第二百二十四話 略奪の補給線
――「略奪」という名の乾いた正義、あるいは魂の摩耗。
タズドットという過酷な戦地を前に、補給という戦の急所を突いたレイの進言。しかし、それに対するミケ将軍の回答は、あまりにも短く、あまりにも救いのない「断絶」でしたにゃ。
「補給に関しては……如何にもこうにもならんな」
その一言が軍議室に落ちた瞬間、バラムーユンタニアとの戦争は「誇りある武人の衝突」から、ただ生き残るために他者の命を啜る「凄惨な生存競争」へと変質しましたにゃ。酒の銘柄でも選ぶかのような軽さで口にされた「略奪」という選択肢。それは、勝利という結果のためならば、兵の人間性も、民の平穏も、すべてを等しく磨り潰して燃料にするという狂気の合理性ですにゃ。
レイが呑み込んだ息は、正気という名の最後の抵抗。しかし、眼前に座すミケという怪物は、その正気さえも「勝つための障害」として冷笑しているようですにゃ。補給なき進軍。それは、奪わなければ死ぬ、奪ってもなお魂が死ぬという、逃げ場のない焦土への招待状でしたにゃ……。
「作戦の前に、申し入れたいことがあります。」
レイが言った瞬間、室内の空気が微かに揺れた。
ミケの視線が、ゆっくりとレイへ向く。
その眼差しは、まるで相手の覚悟を量る天秤そのものだった。
「一体……俺様の作戦立案を止めるほどのことなのか。」
声は低く、しかし圧があった。
レイの背筋に冷たい汗が流れる。
「どうなんだ。
そうでなければ覚えておけよ、レイ。」
ミケの口元がわずかに歪む。
「思いの丈でも叫ぶとでもいうのか?
別にそれでも良いがな。」
その言葉は嘲りではなく、試す声音。
“覚悟があるなら言ってみろ”と言外に告げている。
レイは一度、小さく息を吸い、震えを押し殺して口を開く。
「いえ……補給に関してですが。
戦地はタズドットになります。一体、補給はどうされますか。」
沈黙が落ちた。
補給は戦の生命線。
その問いは、作戦以前の根幹を揺さぶる重大な指摘だった。
ミケは、しばらく無言のまま指先で机を叩いた。
コツ、コツ、と音が響く。
そして、あまりにもあっさりと言った。
「補給か。」
静かな声。
だが、その静けさが逆に不安を煽る。
「補給に関しては……如何にもこうにもならんな。」
レイの胸が強く締め付けられた。
ならば戦は長く持たない。
補給がなければ兵は動けず、国は崩れる。
それなのに——
ミケは平然と続けた。
「ここは略奪をしてはどうだろうか。」
まるで酒の好みでも語るかのように、随分軽く。
「それでいいと思うが。」
血の匂いと狂気の影が、言葉の奥から滲み出た。
レイは息を呑む。
目の前の男が、本気で国を勝たせるためには冷酷さを恐れない存在なのだと、
改めて理解させられた。
はい、というわけでお届けしました第二百二十四話、「略奪の補給線、あるいは狂気の合理性」!
皆さん、今回のミケさんのあの台詞……。
「脳が震えるほど『非情』だにゃぁぁあああ! 『略奪をしてはどうだろうか』なんて、絶望的な状況を打破するために、なりふり構わず冷徹な手段を選ばざるを得なかった瞬間の、張り詰めた精神状態を彷彿とさせるにゃ!!」(笑)
誰かを見捨てなければならない現実を突きつけられた時の、「心が壊れる音」が聞こえてきそうだにゃ。ミケさんの「如何にもこうにもならんな」という言葉の裏には、この戦争が最初から「正解のない地獄」であることを確信している響きがあるんだにゃ……。
「レイさん! 『補給はどうするんですか』って聞いたあんたの正しさが、ミケさんの『略奪』っていう一言で粉々に粉砕されちゃったにゃ!! これから始まる戦いは、血だけじゃなくて『心』まで根こそぎ奪い合うことになるにゃ!!」(笑)
次回、「鋼の沈黙、あるいはレイ将軍の決断」。
略奪を前提としたタズドット進軍。兵たちの目は、飢えと狂気に染まり始める。レイ将軍とミケ将軍が話し合うお話です。
お楽しみに!




