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AIアシスタントと行こう!異世界テンプレ記  作者: tomo
☆第2章 冒険の幕開け
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第34話 対応策

領主館の執務室は、異様な静けさに包まれていた。


アレン・ハーバスは、父クリエ侯爵の前に立ち、

王命、山の消失、使徒の王都召喚命令と、アレンの顔色は、今や幽霊のように青白い。


「……父上」


声がかすれる。


「彼らは……【使徒】は……国家ですら制御不能な存在です。

もし王都で感情を爆発させれば、王城どころか――」


「都市が消えるな」


クリエ侯爵は淡々と答えた。


「だがアレン、それは“力”の話だ。問題は“意思”だ」


アレンは顔を上げる。


「……意思?」


「……父上。あれは……あの【使徒】という存在は、一体何なのですか 」


「アレン。お前の恐怖は正しい……。【使徒】という存在を、単なる『兵器』や『怪物』として見るな。

彼らに敬意を持って接せれば、彼らは誠意を持って答えてくれる。

だが、打算で動かそうとすれば……すべてを叩き潰されるだろう」


「…… 」


「じきにわかる 」


クリエが手元のベルを鳴らす。


隣室からライカ伯爵とユタル老師が入室してきた。


ライカはすでに王都へ向かう準備を終え、坂本と真鍋を連れて王都へ向かうタイミングを伺っていた。


「アレン様、お役目、ご苦労様でした。

アレン様という『王の使い』が届いた以上、我々もそろそろ出発せねばなりません。

ですがその前に、王都で『天災』を引き起こさないための予防策を固める必要がありますな」


ライカの言葉に、ユタル老師が苦笑を混ぜる。


「かっかっか。いくらワシらが頭を突き合わせたところで、あの2人の機嫌までは予測できんわい。結局、ノボルとサキに直接聞くのが一番早いじゃろうな」




一同は、場所を移しライカの別邸へやってきた。


応接室で、清潔な服に着替えた坂本が一人、茶を飲みながらくつろいでいた。

真鍋はエリスと連れ立って、領都の「食べ歩きツアー」に出かけているという。


「坂本です。あ、アレンさんですよね。昨日はどうも。森の中、馬車で大変そうでしたね」


入室したアレンに対し、坂本は友人に接するように軽く手を挙げた。アレンの思考が一時停止する。自分はまだ、名乗ってすらいない。


「……なぜ、私の名を? 昨日、私は貴方をお見かけしただけだったはずだが」


「ああ、すいません。僕のサポート役が、馬車の紋章とアレンさんの容姿、それに年齢から推論して、『アレン・ハーバス氏である確率98%以上』って教えてくれたので」


アレンは背筋に冷たいものを感じた。

昨日、一瞬目が合っただけの情報から、自分の正体のみならず、背後の状況まで読み取られていたということか。


「ノボル殿。アレン様に、王都へ向かう経緯を説明してもよろしいかな」


ライカの問いに、坂本は「もちろんです」と頷いた。


アレンは姿勢を正し、王の使いとしての口上を述べようとした。

だが、坂本はそれを遮るように空中に向かって声をかけた。


「アイ、みんなに状況を共有して、話し合いたいんだ。出てきて」


瞬間、空間の粒子が収束し、黒いスーツに身を包んだ知的な女性――アイが姿を現した。


アレンは息を呑んだ。神聖な気配や魔力は感じないが、

だがその造作のあまりの完成度、人型でありながらどこか無機質な美しさは、彼の知る「高位の精霊」のものと近かった。


「……ハーバス侯爵家嫡男、アレン・ハーバス。高位なる精霊殿に対し、非礼をお許し願いたい」


アレンは反射的に椅子を立ち、騎士の礼法に則ってその場に跪いた。


「ちょ、ちょっとアレンさん!? やめてください、アイは僕のスキ……ええと、パートナーみたいなものですから!」


慌てる坂本を余所に、アイは無機質な瞳でアレンを見下ろしたまま、事務的に告げる。


『アレン・ハーバス様。

起立してください。跪礼による時間的損失は、現在の協議において非効率です。

これより、王都行に伴うリスクヘッジ、および今後に関する最適解を提示します』


アイは、王都の貴族派閥の勢力図、教会の教義的な矛盾、隣国の動向、そして坂本の「平穏な生活」という絶対条件を瞬時に演算し、結論を導き出した。


『現在提示出来るルートは3案です』


1. 【王権守護ルート】△

:王家に全権を委託し、国家の庇護を享受。

生活安定度95%

他国間とのパワーバランスが崩れ、武力抗争に発展。国家に武力として利用される確率、2年以内 64% 行動障害リスク大。



2. 【宗教権威利用ルート】✕

:使徒を聖遺物化し、教会の権威を借り国家間の介入を抑制。

生活安定度 87%

思想統制と行動障害による停滞のリスク大。



3. 【自由奔放ルート】◯

:使徒を「管理不能な自然現象」と定義し、各国と不可侵条約を締結。冒険者協会と協議。抑止力としての象徴を目指す。

生活安定度 45%

武力衝突、暗殺リスク 中 』




アイは淡々と、国家構造図

、王権構造、宗教勢力、軍事バランス、隣国関係、経済流通…。数十年後の国家推移まで含めた膨大なシミュレーション結果を、各自の脳裏に直接投影し始めた。


「……な、何を……? なぜ、父上もライカ閣下も黙って頷いているのですか!? 」


「3案ですね。こちらをベースに王様との交渉案を話し合いましょう」


と討議し始めた坂本達と、取り残される、アレン…。

彼らはすでに、アイによる「情報の共有」を終えていたのだ。


『アレン様。ご説明がまだでしたね』


アイがアレンの目の前に指を差し出す。


『情報共有の方法を説明します。私の演算結果を、あなたの脳内領域に直接インストールします。……確認。システムメッセージに対し、意識下で「はい」を選択してください』


アレンの脳裏に、見たこともない光り輝く文字が浮かび上がる。


( 共有データをインストールしますか? [はい / いいえ] )


(……は、ハイ……)


アレンが心の中で「はい」を選択した瞬間。


彼の脳に、大量の国内や外交関連、過去の教会の動向などから、シミュレーションした結果が、激流となって流れ込んだ。


「……が、あぁっ……!」


ーー数分後。


何とか意識を保ったアレンは、眼鏡を歪ませ、荒い息をつきながら椅子に座り直した。


(……これが……。これが、使徒の『力』なのか。……交渉だと? 私は一体、何と向き合っているのだ…?)


アレンは震える手で、坂本から差し出された茶を啜った。


坂本は申し訳なさそうに、苦笑いを浮かべている。


「……アレンさん。アイは、便利ですけど、慣れない内は結構疲れるんですよねぇ。

とりあえず、落ち着いてからでいいので、協議を続けましょう 」


アレンはもはや、言葉を返せなかった。


彼がこれから王都へ連れて行くのは、「客人」でも「兵器」でもない。

世界そのものを、再定義してしまう様なものなのだと、ようやく悟ったのである。


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