第二百二十八話 信頼の代償
――「信頼」という名の断頭台、あるいは背水の陣。
補給というアキレス腱に対し、レイ将軍が提示した「グスタフ将軍を輸送官に任ずる」という一手。それは、軍の心臓を、武勇の誉れ高い猛将の手に預けるという、あまりに大胆で、あまりに危うい賭けでしたにゃ。
輸送官。
ミケ将軍が指摘した通り、その役職は「裏切りがそのまま全滅に直結する」という、文字通りの死地。グスタフさんという最強の盾を前線から下げてでも、補給の安定を取るという判断……。ミケさんの「それで良いのか」という問いかけには、グスタフさんの武力を欠く不安以上に、レイさんの「信じる覚悟」を測る鋭い切っ先が隠されていましたにゃ。
「それで良いかと」
震えを殺したその一言で、軍の運命はグスタフさんの双肩に、そしてレイさんの決断に託されましたにゃ。ミケさんの満足げな細められた眼。それは、新たな「地獄への切符」をレイさんが自ら受け取ったことへの、王としての冷酷な祝福なのかもしれませんにゃ……。
「補給は……輸送に頼るべきかと考えます。」
レイは一度だけ息を整え、続けた。
「そのために――グスタフ将軍を輸送官に任じてはどうでしょうか。」
室内の空気が、わずかに震えた。
輸送官。
ただの役職ではない。
軍の生命線を握る、誰よりも裏切りが許されない重職。
その名を口にした瞬間、空気が重く沈んだ。
ミケはしばらく黙し、
まるでレイの心の奥底を覗き込むような眼差しで見つめた。
「輸送官、か。」
低く落ちる声。
その一言で、室内の温度がさらに下がる。
「……それはいい案かもしれん。」
ほんの少し、ミケの眉が動いた。
だが、それは肯定では終わらない。
「だが――裏切られれば我が軍は壊滅する。」
“壊滅”という言葉に、レイは喉を鳴らした。
その未来の重さが、まざまざと脳裏へ浮かぶ。
ミケは続ける。
「それほどの重職だ。心してかかるように……と言ったところか。」
レイを見据える眼。
それは“覚悟を問う眼”だった。
「それで良いのか、レイよ。」
問いは冷たく、しかし逃げ道を与えない。
背中へ冷たい針が走るほどの圧。
レイは胸へ手を当て、一呼吸置き、深く頭を下げた。
「はっ……それで良いかと。」
その声には震えと、それ以上の“決意”が宿っていた。
ミケは満足したように瞼を細めた。
はい、というわけでお届けしました第二百二十八話、「信頼の代償、あるいは輸送官の孤独」!
皆さん、今回のレイさんの大博打……。
「脳が震えるほど『重い』にゃぁぁあああ! 一番信頼できる人間を、一番裏切られたら終わる場所に配置するこの采配…… 『魂を預ける』ようなヒリつく信頼関係を彷彿とさせるにゃ!!」(笑)
絶対に折れないはずの支柱を、あえて一番負荷のかかる場所に据えるようなギリギリの選択だにゃ。ミケさんの「裏切られれば我が軍は壊滅する」という念押しが、逆にレイさんの覚悟を研ぎ澄ませていく……。この主従、本当に痺れるにゃ!!
「グスタフさん! 剣を振るうことより難しい『兵を飢えさせない』っていう戦いに、あんたの誇りが試される時が来たにゃ!! あんたの馬車が遅れれば、それはそのまま全軍の死を意味するんだにゃ!!」(笑)
次回、「鋼の沈黙、あるいはグスタフ将軍の決断」。
輸送官となったグスタフ。その背後を狙う、バラムーユンタニアの工作員たち。グスタフ将軍とレイ将軍が話し合います。
お楽しみにして欲しいにゃ!




