新たな挑戦状 for Great detective
その後、四ノ葉さんと伯闇くんの監視の下、犯人の先導で犯人の家に訪れた。
あまりに素直に従っていたから、初めは罠かと疑ったが、家に到着した後も僕らをはめようとする意思を彼から感じられなかった。
僕らは挑戦状の『被害者から奪われた世界を見つけ出せ』という文言通り、犯人の家の中を片っ端から捜索した。
するとすぐに、これまでの被害者たちから奪われたと思われる眼球が、瓶詰めにされた状態で見つかった。ついでに、眼球を取り出すための装置とやらも発見された。
物的証拠が見つかったところで僕らは警察に通報し、以降の対応を引き継いだ。
全てが終わったあと、携帯を開くと『挑戦状がクリアされました』と記されたメッセージが届いていた。
これで僕らの四肢が爆散することは無くなったのだ。
めでたしめでたしのハッピーエンドだ。
………。
……だが何故だろう、ハッピーエンドのはずなのに、僕の心はちっとも晴れやかな気持ちになれなかった。
僕ら四人の間に会話はない。重い静寂だけがその場を支配している。
取り敢えず、事件は終わりを迎えた。
僕は僕で探偵として事件の後片付けをしなくちゃいけない。それさえも、三人に手伝ってもらうのは申し訳なく思い、僕は身体を翻して、背後の二人に一礼した。
「四ノ葉さん、伯闇くん、二人とも付き合っていただいてありがとうございます。……犯人が逆上して襲いかかってこないとも限らなかったのでお二人を頼ったんですが、どうやら僕の杞憂だったようですね」
犯人はいともあっさりと抵抗を見せることなく僕らの指示に全て従い、そして逮捕された。公園でのあの言葉の掛け合いは彼に言わせれば、探偵を引き立てるためのセレモニー、つまりはジョークだったらしい。呼び出しにあの公園を指定され、そこへ僕らが四人で姿を現した時、彼は全てを察したのだと云う。
まったく、杞憂もいいところだった。
「……雨宮さん。俺たちにお礼なんていらないですよ、な、四ノ葉」
「うん、雨宮くんの……いや、仲間の頼み事なら引き受けて然るべき」
「そうですか。お二人ともありがとうございます。……それじゃあ僕は一度おじさんのところへ向かいます、皆さんは先に帰ってください」
その時、三人がどんな表情をしていたのか僕にはわからない。
僕は俯きがちにその場を立ち去り、警察が集まるテープの内側へと無理矢理身を押しやった。
おじさんはそんな僕を見つけるや否や、足早に駆け寄ってきた。
「智……事件解決ご苦労だった。色々と思うところはあるがお前はよくやったと思うよ」
「……そうでしょうか」
「もちろんだ。あのままだったら、さらに犠牲者が増えていた。ここでその被害を、またあいつ自身を止めることができたのは、お前のお陰に他ならない。俺たち警察は結局足踏みしていたに過ぎないんだからな。お前は自分を誇っていい」
誇っていいことなのだろうか。あの人を犯人とした僕はつまり……。
「そう落ち込むな、智。お前はお前の責務を全うした。その姿はお前の両親たちと重なる……だから、安心したよ……俺は。お前はちゃんとあの二人の子供––––名探偵だ」
思考の狭間におじさんの声が割り込む。
「後片付けなら俺に任せろ、お前は早く家に帰って心身を休めな。あぁそれと……こんなところで話すことじゃないんだが……まあ、いだろう。週末にあの子が所属する吹奏楽部のコンサートがあるだろ? すでに招待されていると思うが、一緒にどうだ?」
僕は少し考えて、こくりと頷いた。
「そうか、なら今週の日曜日、コンサートホールの前で待ってるぞ」
そう言っておじさんは持ち場へと戻って行った。
安心した……か。
どうしてそんなこと言うんだ。どうしてそんな風に言えるんだ。
おじさん………僕はまったく安心できないよ。
僕の身体を意識を拒絶しているようで、何もできないまま時間だけが過ぎていった。
そうしてその日、犯人は逮捕され、その翌日、留置所にて犯人は何者かに銃殺された。
その知らせが僕の元に届いたのは、三限目の授業が終わりを迎えた直後だった。
ピコンと通知が届いた音がした。
僕は知っている。
こういう時は、必ずと言っていいほどよくないことが続くんだ。
僕は慣れた手つきで画面をなぞった。
「……ほら、言わんこっちゃない」
【十二人の使徒】第二席【名探偵】へ
挑戦状:『雨宮夫妻を殺害した真犯人を突き止めろ』
期限:秘密
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