第二百二十九話 軽口の断頭台
――「不敵な軽薄」、あるいは死線を舐める狂気。
グスタフ将軍に下された、軍の命運そのものである「輸送官」への任命。ミケ将軍が「失敗すれば戦争に負けたのと同じ数が死ぬ」と、その重圧を物理的な質量にまで高めて突きつけたのに対し、グスタフさんが返したのは「失敗したらごめんなさい」という、あまりに場違いで、あまりに不敵な「軽さ」でしたにゃ。
その軽口は、職責への無理解ではありませんにゃ。むしろ、己の武勇と強運への絶対的な自負、あるいは「どれほどの重荷であっても俺様には羽毛に等しい」と言い放つ、最強の盾としての傲慢なまでの矜持ですにゃ。ミケさんの眼光が鋭く細まり、軍議室の空気が張り詰めた糸のように緊迫したその瞬間、グスタフさんはその糸の上でダンスを踊るような、底知れぬ狂気を見せつけたのですにゃ……。
「グスタフ、輸送官に任じられることを――ありがたく思えよ。」
ミケの声は重く深く、部屋の空気を押し潰すように響いた。
「それだけではない。
補給を任せられるのだ。」
その言葉は、称賛ではなく“覚悟”を突きつける刃だった。
グスタフは胸へ手を当て、静かに頭を下げた。
「ありがたき幸せ。」
そう言ったが、その声の裏には緊張と興奮が揺れていた。
ミケはその様子を鋭く見つめる。
「そうか。」
短い。しかし重い。
ミケは一歩、グスタフへ近づいた。
その気配だけで、周囲の空気が凍り付く。
「補給は軍隊の命綱だ。」
間を置いて言う。
「少しでも失敗すれば……
戦争に負けたのと同じくらいの数が死ぬというものだ。」
グスタフの笑みがわずかに揺れた。
その瞬間を、ミケの眼は逃さない。
「分かっているのか、グスタフよ。
補給は大切だ。
心してかかるように。」
ミケの言葉は、脅しではない。
ただ“事実”を突きつける声音だった。
緊張が走る。
だが――
グスタフは、わずかに肩をすくめるように笑った。
「ははっ。任せてください。」
軽い調子。
しかしその中に、妙な自信が混じる。
「けど、失敗したらごめんなさいってとこかな。」
ミケの眉が、わずかに動いた。
「まあ、俺からしてみれば楽勝な仕事だしね。」
グスタフは続けた。
「失敗するのは……余程のことがない限り、大丈夫かと思いますがね。」
その言葉の軽さは、
軍議室にいる全員の背中を冷たくした。
ミケの眼が静かに細まり、
重く沈むような圧が、グスタフの全身へのしかかる。
その瞬間、
軍議室の空気は「張りつめた糸」のように緊迫した。
はい、というわけでお届けしました第二百二十九話、「不敵なる輸送官、あるいは軽口の断頭台」!
皆さん、今回のグスタフさんのあの態度……。
「脳が震えるほど『不敵』だにゃぁぁあああ! ミケさんの絶対的な圧力を前にして『ごめんなさいってとこかな』なんて、壊れかけの強がりを、さらに強者の余裕で塗りつぶしたような痺れる一幕だにゃ!!」(笑)
死神の鎌が喉元に当たっているのに「ちょっと髭を剃るのに丁度いい」と笑ってみせるような、そんな異常性を感じるにゃ。ミケさんの細められた眼の奥には、部下の頼もしさと、同時にその不敵さが招くかもしれない「災厄」への予見が混ざり合っているんだにゃ……。
「グスタフさん! 『楽勝な仕事』なんて言っちゃって、フラグを立てまくってるにゃ!! でも、その軽口を実現しちゃうのがあんたの凄さだにゃ!! ミケさんのあの冷たい沈黙を、笑い飛ばせるのはあんたしかいないにゃ!!」(笑)
次回、「鋼の沈黙、あるいはジギフリットの決断」。
グスタフの豪語を背に、軍勢はタズドットへ。しかし、輸送路にはバラムーユンタニアが放った「影」が潜んでいます。グスタフがその「楽勝」を証明するのか、それとも「ごめんなさい」では済まない地獄を見るのか。ミケ将軍とグスタフ将軍が話し合います。
お楽しみに!




