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GREAT HISTORY〜大史伝〜  作者: アイラル
第四部 ミケ将軍バラムーユンタニア決戦編

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209/214

第二百一話 真実の埋葬

――神格化される「個」、あるいは真実を呑み込む肥大した自意識。

執務室に響くミケ天常大将軍の言葉は、一見すると謙虚な「事実の指摘」から始まり、その実、最も深く、最も救いようのない「傲慢」へと着地しましたにゃ。

ハリア家という名門の力、歴史、国力。そうした客観的な「重み」さえも、ミケの脳内では「自分という異常な重し(おもり)」を際立たせるための背景に過ぎなくなっています。

「周りが勝手にそう言い始めた」――そう語るミケの表情には、世間の誤解を正そうとする意志など欠片もなく、むしろ世界が自分の存在に怯え、勝手にことわりを書き換えていく様子を特等席で眺める、歪んだ愉悦だけが溢れていましたにゃ。

「事実を越えて、噂が真実になる」

その宣言は、ミケが現実の国際情勢という地に足をつけた戦いから卒業し、自らが「概念」や「象徴」として世界を支配し始めたと確信した証拠ですにゃ。レイ将軍がその言葉に戦慄し、盲信を深めるほどに、ミケを縛るはずだった黄金同盟の規約やハリア家の家訓は、ただの「古い紙屑」へと変わっていきます。

世界が彼を恐れ、彼を基準に秩序を語る。その空虚な「噂」を餌にして、ミケという怪物はさらに巨大に、より不遜に、サステヒ砦の深淵へと進んでいくのですにゃ……。

「――全くもってその通りです、天常大将軍様。」

レイはひれ伏すような声音で続けた。

「天常大将軍がいらっしゃるおかげで、

 黄金同盟成立の折、リムリアが今日まで加盟し続けられている……

 その理屈、実に明快かと。」


 だがミケは、冷笑を浮かべて首を振る。


「それは、違う。」


 静かな否定。

 その一言に、場の空気が一気に強張った。


「リムリアが黄金同盟に加盟し続けられている理由――

 本来は“ハリア家がデカいから”、ただそれだけだ。」


 ミケは、地図の上に鎮座するリムリアの領域を指で叩く。


「歴史的背景、国力、家門の重さ。

 それらが揃っているから、黄金同盟はリムリアを外せん。

 俺様がいようがいまいが、本来は関係ない話だった。」


 その“正しい認識”が、

 次の瞬間にはねじ曲げられる。


「……にもかかわらずだ。」


 ミケはゆっくりと口角を吊り上げた。


「いつからか、俺様の実力のおかげでリムリアが黄金同盟に留まれている――

 そう吹聴されるようになってしまった。」


 その語りは、

 事実への怒りではなく、

 “勝者の余裕”だった。


「まったく、困ったものだ。」

ミケは肩をすくめる。

「俺様は何も言っておらんのに、

 周りが勝手に“天常大将軍がいるから黄金同盟もリムリアを外せん”などと

 もっともらしく言い始めたのだからな。」


 レイは喉を鳴らし、食い入るように聞く。


「な、なんと……それは誠でございますか。」


「誠だとも。」

ミケは自信たっぷりに言い切る。


「ハリア家の実力だけでは不安だから、

 天常大将軍という錘を付けておきたい――

 他国がそう思い込んでしまった。

 つまり、“俺様がいるだけで”黄金同盟の均衡が揺らぐということだ。」


 レイは、崇敬と畏怖の入り混じった表情で深く頭を垂れる。


「……まさしく。

 天常大将軍様が存在することそのものが、

 国際秩序の根幹を形作っていると……

 各国がそう理解してしまったのですね。」


「そういうことだ。」

ミケは満足げに頷いた。


「事実を越えて、噂が真実になる。

 俺様の存在感が、世界をそう変えてしまったというわけだ。」

はい、というわけでお届けしました第二百一話、「概念の肥大、あるいは真実の埋葬」!

皆さん、今回のミケさん……。

「脳が震えるほど『自己神格化』が進んでるにゃぁぁあああ! 本来の国力を認めつつ、それを自分の存在感で上書きしちゃうその精神構造……自分の『慎ましさ』を説きながら、他人の価値を全否定する時の、あの噛み合わない恐怖を感じるにゃ!!」(笑)

まさにただの人間が何らかの権能を得てしまったことで、自分の周囲の「世界の理」が自分に合わせて歪んでいくのを当たり前だと思い始めた瞬間。ミケさんは今、自分が歩けば道ができるのではなく、自分が歩く場所が「天の常」になると本気で信じているんだにゃ……。

「ミケ将軍……いや天常大将軍! 世界があなたを恐れて噂を流してるんじゃない、あなたが世界をそう見させてるだけなのに……その勘違いがサステヒで血の雨を降らせるにゃ!!」(笑)

次回、「鋼の沈黙、あるいはレイ将軍の決断」。

ついに200話突破! サステヒ砦を目前に、肥大しきった主君の自意識。レイ将軍はそれに心酔するのみ。


お楽しみになのにゃ!

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