雨宮智について#3 その3
ピコンっと、廊下を渡る僕の耳にメッセージアプリの軽快な通知音が届く。
その日の放課後、僕は次の生徒会選挙で万全を期すために学園内の各地を回り、東奔西走の働きを見せていた。
各部活の部長に書類を届けたり、あるいは相談を受けたりしていた。
その働きにひと段落がついたため、生徒会室へと蜻蛉返りしていたそんな時だった。
ズボンのポケットが振動したのは。
「……夜光くんですかね?」
外では誰の視線があるかもわからないため、名探偵の仮面を被りそう呟いてスマホを顔の前まで持ち上げる。
「……!」
一件のメッセージ。
だが、送り主は夜光くんではなく。
———宮本武。
とてもお世話になっている知り合いの刑事からの、今朝のやつに対する返信だった。
僕は内容を確認すると、急いで夜光くんの電話にコールをかけた。
幸いすぐに通話は繋がる。
「もしもし智、この俺———天白学園生徒会長様になんか用か⁉︎」
ハイテンションな彼をよそに、僕は淡々と必用事項だけを伝える。
「知り合いの刑事から連絡がありました。正式な依頼とのことです。僕はこれから先ほど発見されたという『女子大生連続殺人事件』の被害者のもとへ向かいます」
「……そうか」
ひょうきんだった声が真面目なトーンに変わる。
「本日の僕の仕事はすでに終わらせてますので、夜光くんも自分のやるべきことは片付けて置いてください」
「オーケー、安心しろ任せとけ。俺が頼りになることを証明してやる」
それじゃ、と別れを告げて通話を切る。僕は足早に昇降口へと向かった。
下駄箱に辿り着くまでに、メッセージの文章を脳内に書き起こす。
『ちょうどよかった。智。
俺も今まさにその話をしようとしていたところだった。この事件にどうして興味を抱いたかは疑問に残るが、それは終わってからにしよう。
警察からお前に依頼だ。
頼む、『女子大生連続殺人事件』の解決にお前の力を貸してくれ。
つい四十分前、江ノ雌那にある学生アパートから警察に死体があると通報があり、捜査官が現場に向かうと遺体は女子大生のものだった。遺体の痕跡から今回の事件の被害者でると認定。
詳細は現場で語る。URLを送っておくからこの場所になるべく早く来るように。
学校が忙しいとは思うが、ダメなおじさんの尻拭いをすると思ってくれ。
それじゃあ、俺は一足先に現場待っている。道中には十分気をつけるんだぞ』
まったく……、貴方がダメなおじさんであるものか。
下駄箱で上履きから靴に履き替える。
こんな僕よりも多くの市民を救ってきた貴方が……。いつだって自己評価の低い、刑事のおじさん。
亡き両親の一番の親友であった頼りになるおじさん。
その言葉を是正させるためにも、僕はいち早く現場へと向かわなくちゃならない。
校門を飛び越え、URLに示された方角を正面に見据える。次の瞬間、僕は力一杯に地面を踏み込み、指で弾かれたビー玉のように駆け出したのだった。
———『続』———
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