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冥府令嬢の天秤2 〜傲慢な悪魔は丸裸(フォーマット)ですわ!元・奪衣婆令嬢、二人の最凶イケメンに溺愛されて現世を無双する〜  作者: たくみふじ
第二章 偽りの救済と暴走する信仰

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神罰という名の剥奪㈡

傲慢な悪魔の嘘、天秤で丸裸(フォーマット)にしますわ!元・奪衣婆令嬢の華麗なる無双劇

 横浜中華街、中華飯店『鳳凰』の地下に隠されたVIPルーム。

 円卓の上にコトリと置かれた黒いUSBメモリを、セトが険しい表情で見つめていた。


「……なるほど。教団の信者から偶然回収したというわけですね。エバさんの引きの強さには、相変わらず驚かされます」


「レディの運命は、常に劇的なドラマを呼び込むようにできているのですわ」


 新子はふんぞり返りながら、運ばれてきたばかりの熱々の胡麻団子を優雅に頬張った。外側のカリッとした食感と、中から溢れ出す濃厚な黒胡麻餡の甘さが、午前中の立ち回りで消費したエネルギーを急速に満たしていく。

 セトは無言で手元の特殊なタブレット端末にUSBメモリを接続した。数分間の高度なハッキングと暗号解除のプロセスを経て、画面に膨大な量のデータファイルが展開された。


「これは……想像以上ですね。朱鳥女子大学の後援組織『朱鳥会』の裏帳簿、だけではありません。政財界の大物たちのスキャンダル写真、裏口入学のリスト、美形で教養のある学生を権力者の愛人として斡旋(あっせん)した密約の記録。さらには教団『浄化の光』を利用した資金洗浄の完全な経路図まで揃っています」


「へえ、見事なブラックボックスじゃないか。これさえあれば、あの忌部薫子って女王様も、大学のトップ連中も一網打尽にできるね」


 サラが画面を覗き込みながら、感心したように口笛を吹いた。


「ええ。ですが、重要なのは現世の法で裁ける犯罪の証拠だけではありませんわ。セト、そのデータの中に、悪魔との契約や霊的な干渉を示す痕跡はありませんの?」


 新子が胡麻団子を飲み込み、真剣な眼差しで尋ねた。


 セトはタブレットを操作し、ある一つの隠しフォルダを開いた。そこには『精神感応テスト結果』『適性者リスト』といった不気味な文字列が並んでいる。


「……ありました。忌部薫子は、学生たちを支配するために、ただの権力や恐怖だけを使っていたわけではありません。彼女は『朱鳥会』を通じて、悪魔の瘴気が封じ込められたアイテム……例えば、あの風紀委員たちが身につけていた腕章などを生徒に配布し、彼らの闘争本能や服従心を強制的にブーストさせていたようです」


「他人の心を薬物のように操るなんて、神代零やあのエセ教祖と全く同じ、薄汚い手口ですわね」


 新子は嫌悪感に眉をひそめた。


「それだけじゃないよ。この適性者リストってやつ、どうやら『悪魔の依り(よりしろ)』として適した人間を、学内から選別していた記録みたいだね。……あいつら、この大学の学生たちを、悪魔の王を現世に降臨させるための『生贄(いけにえ)のストック』として扱っているんじゃないのかい?」


 サラの言葉に、部屋の空気が一気に凍りついた。


「生贄のストック、ですって……?」


 新子の声が、怒りで微かに震えた。

 未来ある若者たちが集う、美しく平和な学舎。そこで共に笑い、悩み、恋をしている夕子や沙耶香のような純粋な魂たちを、忌部薫子と朱鳥会はただの『餌』として見定めていたというのか。


「許せませんわ。私の大切な居場所を、そんなおぞましい悪意の養殖場にするなんて……。絶対に、絶対に許しませんわ!」


 新子が円卓を強く叩きつけると、彼女の背後に立っていたマウトが一歩前に出た。


「お嬢様の精神的な負荷の増大を確認。対象『忌部薫子』および『朱鳥会』を、お嬢様の幸福を阻害する最重要ターゲットと認定。これより、物理的殲滅(せんめつ)の許可を申請します」


 マウトの氷のような声は、一切の感情を持たないがゆえに、どこまでも冷酷で残酷な響きを持っていた。


「マウト、物理的殲滅は却下します。相手は悪魔に魅入られているとはいえ、現世の人間。私たちが直接手を下して命を奪えば、それこそ天界のルール違反で地獄行きですわ」


 新子はマウトを制し、ふうと深く息を吐き出して冷静さを取り戻した。


「エバさんの言う通りです。執行規定の第一条、人間の業への不干渉。忌部薫子が抱く権力欲や自己顕示欲、そして強欲や嫉妬。これらは彼女自身の自発的なカルマであり、我々が裁くことはできません。我々が剥ぎ取るべきは、彼女のその醜い欲望を利用して君臨している『悪魔』のみです」


 セトが冷徹に状況を分析する。


「では、どうするおつもりですか、エバさん? 忌部薫子は常に複数の風紀委員や取り巻きに守られており、彼女自身も高位の悪魔と契約している可能性が高い。正面から挑めば、大学内がパニックになります」


「正面からなど挑みませんわ。私は、最も華麗で、最も彼女のプライドを粉々に砕く方法で、彼女の化けの皮を剥ぎ取って差し上げます」


 新子は不敵な笑みを浮かべ、タブレットの画面を指差した。


「明日の午後、大学の大講堂で『朱鳥学生会・緊急全校集会』が開かれますわね。おそらく、私が風紀委員からこのUSBメモリを奪ったことで、忌部薫子が危機感を抱き、全生徒を動員して『学内の裏切り者』を(あぶ)り出そうと企んでいるのでしょう」


「なるほど。罠が張られた絶好のステージというわけだね」


 サラがニヤリと好戦的な笑みを浮かべた。


「ええ。全生徒の目の前で、彼女がひた隠しにしている『醜い傲慢さ』と『嫉妬』を暴露し、彼女の権力を支えている悪魔の契約を強制解除させます。王座から引きずり下ろされた時、彼女に取り憑いている悪魔がどう動くか……そこが勝負ですわね」


 新子は油江教授の講義で学んだプロファイリングの知識をフル回転させていた。

 忌部薫子は幼少期から英才教育を受け、完璧な世襲制の中で支配階級として君臨してきた。彼女の権力欲と自己顕示欲は異常に肥大化しており、自らの地位を脅かす者への嫉妬や貪欲さも計り知れない。悪魔にとって、彼女の魂はこれ以上ない極上のディナーだろう。

 そして、その複数の欲望をすべて正確に言い当てなければ、高位の悪魔は剥がせない。


「相手が悪魔の王『サマエル』の眷属(けんぞく)、あるいはサマエル自身である可能性も否定できません。エバさん、命の保証はありませんよ」


 セトの警告に対し、新子は立ち上がり、自信に満ちた令嬢のオーラを全開にして胸を張った。


「心配ご無用ですわ、セト。私には、どんな攻撃も弾き返す無敵のマウトがいますし、いざとなればあの生意気な心理学教授の知恵すらも利用してご覧に入れますわ。……さあ、反逆の準備を始めましょう。偽りの女王に、元・奪衣婆の絶対的な天秤の重さを思い知らせてやりますわ!」


 決戦の舞台は、全校生徒が集う大講堂。

 己の権力を過信し、他者を見下す絶対女王・忌部薫子との、美しくも残酷な心理戦が幕を開けようとしていた。

 平和な日常の裏側で暗躍するエバの闘いは、ついに朱鳥女子大学の最深部、すべての元凶へと迫っていく。

X(Twitter)でも連載しています。

https://x.com/TakumiFuji2025

魅力的なキャラクターたちが躍動する物語をお楽しみください。

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