、アマネは私によく抱き着き、髪を撫で、胸を触り、腰に指を這わせ、お尻を撫で、腿を摩り、よく頬にキスを仕掛けてきます。アマネがスキンシップ過剰な子と思っていたのですが、それは、それは……もしかして……。

「私は毎日毎時毎分毎秒、ってか全ての時の中で、リンちゃんを性的に戯れたいと思っていました」

「ひぃ!」輝きを伴うアマネの瞳は、嘘を言っていません!

 私は無我夢中でアマネから逃れるようにもがきます。すると、簡単にアマネの股から抜け出せました――その理由は即座に判明します。屋上の扉には、鍵がかけられたのか、開きません……。

「正確には、横に開く扉だから、つっかえ棒を仕込んだの。私がタックルしたのも、扉がきっちり閉まるまで、リンちゃんを扉に近づけたくなかったから」

 ねっとりした声色に、私は氷を背中に押し付けられたかのように、驚きます。振り返ると、もちろんアマネがいます。しかし、顔は爛々とした歪み――笑顔に染まり、全身から熱風のような轟きを醸していました。カラスミで襲われた時なんて比較するのも烏滸がましいほど、恐怖を感じます。

「ア、アマネ……?」

「もう屋上には誰も来ない。生徒の来る可能性は限りなく低いし、用務員さんの見回りの時間も把握している。最低三時間は、現れない」

 必死に扉をこじ開けようと努力しましたが、一向に開きません。振り上げた右手を、アマネは掴みます。腕が捻られ、痛くて体をアマネの方向へ向けてしまいます。アマネの鼻と私の鼻がくっつく距離に、アマネの顔がありました。眼から光が消え、怯えて震えている私だけが、そこに存在しています。

「そんなに、嫌? 私とヤルの?」

「アマネ、恐いです……。痛いです……。ねぇ、アマネ、辞めてください……」

「……うーん、そんな猫撫で声で嫌がられたら、私の気分も萎えるや……。じゃあ、……キスだけいい? チュウだけ?」

「ほ、ほっぺたなら……」

「唇に決まっているでしょ。お願い、もう、離ればなれになる、その最後の手向けとして、キスしてくれたら……私も収まると思うから……お願いします、リンちゃん、私、リンちゃんが大好きなの」

 その瞬間だけ、アマネの体から力が抜けます。私が、拒否を示した場合、即座に離れられるように、と覚悟を決めたのでしょう。アマネの声には、もう嘘は感じられません。本当に、私を、愛しているのでしょう。

 ごめんなさい。

 アマネは、大好きです。しかし、やはり、恋人にはなれません。同性、という壁はもちろんあります。が、それよりも、アマネは、私とは違う世界の人間に思えます。私は、アマネに憧れて、そして、少し嫉妬をしています。同じ道へ歩む場合、その嫉妬が、邪魔になります。アマネの後を、追いかける自信が、私にはありません。アマネは、修羅へ行きます。私は、平穏を求めています。

 だから――

「……わかりました。キス、だけなら……」

「良いの? ファーストキス、だよね?」

「別に、私はそういうの気にしませんから……」

「うん……ごめんね、ありがとう」

 私は目を瞑り、覚悟を決めました。キスが終われば、また元通りのアマネが戻ってくると信じて。

 ……し、舌入れ……ぎゃあぁ……。

「ごめんリンちゃんやっぱり収まらないや」

「い、や……アマ、もが!」酷いです! 少し前の私の心理描写、忘れて下さい。アマネは自己中心的で、強引過ぎです! 

アマネは私の口を右手で塞ぐと、扉を背にして、そのまま押し倒します。圧力に勝てず、私は座り、その上にアマネが圧し掛かります。

「余計興奮したや。あはは、そんなに緊張しないで、優しく、そして気持ちよくしてあげるから。もしかしたら痛いかもしれないけど、最初だけだよ我慢してね。え、嫌? 泣いていいよ、誰も助けに来ません。声を上げても良いけど、これじゃ何も言えないもんね。それに、私、リンちゃんが苦痛で歪んだ顔を見るの、好きなんだ。……うん、なるほどね。これが私にとっての理想の世界の一つなのかもしれない。ていうかさ、リンをこのままセセギに上げるのは、やっぱり嫌だよ、ムカつく。あははははははは、ここでリンを犯して、で、すごーく気持ちよくさせてあげる。別にチンコなくても、セックスは出来るからさ。レズセックスとか、最高じゃん。あー、私、一度でいいから貝合わせしたかったんだー。あは、あはは、やば、笑いが止まらない。それで、この先、もしかしてセセギと付き合って、普通のセックスしても物足りなくしてあげる。どんなにセセギを愛し、それを理屈で制御しようとしても、そんな安っぽい気持ち、本能でぶちこわしてあげるよ……。あ、私と付き合わなくても大丈夫なのか。別に恐くて、絶交してもいいよ。ただ、私とセフレになって」

「セ、セフレ?」アマネは私の制服をはぎ取る作業に入ったため、口から手が離れ、喋れるようになりました。

「セックスフレンド。あは、リンちゃんから、子宮頸管粘液、トプリとひねり出してあげるから」

 生命の危機を感じ取った私は、最後の手段に移ることにしました。右手をポケットに突っ込むと、即座に引出し、アマネの首元に、スタンガンを突きつけます。

「へ、何これ?」

「我慢してください、アマネ……」



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